サステナブルをテーマに、アパレル関係者、モデル、学生、環境省職員が対談

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2021年08月04日 13:11  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
「THAT'S FASHION WEEKENDトークイベント」が8月3日、東急プラザ渋谷にて開催。ファッションに敏感な学生とアパレルブランドの代表者がサステナブルをテーマに話し合い、また環境省とタレントがファッションを切り口に環境問題、とりわけ世界における日本の現状について話し合った。

○環境とファッションと

当トークイベントは10月8〜10日に渋谷ヒカリエにて開催される合同チャリティセール、「THAT'S FASHION WEEKEND -CHARITY and SUSTAINABLE FAMILY SALE-」のアナウンスが目的。

実施運営者のBanksy代表取締役 菅野充氏が冒頭のMCを務めた後、SHIPSの高梨勝央氏、ESTNATION COMPANYの藤井かんな氏、そして早稲田大学、上智大学、慶應大学でファッション系の学生団体(サークル)を運営している学生たちがアパレル業界のサステナブルについて意見を交換した。

はじめに、学生からは「ファストファッションの問題が指摘されていますが、消費者の価値観を変えるべく、企業はどんなことに取り組むべきですか」といった質問があがった。

これに対して、「アパレルブランドでは、持っている情報をどんどん消費者に伝えることが大事だと思っています。どういった素材を使った服なのか、どんな観点でサステナブルな取り組みをしているのか。洗濯の方法を間違えなければ長く着られるということ、リペアの方法などもそれに含まれます。皆さんに情報を提供して選んでもらう、ということですね」と高梨氏が回答した。

逆に、高梨氏からの「皆さんが服を購入するとき、サステナブルな観点で取り入れていることは」といった質問に、学生たちは「持っている服に愛着を持つことかなと思います。洗濯は手洗いして、少しでも長く大切に着られるように心がけています」「環境に配慮して服をつくっているブランド、そういったタグのついている服を購入するようにしています」といった回答が聞かれた。

続いて、藤井氏が「服を買うときに大切にしていることは」と質問。学生は「まず3〜5年後も着たい服かどうか考えます。ミニスカートは可愛いけれど、5年後に社会人となった私は着るだろうか。何度も自問自答し、試着室を行ったり来たりしてから、購入するか否かの決断をしています」と答えた。

「サステナブルな取り組みを普及させるために、商品に付加価値を付けるべきという意見には賛成ですか」と学生が尋ねると、高梨氏は「リサイクルの費用もあるし、商品に付加価値は付けにくい側面があります。モノではなくコトの付加価値はどうでしょうか。例えば弊社では、商品を購入の際にショッピングバッグを辞退していただいたら、その費用を、森を増やすための運動に寄付させていただいています。お客様の行動にそうした形でインセンティブを付ければ、『サステナブルな取り組みに貢献できた』と思ってもらえるのでは」と説明する。

また、藤井氏は「ブランド側も、サステナブルな取り組みを継続していきますが、一方で、お客さんに本当に気に入ってもらえる素材やデザインの服をつくっていくことも大事。その両輪だと思っています」と話した。

学生たちからは「ホームページでは確認できない話が聞けて有意義だった」「企業の思いを聞き、服を買う自分の基準が変わった気がします」「好きなこと(服)から派生して、サステナブルな取り組みにも貢献していけたら良いなと思いました」といった声が出ていた。
○企業は「独占」ではなく「協力」を

その後メンバーが変わり、環境省から岡野隆宏氏が、そしてモデルで女優の長谷川ミラ氏が登場。長谷川氏はイギリス留学中にファッションと環境問題が切り離せない関係であることに気付き、また国際社会で日本が立ち遅れていることに愕然とした自身の経験を明かした。

一方の岡野氏は「ファッションと環境」タスクフォースのリーダーも務め、ファッション業界で働く人たちの「環境に対する取り組み」「問題意識の高さ」を感じて、ファッションの観点からも環境を考えるようになったという。

司会を務めたWWD編集長の村上要氏が「環境問題は、いち企業では立ち向かえないくらい大きい。ライバル企業と一緒に取り組むこと、周囲を巻き込んでスケールアップしていくことが大事になりました」と水を向けると、長谷川氏は「横とのコラボレーションが求められますよね。ファッションでは最近、リサイクル素材がよく出ていますね」と応じた。

そして、その発言に続けて「でもこういうとき、企業って特許を取得して技術を独占しがちなんですよ。『独占したら、社会問題の解決にならないでしょ! 本当に解決したいと思っていますか?』って思っちゃうんですよね」と毒づいたところ、爆笑しつつも深くうなずく会場の観覧者が多く見られた。

「だったら社会で新しいルールをつくって、そこでビジネスをすれば良いでしょう。国と自治体とも連携して、取り組みを進めていってほしいと思います」(長谷川氏)。

これに対し、司会の村上氏は「企業同士が協力する新たな取り組みであるTHAT'S FASHION WEEKENDの意義がそこにあります。さまざまなブランドが参画するイベントで、在庫として売れ残っている服を、特に若い世代の人たちにお手頃な価格で提供することで、ファッション業界の大量廃棄の問題に向き合います」とコメント。

岡野氏も「企業同士が協力することは大事ですね。そうした場ができることが素晴らしいと思います。競争ではなく共創の場を、ともに作っていきたい」と賛同し、環境省、企業、生活者が連動することで環境問題も改善していける、との考えを示していた。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら(近藤謙太郎)
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