ネット広告に出没する「サバサバ女」は何者なのか? 原作者に直撃インタビュー

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2021年08月05日 07:01  リアルサウンド

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写真ネット広告に出没する「サバサバ女」の正体
ネット広告に出没する「サバサバ女」の正体

 このところネット上の広告でよく目にする、なんかイラッとさせられる自称サバサバ系なぽっちゃりめの女性。見覚えがある人や、気になって無料配信分を読んでしまったという人も多いのではないだろうか(おれも中身が気になって、つい課金して全話読んでしまった……)。彼女の名前は網浜奈美。原作をとらふぐさん、作画を江口心さんが担当するコミック『ワタシってサバサバしてるから』の、事実上の主人公である。


 現在めちゃコミックで配信されている『ワタシってサバサバしてるから』は、この網浜さんと、同じ出版社で働く人々を描いた作品。自分は「女性らしい」とされる物事に興味がなく、男っぽくてサバサバしている……そんな自己認識の割に案外ネチネチしていて嫉妬深く非常識な網浜さんと、彼女に迷惑をかけられるもなかなか決定的にはやりこめられない同僚たち。彼らの姿は笑えると同時に、「早く誰かコイツをなんとかしろ!」という感情を掻き立てられる。


 とにかくネット上で目立つことから、おそらく日本で最も有名な自称サバサバ女になったであろう網浜さん。ではこのコミックはいかにして作られたのか。そこは原作者に聞いてみようということで、ここでは原作を担当しているとらふぐさんに単独インタビューを試みた。網浜さんはいかにして誕生し、果たしてこれからどこへ向かうのだろうか?(しげる)


(関連:『ワタシってサバサバしてるから』冒頭5ページを試し読み


■モヤモヤしていることを形にしたい


ーー『ワタシってサバサバしてるから』のお話に入る前に、まずとらふぐさんのご経歴を簡単に教えてください。


とらふぐ:会社員も長くやっていたんですが、それと並行して漫画関係の仕事もしていました。自分でも描きますし、女性向けのコミックを中心に原作を書いたりとか。現在、漫画を中心に出版プロデュースや、ゲーム・エンタメ系の仕事もしています。


ーー基本的には、『ワタシってサバサバしてるから』みたいな女性向けの題材を専門にしていらっしゃるんですね。


とらふぐ:そうですね。それこそ網浜さんみたいなキャラクターによるトラブルとか、女性を取り巻く問題をいかにエンタメとして表現できるかにトライしています。そういったネタ選定の基準としては、まずみんながモヤモヤしていること、言葉にならなくて表には出ていないこと、言いたいけど言えないことを形にしたい……という考えでやっていますね。


ーー「自称サバサバ女」みたいなネタも、その延長上ということですね。では、『ワタシってサバサバしてるから』が誕生したのはどう言った経緯だったんでしょうか?


とらふぐ:この作品に関しては、版元のDPNブックスさんから「最近”自称サバサバ女”と呼ばれる女性が出没している」という話をいただいたのがきっかけです。昔からこういう人はいたと思うけど、この自称サバサバ女をクローズアップした作品が作れないか、というオファーをいただきまして。そこから担当さんと一緒に網浜さんのキャラクターをすり合わせて考えていきました。


ーーとらふぐさんは、「自称サバサバ女」の存在自体はご存知だったんですか?


とらふぐ:最初はどういう人なのか掴みづらかったんですが、周囲の知人の話を聞いたりネットで調べたりするうちに、「あ〜、確かにこういう人って、いるな……」と思いました(笑)。もちろん漫画なんで網浜さんに関しては誇張して描いていますし、あそこまですごい人にはぶつかったことはないですけど、ああいう感じの自己主張が強すぎて勢いで周囲を説き伏せてしまうような人って学校でも職場でもいるんですよね。それを周りが我慢していることのモヤモヤ感もわかりますし、そこからばばーっとああいうキャラクターができあがった感じです。


ーー特定のモデルがいるとか、そういうことはないんですね。


とらふぐ:モデルはいないです。だから最初はつかみどころがなかったんですが、最近はもうキャラクターとしてできあがっているので、「この人だったらこういう時はこう言うよね」というのを出している感じになっています。ただ、程度の軽重はあってもああいう人っているところにはいるので、自分でも「こういうところには気をつけよう」と思いながら書いています。


■キャラクターが勝手に動き出す感じ


ーー網浜さんの見た目はけっこう特徴的ですが、あれはどなたが考えたんでしょうか?


とらふぐ:見た目に関しては、作画の江口先生とDPNブックスの担当さんとでイメージをすり合わせて決めました。当時の担当さんにはけっこうはっきりしたイメージがあったようなので、それを聞きつつ我々の方でも「痩せてはいなくて、ちょっとドンとした体型だよね」とかアイデアを出していきました。私のイメージだと「ああいう人はショートカットだな」と思っていたので、それで髪も短くしてもらっています。あと、江口先生が人の心理を表情に表すのがお上手なので、うまくああいうキャラを引き出してくれたと思います。


ーー網浜さん、服装やアクセサリーのディテールもけっこうしっかり決まってますよね。


とらふぐ:ディテールで言うと、「網浜さんは都内のどこに住んでいるのか」が問題になったんですよ(笑)。私は代官山とか、ちょっとオシャレなところかなと思っていたんですけど、当時の担当さんに「中野に住んでそう!」とご意見いただき、「たしかに!」と思い、それで中野になりました。


ーーあ〜、確かに中央線沿線って、安いけど女性単独だとちょっと入りにくそうな飲み屋とかたくさんありますもんね!


とらふぐ:そうなんですよね。私も中野は大好きなんですけど、確かに網浜さんは中野あたりで一人で飲んでるのをわざわざ他人に言いそうだなと思って、それで住んでいる場所が固まりました。


ーー先ほど作画の江口さんはキャラクターの表情で審理を描写するのがお上手という話も出ましたが、網浜さんは回を追うごとに顔芸もエスカレートしているし、なんだか妖怪みたいな扱いになっていますよね。


とらふぐ:『ワタシってサバサバしてるから』に限らずいろんな作品に言えることだと思うんですが、作家も描いているうちにキャラクターがどんどん固まって、勝手に動き出す感じになるんです。顔芸もその延長というか、話数を重ねるうちに網浜さんらしいところが知らず知らずのうちに出てきちゃうんですよね。


ーー最初はあそこまでエクストリームな顔芸ではなかったですもんね。確かにそこはキャラのかたまり具合に比例するものなんですね。


とらふぐ:幸い読者の方もたくさん読んでくれているので、「網浜さんはこの方向性で受け入れられている……これで大丈夫だったんだ……」とホッとしています。楽しんでいただければということで、現状は自由に描かせていただいています。


■「困った人に対する対処法」として読んでくれている読者も?


ーーあと読んでいてギョッとするのが、周囲の人が暴れる網浜さんをあんまりちゃんとシメないし、ちょっと怒られた程度では網浜さんが全く反省しないところでした。「ここまでやらかしたら、普通は上司に激詰めされるでしょ! クビでしょ!」と思うんですが……。


とらふぐ:そこなんですけど、網浜さんがそこまでキツく怒られなかったり全く反省しなかったりするのは、個人的には現実感があると思っているんです。というのも、私も色々仕事をしてきたのでわかるところもあるんですが、会社って意外に社員を辞めさせられないんですよね。


ーーあ〜、それは確かにそうですね……!


とらふぐ:傍若無人で「あの人絶対おかしいよね」ってみんな思っているのに、なぜか辞めずにずっと残っている人っているじゃないですか。逆にその人の周りにいる人が辞めていっちゃったり。網浜さんにしても、多少取引先を怒らせて出禁になった程度では、彼女をクビにすることってできないんですよね。なぜか変な人が長く居座っていて、まともないい人が辞めてしまうというのは、よくある会社の問題だと思います。


ーーいやほんと、いますね、そういう人……。


とらふぐ:読者の方のレビューでも、網浜さんにそっくりな上司がいるとか、そういう人にやられて精神的におかしくなって辞めたという内容のものがあるんですよ。ただ、今網浜さんはけっこう重めの事態を引き起こしているので、さすがに相当まずいことになってます。これがどうなるかは、続きを読んでいただければと思います。


ーー網浜さんそっくりな上司、めちゃくちゃイヤです! しかし、けっこう読者の方の近所にも網浜さん的な人が出現しているんですね。


とらふぐ:網浜さんの言動を見て「実際にいる!」「私の知人を取材したはず!」って断言していらっしゃる読者の方も見たことがあります。お姑さんが網浜さんにそっくりで、私がそのお姑さんのことを知っているんじゃないかとか、そんなレビューも書いてもらいましたね。自分が想像してできあがったキャラクターがそれだけ身近に受け止められて、読者の方の中ではリアルな世界で生きているんだなと思えて非常に嬉しいです。


ーー網浜さんみたいな姑、嫌だな〜! 他に印象的だった感想などはありますか?


とらふぐ:「そういう見方をしてくれているのか!」と思ったものでいうと、網浜さんに対抗する善玉のキャラクターで本田麻衣という人がいるんですが、彼女の言動が参考になると書いてくれている方がいましたね。


ーーどういうことでしょう?


とらふぐ:「自分も網浜さんみたいな女に現実ですごく迷惑をかけられている。いつも我慢していたけど、本田さんの言動がすごく参考になったので、今度からこうやって切り返そうと思います」ということでしたね。ビジネス書で「困った人に対する対処法」みたいな題材のものがありますけど、ああいう感じで読んでくれている方もいらっしゃいます。


ーーなるほど! もう実用書ですね!


とらふぐ:あとは「自分は網浜さんみたいにならないようにしよう」っていう方向ですね。例えば網浜さんが始業時間を過ぎても買ってきた朝ごはんを食べてて、注意されても「何が悪いんだ」って開き直る回があるんです。これに対して「自分もやってた……もうやりません」と書いてくれている方もいました。自分も網浜さんそっくりなことをやっていて、読んだ後で周りがどう思っていたのかに気がついて、もう人が傷つくようなことは言いません……みたいな。そのへんはある意味、世直しになっているのかなと(笑)。


ーー網浜さんが反面教師になっている……。


とらふぐ:学校にも職場にも、結婚した後のママ友の中とかにもいるし、おそらく老人ホームなどにも、ああいう人はどのステージにもいると思います。マウンティングや自己承認欲求の問題は、死ぬまでつきまとうと思うんですね。それを網浜さんを通してどこまで描けるかわかりませんが、読者の方がついてきてくださる限りはやろうと思います。


■網浜さんは今後どうなっていく?


ーー読者も、ネット上のあの大量の広告で相当増えたのではないかと思います。あの広告に関しては、原作者としてどのように感じていますか?


とらふぐ:広告はめちゃコミックさんの方で出していただいているんですが、本当に感謝しています。まず作品を知っていただくことができるというのは、とても嬉しいです。電子コミックは毎日ものすごい数が配信されているので、表に出してもらわないとどうしても埋もれてしまうんですよね。そういう意味では、広告で表に出してもらって読者のみなさんに知ってもらう機会を作ってもらっているので、大変感謝しています。


ーー『ワタシってサバサバしてるから』以外の作品では、最近はどのようなお仕事をされているんでしょうか?


とらふぐ:最近だと、7月8日に発売された白泉社さんのコミックで『戦略結婚 〜華麗なるクズな人々〜』という作品の原作を担当しています。芸能界の話なんですが、その裏の闇営業とかドラッグとかそういった問題を取り上げつつ、コンプレックスを抱えながらもそれをはねのける強さを持った芽衣という主人公が出てくる作品です。網浜さんと違って芽衣は性格も良くて負けず嫌いなんですが、その彼女が周りに渦巻く芸能界のクズと競っていく話ですね。


ーー本当に網浜さんとは全然違う主人公ですね。


とらふぐ:もうひとつ、8月中旬に『かりそめ女 〜嘘もつき続ければホントになるよね?〜』という作品も配信予定です。こっちも網浜さんとは違って、女性を出して自分を上手く見せて、虚構でハリボテみたいな自分を作って生きていこうとする女性の話です。コンプレックスを抱えていて、それをごまかすために嘘をついて、それでうまくいっているという。ネット上ではセレブだけど実際は違う……というのはよくある話ですけど、それを切り口を変えて表現しようと思っています。網浜さんと戦わせたいくらいとんでもないキャラクターが出てくるので、こちらもよろしくお願いします。


ーーサバサバ女vsかりそめ女、夢の対決すぎますね……。しかし、網浜さんは今後どうなっていくんでしょうか?


とらふぐ:網浜さんって、根っからの楽観主義者で超ポジティブ思考ですよね。それによってみんな迷惑してるんですけど、自分が悪いことがわかってないという。だから今後の展開がどうなるかは別として、彼女はこの先も多分反省したりせず、我が道を行くんだと思います。


ーーそうですね、反省している網浜さんは正直あんまり見たくないです。


とらふぐ:網浜さんって、もう生まれた時からサバサバ女だった感じがしますもんね。これから話数を重ねるうちに「なんで網浜さんはあんな人になったのか」とかをやるかもしれないですけど、基本的に普通だったら落ち込むような局面でも自分のいいように変換してしまう人なんです。それがいいところでもありますが、どうしても周りに迷惑をかけるし空回りしてしまう。そのせいで今は相当ヤバいことになっています。この現在の展開がシーズン1だとしたら、次はシーズン2が開始になる予定です。


ーーよかった! 網浜さんの活躍(?)はまだ続くんですね!


とらふぐ:今までの網浜さんの状況から、今後はまたいろんな展開が待っている予定です! 読者の方がいろんなところで「網浜さんは昔はこういう人間だったんじゃないか」とか色々話を考えてくれて、そういったものも「なるほどな〜」と思いながら読んでいるんですよ。そういった感じで、引き続き読者の方には楽しみに読んでもらえると嬉しいです。


(取材・文=しげる/画像提供=DPNブックス)


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  • これはまだいいとしてエロ漫画の広告どうにかならんのかと。本当に気持ち悪い。
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