ブームの第2波? 種類が増えたSUV「ディフェンダー」の現状

0

2021年08月05日 11:31  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
ランドローバーの本格オフロードモデル「ディフェンダー」。2020年のデビュー当初はラインアップがロングホイールベース+ガソリンエンジンの「110 P300」のみだったが、そこに2ドアショートホイールベースのガソリンモデル「90 P300」と4ドアロングホイールベースのディーゼルモデル「110 D300」が追加となり、選択肢が充実した。新登場の2台にも実際に乗ってみたが、魅力は十分だ。

もともと人気のディフェンダーだけに、どのモデルを注文しても現状ではバックオーダーとなってしまうケースが多く、納車が年明け以降になることも珍しくないとのことだが、詳しい販売状況はどうなのか。ジャガー・ランドローバー・ジャパンの藤井崇史マーケティング・広報部プロダクトマネージャーに話を聞いた。

○新モデル追加でオーダーが再び増加

「現在のオーダー内容を見てみると、ガソリンとディーゼルが半々というところでしょうか。つまり、110のディーゼルモデルが注文の半分を占めているという状況です。もともと『ディフェンダーにはディーゼルがあるべきでしょう!』というお客様が多く、最初の発表時にも『ディーゼルはいつなんだ?』という質問をたくさんいただいていました」

これが、藤井さんが語る足元の受注状況だ。ディーゼルモデルの登場を待ちかねていた顧客から「ワーッと注文がきた」といい、デビュー時がオーダーの第1波だとすると、今は第2波がきている感じなのだという。

「D300」が搭載する直列6気筒のディーゼルエンジンについては、「特有のガラガラ音が発生せず、よく回るし、低回転域から高トルクを発生するうえ、隙間をマイルドハイブリッド(MHEV)で埋めてくれるのでパワー感もあり、高評価をいただいています。ランドローバーの中では最も新しいエンジンですが、出来はいいと思います」との見立てだ。

納車の時期が遅れているのは、コロナの影響により工場で働く人の数に制限が出ていたり、半導体が不足していたりするためらしい。「90」か「110」かというよりも、どのオプションを選ぶかが納車の遅速に影響するそうだ。どの組み合わせが早いかについては「一概にはいえない」というが、やはり半導体の影響が顕著なので、電子機器に近いものが遅れの対象になるという。「お客様がいらっしゃっても渡せないというのは、とても歯がゆい」と藤井氏。個体がないわけではないので、なんでもいいのでディフェンダーが欲しいということであれば、少しは早まる可能性があるらしいのだが……。

○価格と仕様で幅広い客層に訴求

ボディタイプの長短では、どちらの方が人気なのだろうか。

「90と110の割合をざっくりいうと、2〜3割が90で、残りは110といった感じです。90はもっと少ない数字を見込んでいたので、意外にきたなと思いました。ただ、時間がたつと110に流れる割合がもっと増えるはずです。他社も含め、短いのと長いのと両方のオフローダーをそろえているところは、結局は4枚ドアの長い方に収れんしていくようですね。日本の市場でも、ゆくゆくはそうなると思います」

「都会で小回りが利く、という考えで90を選ぶ方もいますが、後ろの席まで使おうとすると乗り込むのは大変だし、ラゲッジが狭いので、荷物を載せるというユーザーには90は厳しいと思います。家族や奥さんを連れて見に行ったら、『エーッ』といわれるのではないでしょうか(笑)。それが一般的な消費者の見方でしょうし、そうした現実を直視して110に変えるという方もいらっしゃいます」

ただし、90はアイコニックな存在でもあるため、「なくすつもりは全くない」とのことだった。

エントリーグレードと最高級の「X」グレードでは価格差が倍ほどあるので、ディフェンダーに興味があるユーザー層はかなり幅広いのだとか。

「店からのレポートを見てみると、Xのような高級グレードを選ぶ方は、だいたい購入価格を1,000万円〜2,000万円あたりで考えていて、ベースで1,000万円を切るという価格を見ると、『えっ、1,000万円しないの? 安いね』という反応があったりします。一方、『ランドクルーザー』などの国産四駆から乗り換える方は、600万円〜800万円前後のモデルを探している方が多いようです。前者がどろんこになって“雑”に扱えるクルマを探しに来ている一方で、後者は大事に乗ろうという感じで、本当に両極端。ターゲットユーザーが絞りにくく、マーケティングやプロモーション活動はかなり大変です」

今のイヤーモデル(2021年モデル)あたりだと、どのグレードでも最低限の安全装備はついているので、例えば皮シートでなくていいとか、電動シートでなくていいなどの妥協ができるのであれば、色や屋根のカラーを選ぶための20万円ほどの追加料金は必要となるものの、ほぼカタログ価格で乗れてしまうはず。ただ、フル装備のランクルあたりから乗り換えると「あれもない、これもない」ということになってしまうのは目に見えている。

今は納期がかかるので、シビアな交渉をしなくてもよい比較的余裕のある方がメーンの購入層になっているけれども、もう少し時間がたつと、国産からの乗り換え組が真剣に検討を始めるはず。販売がどうなっていくのか、ちょっと楽しみだ。

○本格4WDブームがきている?

ここ3年ほどで、本格4WDモデルが次々にモデルチェンジを実施あるいは発表した。メルセデス・ベンツ「Gクラス」、ジープ「ラングラー」、トヨタ「ランドクルーザー」、そして、小さいのではスズキ「ジムニー」もある。いずれも久しぶりのモデルチェンジだが、70年に1回のディフェンダーもしかりだ。

「10年以上のライフのクルマが、同じようなタイミングで切り替わったというのは面白い現象です。ユーザーが待ち望んでいた変化なのかもしれませんね」と藤井さん。そんな中で、価格、ルックス、走行性能の全てで進化した新型ディフェンダーは、ライバルに一歩差をつけたような気がする。(原アキラ)
    ニュース設定