SwitchのようなPCゲーム機「Steam Deck」から読む“ポータブルゲーム機”と“x86”の未来

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2021年08月05日 11:52  ITmedia NEWS

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写真Steam Deck
Steam Deck

 7月15日(現地時間)、米国のゲームプラットフォーマーであるValveがポータブルゲーム機「Steam Deck」を発表し、話題となった。この製品はプリインストールされているOSこそLinuxベースの「SteamOS 3.0」だが、ハードウェアとしてはAMDのプロセッサを使った「x86系PC」であり、Windowsもインストールできる。



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 これに限らず、「GPD Win 3」などのPCアーキテクチャをベースとしたポータブルな製品が複数登場し始めている。



 これはどういう背景に基づくものなのだろうか? そして、ヒットの可能性はあるのだろうか? ちょっとその辺を真剣に考えてみよう。



●10年で変わった、PCとマルチプラットフォームの関係



 ポータブルなゲーム機は、これまで皆独自アーキテクチャに基づくものだった。任天堂の「Nintendo Switch」は据え置き兼ポータブル、というタイプだが、こちらも、SoCはNVIDIAのArm系SoCである「Tegra X1」をベースにしたものを採用しているものの、OSを含め、プラットフォームとしては「任天堂が考えた独自アーキテクチャ」であることに変わりはない。



 とはいえ、ポータブルかつx86アーキテクチャを使ったゲーム機(もしくはゲームを主体としたPC)が登場する背景には、Nintendo Switchや、そのさらに前の存在であるPlayStation Vitaの影響が無視できない。これらのゲーム機に、PCからの「マルチプラットフォームタイトル」が増えたこととの関連があるからだ。



 10年以上前、ゲーム業界でもマルチプラットフォームは、まだ限定的な発想だった。予算をかけたタイトルを発売する際、リスクを軽減するために複数のプラットフォームに出すことが中心だったのだ。PlayStation 3・Xbox 360世代ではGPUがハイエンドなゲーミングPCに近いものになり、3つのプラットフォームでの展開を考えるのがリーズナブルなことになった、ということは大きい。



 その後、同時にいくつもの現象が起きて、マルチプラットフォーム化はさらに進展する。



 まず、スマートフォン向けの技術開発の余禄(よろく)を受ける形で、ポータブル系ゲーム機の性能も向上していった。ポータブルゲーム機(Switchを含む)とスマートフォンのアーキテクチャが似ているのは、スマートフォン向けに進化した技術を使うのが論理的であったからであり、無関係な話でない。



 ゲーム開発の分野では、UnityやUnreal Engineなどの「ゲームエンジン」を使った開発が広がり、マルチプラットフォームでの開発が以前に比べて容易になった。



 ゲームエンジンの普及による開発環境の整備は、「インディゲーム」という形で、大作ほどの規模ではないゲームを作る流れを加速した。



 そしてインディゲームの隆盛は、「Steam」などのPC向けプラットフォームの増加とも強く連携している。そこからマルチプラットフォーム展開し、家庭用ゲーム機でもビジネスが広がるようになったことが、全体のビジネスパイ拡大を促した。



 もちろん、巨大な費用をかけた大規模タイトルや、最新のハードウェアの性能を生かしたタイトルは、ポータブル系のアーキテクチャでそのまま動かすのはまだ難しい。そうした大規模タイトルが市場を牽引(けんいん)するのも事実だ。だが、ゲーム全体の中で「AAAクラスの性能を必要とする」ものの比率は下がってきてもいる。



 これらの現象は今書いた順に起きたわけではない。並列に進行した結果、相互に影響を与える形で進んでいって今に至る。



 そして1つの結果として、「PCゲーム的な価値観」はより拡散することになった。



 ゲームをPCで楽しむ人は増えており、そうすると、「ポータブルゲーム機にPCゲームが移植されるのを待つ」のではなく、ゲームをそのままPCで動かしつつ、どこでも遊べるようにしたい……というニーズが出てくるのも当然となる。



 同時に、PCのCPU・GPUの省電力化も進む。Intelの第11世代Core iシリーズなどを使えば、それなりに小さなPCで、それなりのグラフィックス性能を備えたものを作ることも可能になってきた。



 結果として、それを使ったPCが「ポータブルなゲーム向けPC」として登場することになる。GPDのデバイスはその典型だろう。



●Steam Deckはコンソール的ビジネスモデル



 GPD Win 3に代表される「小型Windows PC」としての製品と、Valveが作る「Steam Deck」では方向性が異なる。



 前者はあくまで汎用のパーツを組み合わせ、OSもWindowsを使った「PC」だけれど、Steam Deckは独自のOSを使い、ValveのSteamというプラットフォームに特化した機器である。最適化の度合いは異なるが、PS4やPS5、Xbox One/Xbox Series Xと同じである。



 価格的にも、Windowsを使ったポータブルゲーム機器は800ドル程度だが、Steam Deckは399ドルから649ドルとかなり安い。プロセッサも、AMDが独自に開発したZen 2+RDNA 2ベースの未発表製品。「独自のプロセッサを開発し、自社プラットフォームに合わせて量産してコストを下げる」という発想は、まさに家庭用ゲーム機と同じだ。違うのは、「Steam DeckはWindowsをインストールして使うことも想定している」ことくらいだろうか。



 OS的には、Windows向けに開発されたゲームをそのままLinux上で動かす互換レイヤーである「Proton」を持ち、そのまま多くのWindows用ゲームを動かすことを想定している。どちらかといえば、OSのライセンスコストを下げてUIをゲーム向けに統一するために独自OSを使っている、といった方が正しいだろう。



 非常にユニークな商品企画といえる。



●まだまだ重いx86系、今後の「Arm対x86」はどうなるのか



 ただ、これが「ポータブルなゲーム機もx86へ移行する」きっかけになるか……というと難しいし、Switchのようなメジャーな存在になれるか、というとやはり難しいと思う。



 理由は性能上の限界だ。



 省電力化・小型化が進んだとはいえ、十分な性能を持つx86系プロセッサは、まだまだ「大食らい」である。



 Steam Deckは669g。GPD Win 3は550gとかなり重い。Nintendo Switchが398g(現行モデル)だから差はかなりのもの。携帯ゲーム機としてSwitchは相当に大柄だから、PC系のものはさらに大きい、ということになる。重量が重くなるのはバッテリー搭載量を増やす必要があるためで、Steam Deckの場合40W/時と、数年前のノートPCクラスの容量になっている。



 ポータブルなゲーム機の需要は、世界的に見るとそこまで大きくない。ただ、子どもを含め若い年齢層を中心に底堅い需要はある。そこではPCゲームとの親和性はそこまで求められていない、という事情も売れ行きには影響しそうだ。



 こんな話はどこも想定内だろう。Valveとしては「まだニッチでも、家庭用ゲーム機と戦えるところへ入っていく」ことがまず重要なのだろうし、そのための一手としては面白い。



 Windows系ポータブルゲームデバイスを作っている企業としては一番の競合だろうが、「Windows PCとしての実用性」「今手に入ること」などを打ち出していけば戦いようもある。何より彼らは、最初からこのジャンルがニッチであることが分かってやっているのだから。



 ただ個人的には、Arm対x86の一側面として注目しておきたくはある。



 AppleがArm系のApple Siliconに完全移行し、QualcommもSnapdragonで動くWindows PCの開発を加速している。スマートフォンではArm系が強いが、Chromebookだとx86とArmが入り交じる。ゲーム機の場合、据え置きはx86系が主軸になったが、ポータブルはどうだろう? 今はArm全盛だが、まだまだ分からない。



 個人的には「適材適所」として、据え置きとポータブルでアーキテクチャが違う時代が続くと読んでいるが、2年後には変わっていても不思議はない。



 数年のうちにx86系プロセッサの性能・消費電力バランスが変わり、もっともっと小さいものを作れるようになる可能性はあるが、その時にはArm系も進化している。どちらが好まれるかは想像に頼るほかない。



 その流れを読むためにも、Steam Deckの動向は注目しておいて損はない。



※この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、西田宗千佳さんのコラムを転載したものです。


このニュースに関するつぶやき

  • 一部にいるコア目のガジェット好きに売れるんだろうけど、評価次第ではいつもの買わない口だけの人達が日本でも充実させろとか言い出すんだろう(笑)
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  • なかなかのお値段なので、買う気になれない。現行のSwitch Liteで、満足しちゃってます。
    • イイネ!3
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