安東弘樹のクルマ向上委員会! 第48回 スポーツカーに未来はある? 安東弘樹、新型「GR 86/BRZ」に乗る!

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2021年08月06日 11:01  マイナビニュース

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トヨタ自動車とスバルの共同開発スポーツカー「86/BRZ」がフルモデルチェンジして2世代目となった。NAエンジンの排気量が400ccアップするなどごく正当な進化を遂げつつも、電動化など大きな変化は見られなかった新型車。クルママニアの安東弘樹さんは何を思った?

マイナビニュース編集部(以下、編):まず、2世代目が登場したこと(フルモデルチェンジしたこと)については、どうお感じになりましたか?

安東弘樹さん(以下、安):素直に、このモデルを絶やさないでいてくれたことには感謝しています。MT(マニュアルトランスミッション)の設定があるスポーツカーが絶滅することへの危惧を常に持っていますので……。

編:現行型(初代)と大きく変わったなと感じたところは? その進化の方向性には満足していますか?

安:デザインは塊(かたまり)感があって旧型より好きなのですが、実車を見て、誤解を恐れずに申し上げますと、驚きがなかったというのが正直な感想です。

安:走りに関しては、400ccの排気量アップによる動力性能の向上は感じましたし、全てにおいて、自動車としての性能がかさ上げされていることは実感できました。サーキットでの試乗でしたが、旧型の後に新型に乗って、「止まる」「曲がる」の部分も含めて、スピード域が違ったことに感心しました。

メーターがフルディスプレイ化されたり、全体的に進化はしたと思うのですが……。

編:なるほど。デザインと質感について、ご感想はいかがでしょうか。

安:前のお答えの続きになります(笑)。パッと実車を目の当たりにした時、「おー!」という言葉が出てこなかったのは、なぜだったんでしょうね? 「GRスープラ」や「GRヤリス」は初見で「おー!」という言葉が出てきたのですが、GR 86については「特別なクルマ」感を受けなかったんです。

外装でいえばバランスはいいと思うのですが、ヘッドライトの造形や中の灯火類などへのデザインの工夫がほしかったし、もう少し全体的に色気のようなものを感じられたら嬉しかったですけどね……。同じGRの「スープラ」は誰が見てもエロい(笑)し、「GRヤリス」も、WRCの系譜といわれて納得できるグラマラスな形をしてますからね。室内の「専用装備感」が希薄だったりするところが、そう感じる理由かもしれません。ドアの開閉音も「ドスッ!」とか「ガチッ!」という感じではなかったり、コンソールのカップホルダーの分割開閉の蓋に隙間があったり……。

安:さまざまな制約がある中で、懸命に作ったクルマであることは間違いないのですが、「乾坤一擲」という大勝負感が他のGRモデルとは違って見えたのは、やはりBRZと共用の部分も多いので、仕方がないと思います。無理に「GR 86」にせず、「TOYOTA 86 GRスポーツ」ということであれば、意識も変わっていたかもしれません。

ただ、GR 86を他のGRと比べたり、BRZをレヴォーグと比べたりすると、質感が劣っているように感じるので、そこは残念です。ドアやインパネのプラスチック部分も触ってみましたが、「シボ」を付けるなど、もう少し質感向上の工夫が欲しかったですね。

編:GR 86とBRZで、味の違いを感じた部分はどこですか?

安:内外装ではエンジン始動時のインパネのグラフィックくらいにしか違いを感じませんでしたが、サーキットを走ってみると、個人的には明らかな違いを感じました。

一言でいえば、「ソリッド」な乗り味のGR 86に対して、「上質」なBRZでしょうか。

安:エンジン回転の上がり方、落ち方もGR 86の方がシャープで、コーナーでのロールもGR 86の方が少ない。サーキットを走っていて「元気」と感じるのはGR 86でしたが、BRZがダルいという意味ではなく、例えばロールをしても最後は踏ん張ってくれるので、怖くはありませんでした。

これは好みが別れるでしょうし、味付けが違うことにより、ユーザーに選ぶ楽しみがあるのはいいことだと思いました。会場には半分がGR 86、半分がBRZのシャシーが展示されていましたが、目で見て、解説をそれぞれのエンジニアにうかがって、その違いに納得しました。

編:どちらが気に入りましたか?

安:正直、それぞれの違いがあるので、どちらが気に入ったかと問われれば、攻める時はGR 86で普段乗る分にはBRZ、という答えになりますね。
○「GR 86/BRZ」は誰向けのクルマなのか

編:GR 86/BRZはどんな人にオススメできるクルマですか? クルマ初心者や免許取り立ての人にも勧められるでしょうか。それと、GR 86は誰向け、BRZは誰向けといった感じで、各モデルで推薦する相手が違ったりしますか?

安:これが最も難しい質問で、かつ、今回の試乗で最も私が悩んだことでもありますね。

両車ともATを設定しているので、もちろん初心者でも運転できるクルマではありますが、あえて勧めることはないと思います。どちらも価格は300万円前後から400万円くらいになるそうですが、これが、誰に勧めていいか分からない要因です。初めてのクルマにしては、高価過ぎますよね(※)。

(※編集部注)新型BRZは308万円〜343.2万円と発表になった

旧型86/BRZは20〜30代のユーザーが3割を占めたそうで、他のクルマよりも若い世代が多く乗っていたそうですが、最も多いユーザーは50代だったそうです。本当は、ある程度運転に慣れてきて経験値もある30代に勧めたい気持ちもあるのですが、その世代の多くは小さい子供がいたり、生活重視のライフスタイルになっているのが一般的です。私は結婚が37歳の時で、30代の頃は収入におけるクルマ関連の支出の割合が最も高かったのですが、そんな生き方は一般的ではないですからね(笑)。ですから、86/BRZのユーザーに50代の方が多いのは分かる気がします。

ちなみに、私がフリーランスになった直後、『あいつ今何してる』(テレビ朝日の番組)に出演した時、VTRに出てくれた高校時代の同級生(50代、独身)が、まさに86に乗ってました(笑)。

現実的には、20〜30代になっても「親にクルマを買ってもらえる」ような環境にある方には、若いうちに基本的なFRスポーツカーに乗って、運転を好きになってほしいですね。しいていうなら、サーキットもたまには走ってみたいという方にはGR 86、一般道で上質な乗り味を楽しみつつスポーツ走行もしたいという方にはBRZがオススメという感じでしょうか。

編:カーボンニュートラルに向けた動きや電動化も踏まえてお聞きしますが、次のフルモデルチェンジがあるとしたら、このクルマはどうなるでしょうか? どうなってほしいですか?

安:これも難しいですが、ヨーロッパの各メーカーは、スポーツカーにおいてもマイルドハイブリッド化やダウンサイズ化を進めています。日本は逆の方向になっているのが興味深いし、判断が難しいところです。

実質燃費がどうなるかによりますが、今回もNAエンジンにこだわって排気量を上げてきたので、これで効率が良くなって、動力性能と燃費が両立できていたら存在意義はあるでしょうが、排気量アップの分だけ燃費も悪くなっているのであれば、残念といわざるを得ないでしょうね。さすがに数年後、この方向性のままのフルモデルチェンジはないと思います。

編:漠然としてしまって申し訳ないのですが、日本のスポーツカー全体に対して期待することはありますか?

安:一度は火が消えてしまった日本のスポーツカーですが、最近はメーカーの努力もあって、絶滅は免れています。ただ、世界を見渡すと、EVのとんでもないスペックのスポーツカーや、ハイブリッドスポーツカーなどが百花繚乱といった感じで出現していますよね。それを考えると、また半周遅れになっていると感じるのも確かです。

投じられる予算が違うとはいえ、2L・400馬力の性能で実質燃費10Km/Lを実現する「スポーツカー」や、逆に900ccのターボで車重1tちょうどの「スポーツカー」があったり、ベースがスポーツカーでなくても「スポーツ」できるクルマもあるなど、海外勢を含めると選択肢は豊富なわけです。そんな時代に専用設計で生み出されたスポーツカーが、古来のままのシンプルな、今や大排気量に分類される2.4LのNAエンジンを積んでいて、FRレイアウトで電動化は皆無。それを美徳と考えるか、時代遅れと考えるかは本当に難しい判断です。スポーツカーの分野では、日本メーカーの立ち位置は難しくなると思っています。

編:開発陣との話で印象に残ったことはありましたか。

安:これも難しいのですが、皆さんと話す中で、やはり価値観の大きな変革は感じなかったです。これまでの86やBRZの正常進化を突き詰めたのだなと感じました。

これは悪いことではないのですが、個人的には、大胆に排気量を下げて過給しても、低速域でのモーターアシストを考えるのもいいと思います。要は運転して気持ちよければ、NAにこだわる必要もないと私は考えているので、「これぞ新時代のスポーツカー!」というのを期待するのは、しばらくは難しいのかなと正直、感じました。これには原資も必要ですし、それを容認する経営陣の判断も必要になってきますので、現場のエンジニアの皆さんは色々と大変だと思います。

安東弘樹 あんどうひろき 1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。 この著者の記事一覧はこちら(安東弘樹)

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