金色の屋根付き“ド派手な霊柩車”が消えた? 昨今の主流は洋型、霊柩車のイマドキ事情

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2021年08月07日 13:00  週刊女性PRIME

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写真宮型霊柩車 写真提供/ハース・ジャパン
宮型霊柩車 写真提供/ハース・ジャパン

 最近、めっきり目にしなくなったギラギラと輝くド派手な霊柩車。いったい、あの霊柩車はどこに行ってしまったのだろう。そこから見えてきた、霊柩車にまつわるイマドキの事情とはーー。(取材・文/ライター・熊谷あづさ)

3タイプに分かれる霊柩車

 子どものころによく目にしていた、黒い車体に金色のお社のような装飾をつけたド派手な霊柩車。そういえばこのごろは、“ザ・霊柩車”的な霊柩車を見かけなくなりました。とはいえ、霊柩車は昨今の葬儀の過程で欠かせないもののひとつです。

 そもそも、霊柩車が一般的に用いられるようになったのは1910年代後半だといわれています。当初はトラックの後部に輿を据えてご遺体を搬送し、次第に輿が据え置きの形になったそうです。

 ド派手な霊柩車の行方やその種類といった、霊柩車に関する疑問や近年の霊柩車事情について、名古屋を中心に愛知県、岐阜県、東京都でご遺体の搬送業務を行う霊柩自動車運送事業の専門会社「(株)ハース・ジャパン」にお話をうかがいました。

「霊柩車には3つのタイプがあり、一般的に霊柩車でイメージされるお社のような輿がついた車両は『宮型』です。

 地域によって輿のカラーやデザインが異なり、たとえば関東では一般的な木と金細工を利用したものになりますが、名古屋では“黒壇”と呼ばれる黒い車両や、龍や鳳凰がついたものもあります。関西には“白木”と呼ばれる未塗装のものがあり、定期的に表面を削って磨き、白木の状態を保たなければならない、大変手間のかかる車もあります」

 昨今、主流なのは『洋型』と呼ばれるタイプ。リアオーバーハング(タイヤの後ろからトランク)を延長したものや、車両の中間(ホイールベース)を延長したものがあり、屋根は革張りとなるそう。

「また、『寝台車』と呼ばれ、病院からご自宅や、病院から葬儀会館など、主に葬儀以外でのご遺体の搬送に使うタイプもあります。近年は葬儀の低価格化や葬儀で目立ちたくない方のために、寝台車を利用した出棺が行われることも多くなっています。

 この3つのタイプ以外に、一部地域ではバスの最後部などに棺を納める『バス型』が主流のところもあります」

宮型霊柩車の「乗り入れ禁止」も

 3タイプあるという霊柩車の中でも、やはり気になるのは“ザ・霊柩車”のイメージの『宮型』です。

「自動車が普及する前から、葬儀の際には遺体を収めた棺を輿に乗せ担いで運んでいました。やがて人力の部分が自動車に入れ替わり、輿はそのまま残って宮型霊柩車となりました」

 その外見にはれっきとした理由があるものの、近年、宮型霊柩車の利用は減少しているといいます。

「以前から減少傾向がありましたが、弊社では3年ほど前に廃止しました。なぜかというと、2015年に名古屋市内に新しく火葬場ができた際、地元住民の方からの要望などを受け、宮型霊柩車の乗り入れが禁止になったからです。この乗り入れ禁止は、名古屋市内に限ったことではありません。

 また、『派手な車で移動したくない』というご遺族のご意向が増えていることも、宮型の利用が減っている理由のひとつです。ただし、宮型の利用には地域差があり、たとえば岐阜県ではいまだに現役の場所もあります」

 宮型霊柩車の利用は減ってはいるものの、まったく需要がなくなったわけではないようです。

以前、弊社では『大飛龍』という屋根に龍が乗ったデザインの霊柩車を保有していました。名古屋という土地柄、故人様が中日ドラゴンズファンだったということでご利用いただいたことがあります。また、『霊柩車といえば宮型』というお気持ちを持つご遺族様も少なからずいらっしゃるようです」

 ちなみに、宮型霊柩車は今、意外な場所でニーズがあるのだそう。

「国内で利用された霊柩車はボディを大幅に改造しているため、普通車として使うことができません。また、『縁起が悪い』という印象もあり、使用が終わった後、次のオーナーさんを見つけにくいという事情があります。しかし、宮型霊柩車の独特なデザインがうけて、アジアや海外の一部ユーザーに支持されていると聞いています

 実際にSNSでは、海外の葬儀で「日本の霊柩車を見た」という声も見られる。

 家族葬や小規模な葬儀など、近年の葬儀の簡略化が見られる昨今。その流れは霊柩車業界にも少なからず影響を与えている。

家族葬や小規模の葬儀では、費用を抑える意味でも寝台車が選ばれる傾向があり、寝台車の需要が増えてきています。その一方で、寝台車を使った後に『やはり霊柩車の方がいい』と思われるご遺族様もいらっしゃるようです。最後に故人様と同乗できる人数が多いことからリムジンタイプなど、複数人が乗車できる霊柩車が選ばれるケースもみられるようになりました。

 葬儀自体も、コロナ渦で大切な人の最期に会えなかった方や、小規模の葬儀を実施した後に親族や友人から『最期に会いたかった』と言われた方が、次にある程度の規模で葬儀をするケースが出てきたことを実感しています」

 刻々と状況が変わりゆく葬儀業界の中で、いつかまた、宮型がメジャーな霊柩車となる日が来る……かもしれない。

Q 霊柩車の運転に「特別な資格」は必要?

「霊柩車専用の資格はありません。ただし、特別な訓練はしっかり行っております」((株)ハース・ジャパン)

 故人と遺族を乗せ、お別れの場所まで移動する霊柩車は「安全」「安心」が最優先。

「ご遺族の悲しみは、それぞれに違います。ドライバーは、ご遺族の気持ちに寄り添い心を込めた対応を心掛けています。さらに霊柩車が移動する際、ご家族が後から車で付いてこられるケースがほとんどなので、列を切らさずに火葬場まで向かう必要があります。道路交通法を遵守するのはもちろん、ご同乗の方や後続車両にも気配りをするための訓練を実施しています」

 また、最近では新型コロナウィルスが原因で亡くなった人の搬送を行うことも。ドライバーはさらに別の教育を受けた上で、特別な対応が求められているのだそう。

取材・文/熊谷あづさ
ライター。猫健康管理士。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。ブログ:「書きもの屋さん」Twitter:@kumagai_azusa Instagram:@kumagai.azusa

 

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  • 小さい頃弟が「何あの車!かっこいい!!僕も乗りた〜い!」って言ってたのを思い出したw
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