トイレ中に「サヨナラ」「同点」見逃し…?楽天・野村監督の歴代珍プレーを振り返る

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2021年08月28日 10:54  ベースボールキング

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名将・野村克也監督にまつわる「珍」 (C) Kyodo News
◆ 野村監督が試合中にトイレに行くと…?

 プロ野球の長い歴史の中で起こった「珍事件」を球団別にご紹介していくこの企画。

 今回は東北楽天ゴールデンイーグルス編だ。




 2005年、東北を本拠地とする初の球団として新参入した楽天。

 歴史こそセパ12球団の中で最も浅いが、野村克也さんや星野仙一さんといった名将が監督を歴任し、星野監督時代の2013年には球団創設9年目で初のリーグ制覇と日本一を実現した。

 その一方で、思わず目が点になるような珍事件や珍プレーなどのエピソードも枚挙に暇がない。



 今回は、その中でも野村監督が主役になった珍事件から紹介する。

 まずは2008年4月11日のオリックス戦。9回に追いつかれた楽天は4−4の延長10回、先頭の渡辺直人が左前安打で出塁し、高須洋介の送りバントで一死二塁と一打サヨナラのチャンスをつくる。

 この場面で、野村監督は山下勝充を代打に送ったが、直後、猛烈な尿意を我慢できなくなり、大慌てでトイレに駆け込んだ。

 「ずっと我慢していたんだけどね。我慢できなくてさ。寒いからトイレが近いんだよ。全力疾走で行ったんだよ」

 72歳の指揮官にとって、4月とはいえ、まだ寒さもハンパではない杜の都・仙台の気候はこたえたようだ。


 ところが、野村監督がトイレから戻ってくる前に、山下は中前安打を放って二塁から渡辺がホームイン。サヨナラでゲームセットになった。

 不覚にも勝利の瞬間に立ち会えなかった野村監督は「(通路で)ワーッ!て声が聞こえてきたんだよ。傑作だな。こんなことは野球人生で初めてだよ。まさか山下も打つとは思わなかったし。でも、間に合うと思ったんだけどなあ」とさすがにバツが悪そう。

 本塁上のクロスプレーが微妙なタイミングだったため、オリックスのテリー・コリンズ監督が「完全にアウトじゃないか。足が入っていない」と激しく抗議したが、飯塚富司球審は却下。

 もし判定がアウトだったら、肝心の場面を見ていない野村監督はどんな抗議したか、想像しただけでも楽しい。


 ちなみに、野村監督は翌09年4月24日のソフトバンク戦でも、8回の高須の同点タイムリーをトイレに行って見逃しており、戻ってきた直後、草野大輔の右前タイムリーで鮮やかな逆転勝ち。

 度重なる“ご利益”に、「トイレに行ってるほうがいいのかな」とまんざらでもなさそうだった。


◆ 「審判は石ころだから」

 内野ゴロで追加点のチャンスを逃したかにみえた直後、まさかのどんでん返しが幸運をもたらしたのが、2007年6月17日の横浜戦だ。

 1点を追う楽天は2回、四球と牧田明久の安打で二死一・二塁としたあと、中島俊哉の左越え二塁打で2−1と逆転。なおも二死二塁で、次打者・嶋基宏は二遊間にゴロを転がした。

 セカンド・仁志敏久が捕球態勢に入り、スリーアウトチェンジと思われた次の瞬間、なんと、打球は仁志の前に立っていた有隅昭二二塁塁審に当たり、イレギュラーして軌道が変わってしまう。

 ボールデッドが宣告され、嶋には二塁内野安打が記録された。そして、二死一・二塁で試合再開。こうなれば、流れは楽天のものだ。

 次打者・渡辺は中前に3点目となるタイムリー。この1点が最後にモノを言って、楽天は3−2で逃げ切った。


 幸運な内野安打が呼んだ勝利に、試合前は「カツノリから(父の日の)プレゼントがないな…」とボヤいていた野村監督も、「あそこは試合のポイントになったね。あれはセカンド正面?審判は石ころだから」と一転上機嫌だった。

 一方、結果的に守備を妨害される形になった仁志は「当たっていなければ、2失点のままスリーアウトチェンジだったのに。(有隅塁審の)反応が悪いから。『運動不足だ』って言っておきました」と試合後も怒りが覚めやらなかった。


◆ まさかの2度打ちで「守備妨害」

 “石ころ事件”とは逆に、幸運な結果を生んだと思われたプレーが、一転アンラッキーな判定に早変わりしたのが、2017年6月25日の日本ハム戦だ。

 4−0とリードした楽天は7回一死一塁、3番・聖沢諒が2ストライクから白村明弘の低めに落ちる球に対し、バットを投げるようにして強引に当てに行った。

 その甲斐あって、バットはかろうじてボールに当たり、ボテボテのゴロがショート・中島卓也の前に転がった。

 緩い打球だったことが幸いし、一塁も二塁もオールセーフ。チャンスが広がったかに見えたが、ここで審判団から「打球が本塁付近で不自然にバウンドしたように見えた」と物言いがつく。

 問題のシーンのVTRをスローモーション再生すると、なんと、一度バットに当たった聖沢の打球は、直後跳ね返ってグリップ付近に当たっていた。

 野球規則6.05hにより、聖沢は“2度打ち”による守備妨害でアウトになり(記録は捕ゴロ)、二死一塁で試合再開。ビデオ判定に泣く結果となった。

 だが、得点力不足解消の打線組み替えで、この日ジャフェット・アマダーに代わって前日の6番からシーズン初の3番に抜擢された聖沢は、初回の先制タイムリーで勝利に貢献したとあって、「しょうがないですね」とあまり気にしていなかった。

 今季は「一魂日本一の東北へ」をスローガンに8年ぶりの優勝を狙う楽天。今回紹介した選手たちとはメンバーが入れ替わったが、シーズン後半も、“鷲戦士”たちのプレーから目が離せない。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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