今晩はちょっとだけ丁寧に料理がしたくなるかも? 『広告会社、男子寮のおかずくん』のあたたかい魅力

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2021年09月09日 09:01  リアルサウンド

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『広告会社、男子寮のおかずくん』の魅力

 最終巻である第7巻が8月に発売された『広告会社、男子寮のおかずくん』が面白い。


 広告代理店で働く営業の西尾、マーケティングチームの東良、クリエイティブチームの北、経理部の南郷。同じ男子寮で暮らす4人はふとしたことがきっかけで毎週金曜に料理を持ち寄ってご飯会をすることに。西尾はおかずを、東良は汁もの、北はごはん、南郷ははし休めもしくはデザートと担当も決まっているのでメニューがかぶる心配もなくて安心だ。


 日々仕事に追われつつも、週末の夕飯で心のスイッチをオフにする4人の日常を描いた本作は、2019年に黒羽麻璃央主演でドラマ化もされている人気作品だ。


仕事はラクではないのだ

 主人公は営業の西尾。失敗もあるし、悩むこともある。仕事に一生懸命だからこそぶつかってしまう壁もある。社会人2年目の彼が物語の中で少しずつ成長していく様子がとてもリアルだ。ただ、失敗するたびに少しずつ成長を見せるのは彼の持ち前のポジティブさによるものだろう。そして、そんな彼の成長には週末のご飯会が欠かせない。


 東良は同期、北と南郷は先輩にあたるが、そのときどきで抱えている悩みにそれぞれが真摯に応えてくれる。同じ会社で、違う部署なのが良い方向へ作用しているのかもしれない。意地悪をしたり、わざとアドバイスをしなかったり、なんてことはない。そもそもそんな人がいたら、ほのぼのとしたご飯会は続きづらいだろうが……。


 メンバーの誰かが落ち込んでいるときは元気が出るメニューを、誰かに良いことがあったときはささやかなお祝いを。そんな小さな癒しの時間が次の週の仕事への活力になる。


家庭の味と、キャラクターの背景が見える

 手料理は、本人がどのような人生を送ってきたかが垣間見える。「母が作ってくれた」というオリジナル料理を披露すると、その人の母親のキャラクターも少しわかる。ときには、出身地ならではの料理を作ることも。まったく違う場所で生まれ育った人たちが食卓を囲むことで少しずつ世界が広がっていく。共有するものが増えて、距離も縮まる。「同じ釜の飯を食う」というのは週に1回だけでも結束力を高めるのかもしれない。


 それに料理というのは性格が出る。こまやかだったり、大胆だったり、適当だったり。普段の生活も出る。やたらとオシャレなつまみが出てきたら、普段どんなお店で食事をしているのか想像できたりしてしまう。食へのこだわりももちろん伝わってくる。思っているよりも料理という行為は、その人自身をさらけ出させてくれるのかもしれない。


食べることで心にパワーを

 作中では、「食事を摂って元気が出た」というシーンがたびたび出てくる。落ち込んでいても、豪快に肉を焼いてかぶりつけば、少し心は前を向く。むしゃくしゃしたときに辛いものを食べて汗をかいたら心もスッキリする。


 食べたものが体に反映されるのは、当たり前すぎて忘れてしまうかもしれない。少し食生活を変えただけで肌ツヤがよくなることもある。それと同じように、食事で心も潤う。食べるものがそっけないと、どうしても下向きになってきてしまう。そして、誰かが一緒にいると、食べるものも変わってくる。


 『広告会社、男子寮のおかずくん』では生活の中に当たり前にある食事のシーンを重点的に描くことで、食事がどのように生活に影響を与えているのかを教えてくれているように思う。読むと、「明日は自分が食べたいものを少しだけ丁寧に作ってみよう」と思える。


 あと『おかずくん』の良いところは、手に入れやすい食材で作れるレシピが満載なところだ。筆者は第6巻32話に登場した「なすの肉詰め」がお気に入りである。


『広告会社、男子寮のおかずくん』1巻(クロフネコミックス)

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