長友佑都は欧州からJ復帰で活躍できるか。中村俊輔から清武弘嗣などの例に見る成功の条件

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2021年09月16日 11:21  webスポルティーバ

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 欧州でプレーしていた日本人選手の「Jリーグ復帰」のニュースが相次いでいる。

 この夏、酒井宏樹(浦和レッズ)、武藤嘉紀、大迫勇也(ともにヴィッセル神戸)、乾貴士(セレッソ大阪)など、錚々たるメンバーが戻ってきた。いずれもロシアワールドカップの日本代表選手だ。そして、インテル時代にチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント進出を経験した長友佑都も、古巣であるFC東京へ11年ぶりに復帰を果たしている。

 世界のトップと渡り合ってきた選手たちの"帰還"に、当然ながら期待感は高まる。

 Jへの復帰の成否という点でいうと、中村俊輔(横浜FC)は最たる成功例と言えるだろう。レッジーナ、セルティック、エスパニョールと3カ国の有力クラブに在籍し、セルティック時代にCLで対戦したマンチェスター・ユナイテッド相手に叩き込んだFKは今も語り草になっている。2010年にかつて所属した横浜F・マリノスに復帰後は、7シーズンに渡って主力として活躍し、2013年にはJリーグMVPに輝いている。43歳になって今なお現役だ。

 Jリーグ復帰の日本人選手がその実力を発揮し、成功する条件とは――。




 プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、セリエA、リーグアンの欧州5大リーグで場数を踏める日本人選手は限られている。その実力に疑いの余地はない。そこで実績を積んだ選手は、明らかにJリーガーよりも「世界」を感じさせる。

 しかしながら、「欧州で培った実力=Jリーグでも活躍」という単純な図式では結ばれない。

 大迫も武藤も乾も、日本復帰後は"点"で見るとスケール感のあるプレーを見せている。しかし"線"で見ると、まだまだフィットできていない。単純なパスや動きのタイミングが合わない場面が多いのだ。

 欧州では、プレーに「個」が強く出る。局面では常に個で相手を上回る、あるいは潰すという戦いが迫られる。プレー強度が高く、それをかわすための老獪さが必要で、そこから駆け引き勝負となる。「パスをよこせ」という我が強い一方、「よそ者にはパスを出さない」と鼻を鳴らす者もいる。個の主張がお互いに激しい中でのプレーが繰り広げられる。

 一方、Jリーグは良くも悪くも「組織」が基本にある。協調性の中で、お互いが尊重し合う。例えばチャレンジ&カバーが徹底され、集団として戦えない選手は使われない。逆に、個人の失敗への許容範囲が狭く、崩しやクロスでは欧州や南米より成功率の高さを求められ、結果的に、石橋を叩いて渡るようなプレーが多くなるのだ。

 欧州で長年プレーしていた選手は、"欧州型"のプレーリズムや感覚を身につけている。日本に戻っても、すぐにはそれを脱ぎ捨てられない。必然的に周囲と合わない部分が出る。マイナーチェンジをせざるを得ないが、そこで無理をしてコンディションを悪くしたり、持ち味を出せずに悩んだりすると、悪い流れに乗ってしまうのだ。

 高原直泰は、南米アルゼンチンのボカ・ジュニアーズで半年過ごした後、ジュビロ磐田に復帰した2002年シーズン、JリーグMVP、得点王の二冠を獲得した。当時は半年という短い期間が刺激になり、エコノミー症候群で日韓W杯を棒に振った無念さなどへの反発もあっただろう。古巣復帰ではストレスなく実力全開だった。ただその後、ドイツで5シーズン半を過ごした後、鳴り物入りで浦和レッズに入団したシーズンは期待された活躍ができていない。

 欧州でのプレーは、選手を経験豊かにさせると同時に、本人に無自覚の消耗も強いている。消耗の種類はさまざまだろう。海外では適応するだけで心身ともに身を削るもので、さらにプレー機会が奪われたり、チームの降格や契約解除で居場所を失ったり、不確定要素と常に向き合うことになる。それは成長を促す一方、精神も肉体も疲弊させるのだ。

 Jリーグに復帰したら活躍できるというのは楽観的すぎるだろう。

 これまでの復帰の例を見ていると、古巣へ戻ることはひとつのアドバンテージになるかもしれない。関係者が残っていれば、勝手を知っているのもあるだろう。ファン・サポーター・メディアにも長い目で見てもらえる。

 大久保嘉人(C大阪)は、二度にわたって欧州から同じチームに復帰している。一度目はC大阪→マジョルカ→C大阪。二度目は神戸→ヴォルフスブルク→神戸。復帰したC大阪では降格の憂き目を見たが、本人は神戸に移籍し、再び欧州へ。復帰後の神戸でもチームは不調だったが、大久保は代表に選ばれ、南アフリカワールドカップでのベスト16進出に大きく貢献した。

 小笠原満男も、イタリア(メッシーナ)では散々な結果だった。しかし、鹿島アントラーズに戻ってからは主将として、4度のJリーグ優勝に貢献。2009年にはMVPも受賞した。

 そして清武弘嗣も、C大阪に帰ることで成功した。2016−17シーズン、清武は欧州の強豪セビージャに入団したが、慢性的なケガにも悩まされ、プレー機会を失っていった。C大阪に復帰すると、しばらくはケガで思うようなプレーができなかったが、徐々にプレー時間を増やしていった。そして2020年にはキャリアハイとなる8得点で攻撃をけん引し、優秀選手賞を受賞している。C大阪以外のクラブだったら、そこまで時間を与えられず、厳しい目に晒されていたかもしれない。

 もちろん、古巣復帰だけが成功の選択肢ではない。欧州を渡り歩いた時のような、強靭な適応力を示すことができれば、結局はどのクラブでも活躍できるはずだ。浦和に移籍した酒井は、チームスタイルにフィットするというより、「浦和をイノベーションする」というようなダイナミックな攻守を見せている。

 9月18日、味の素スタジアム。背番号50をつけた長友は、横浜FC戦で復帰戦に挑む予定だという。

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