“予想外”の優勝が現実味、ヤクルトの強さ支える高津監督の「言葉」【燕軍戦記】

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2021年09月18日 18:00  AERA dot.

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写真ヤクルトの高津臣吾監督 (c)朝日新聞社
ヤクルトの高津臣吾監督 (c)朝日新聞社
「これからもっともっと大事なというかね、ビッグゲームが待ってると思う。自分のことをしっかり理解し、自分の足元をしっかり見つめて、周りのチームメイトを信じ、この『チームスワローズ』が一枚岩でいったら、絶対崩れることはない。絶対、大丈夫。しっかり自信を持って戦える」


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 9月7日の甲子園球場。セ・リーグの首位を行く阪神との3連戦初戦を前にしたミーティングで、ヤクルトの高津臣吾監督(52歳)がナインに贈った言葉は、熱い響きに満ちていた。指揮官の言葉は続く──。


「これが『チームスワローズ』。これで今年ずっと戦ってきた。去年の反省を生かし、今年どうやって戦っていくか。去年の悔しい思いをどうやって今年晴らすかっていうことをずっとやってきたのが、今年の『チームスワローズ』。みんな自信を持って頑張れる。絶対大丈夫、絶対いけるから。絶対大丈夫。もし、今日グラウンドに立つ時にふと思い出したら『絶対大丈夫』と一言いって打席に、マウンドに立ってください。絶対大丈夫だと。どんなことがあっても僕らは崩れない」


 この模様はヤクルトの公式YouTubeチャンネルで公開されているが、高津監督は4分半ほどの訓示の中で「大丈夫」と7回繰り返し、うち6回は「絶対」を頭に付けて言葉に力を込めている。そこには指揮官なりの狙いがあった。


「『絶対大丈夫』ということは伝えたかったですね。(自分が)ずっとそう思いながらやってきたので、それを選手にも伝えたかったというか。迷いなくグラウンドに立てるように、迷いなく自分のパフォーマンスをグラウンドで発揮できるようにしてあげるのが、僕の役目だと思ってますので。多少なりともそれで背中を押してあげることができるならば、とは思ってます」


 その甲子園での3連戦に勝ち越したヤクルトは、2カ月ぶりに戻った本拠地・神宮でDeNAに勝って2位に浮上。ところが、そこから移動日なしで敵地に乗り込んだ中日との2連戦に連敗し、3位に逆戻りしてしまう。



 特に13日の試合は0対1の9回表、1死一、二塁からセカンドゴロで封殺されたはずの一塁走者が挟まれ、その間に三塁に進んでいた二塁走者が本塁を狙って憤死。さらに中日側のリクエストで二塁封殺が認められて試合終了という、なんとも後味の悪い幕切れになった。


 だが、先のミーティングで選手たちに「何かあったら僕が出ていくから」と宣言していた指揮官は、簡単には引き下がらなかった。ベンチを飛び出して審判団に説明を求め、およそ15分にわたって抗議。大きな身振りを交え、時に激しい口調で迫る高津監督をダグアウトから見つめるナインの姿は「一枚岩」そのものに映った。


 しかし悪い流れは止まらず、再び神宮に戻って行われた阪神との2連戦の初戦は、9回表に守護神のスコット・マクガフが同点3ランを浴びて手痛い引き分け。それでも「(昨年と比べて)変わった部分はたくさんあると思います。技術的なこともそうですし、精神的なこともそうですし、強くなったことはたくさんあるのかなと思います」と指揮官が評していた「チームスワローズ」は、そのままズルズルいくことはなかった。


 一夜明けた翌15日の同カード。7月に新型コロナウイルス陽性判定を受け、五輪開催に伴うシーズン中断期間が明けても精彩を欠いていた開幕投手の小川泰弘が、気迫のピッチングで8回途中まで零封。セットアッパーの清水昇が二死満塁のピンチをフォークの連投で切り抜けると、9回はマクガフが阪神打線を三者凡退に抑え、初回に村上宗隆のタイムリーで挙げた1点を完封リレーで守りきった。


 高津監督のいう「強くなった」ヤクルトを象徴するような“スミイチ”での勝利。前夜の悪夢を払拭してみせたマクガフの体をグッと引き寄せてハグした指揮官は、その後の会見でも守護神をねぎらった。


「難しかったと思います。どの1点差ゲームよりも難しい1対0だと思うので、そこに上がっていく9回のマウンドは勇気が要ったと思いますし、昨日の今日だったんでね。全ては今日抑えたことが、チャラにはならないですけどね、気分を晴らしてくれるんじゃないかなと思います」


 おそらくはそのマクガフのみならず、先発した小川も中継ぎの清水も、いや、あの甲子園で指揮官に「絶対大丈夫」という言葉を直接、吹き込まれた選手は誰もが、その5文字を胸に刻んで試合に臨んでいたはずだ。それはこの先も変わることはないだろう。



 9月17日からスタートした10連戦の初戦となった巨人戦(東京ドーム)ではプロ2年目、20歳の奥川恭伸が初回に1点を失いながらも、崩れることなく尻上がりに調子を上げた。プロ入り後、初めての中10日未満で自己最多の103球を投げ、7回1失点で7勝目。「自分が投げてる時も、後ろを見れば、守ってくれる、声を掛けてくれる野手の方もたくさんいる。仲間を信じて、チームメイトを信じて、その気持ちが自分を楽にしてくれている」と話した。


 この勝利でセ・リーグ2位のヤクルトは首位・阪神とのゲーム差を2に縮め、3位・巨人との差は1ゲームに広げた。1週間ほど前には「(順位は)意識しないと言ったら嘘になりますね。ただ、いつも言ってるけど、やっぱり目の前の試合にどうやって勝つかとか、そういうことで頭がいっぱいで」と話していた高津監督も、この日の試合後の会見では「上位(阪神、巨人)は今後、優勝するためには絶対に勝たなきゃいけない相手だと思います」と「優勝」の2文字を口にしている。


 昨年まで2年連続最下位のヤクルトだが、振り返ってみれば前回優勝した2015年も、前の2年はいずれも最下位。その2015年は、今季と同じ108試合消化時点では首位の阪神から3.5ゲーム差の2位であり、今年の方がより優勝に近い位置にいることになる。これからは嫌でも意識せざるをえなくなるだろう。


 ヤクルトの残り試合は、今日の巨人戦を入れて「35」。セ・リーグ6球団の中で最も多く、この10連戦が終わっても6連戦がビッシリと並ぶなど、スケジュール的には楽ではない。ただし、どんなに厳しい状況であろうとも「チームスワローズ」は最後まで一枚岩となって戦い抜くはずだ。指揮官に注入された「絶対大丈夫」の言葉を胸に──。(文・菊田康彦)


●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004〜08年『スカパーMLBライブ』、16〜17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。


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  • もう高津監督は名監督でいいだろ。 あの戦力で優勝争いの時点で。
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