不甲斐ない先輩/小林私「私事ですが、」

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2021年09月18日 20:11  ダ・ヴィンチニュース

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ダ・ヴィンチニュース

写真小林私
小林私

美大在学中から音楽活動をスタートし、2020年にはEPリリース&ワンマンライブを開催するなど、活動の場を一気に広げたシンガーソングライター・小林私さん。音源やYouTubeで配信している弾き語りもぜひ聴いてほしいけど、「小林私の言葉」にぜひ触れてほしい……! というわけで、本のこと、アートのこと、そして彼自身の日常まで、小林私が「私事」をつづります。なお今回は、「夏真っ盛り」の時期に書いてくれた「私事」をお届けします。

『鳥肌が』レビュー/小林私「私事ですが、」

 初めまして、小林私です。

 近頃は夏の熱気がいよいよ凄まじく、しかし窓から見上げる入道雲に圧倒され
「少し散歩でもしてみやうか」と外に出るや否や、やはり暑さに耐え切れず空調の効いた部屋に舞い戻ってしまう。
そんな日々を送っております。

でも本当はNintendo Switchを買ったばかりなので少しもそんなことはしていません。
ポケモンユナイト最高〜〜!

いい加減にしないと初めましての方は根こそぎいなくなる気もしていますね。

 さて、皆さんはyamaを知っているだろうか。

「春を告げる」がスマッシュヒット、YouTube上で8千万超の再生数を叩き出す今や有名アーティストだ。
そんなyamaと今年の5月に新潟能楽堂で共演をした。なんでかはよく分からないが、とにかくした。

ライブの内容は当時のライブレポートなんかを読んで頂くとして、そのライブの前に後輩からとある連絡が届いた。

「先輩、一つ相談があるんですが。yamaのサインもらってきてくれませんか」

とのことだ。

彼は高校時代の演劇部の後輩で、当時は出会って一週間で「もうタメ口でいっすか?笑」と聞いてきた可愛い後輩だ。

可愛い後輩の頼みなので俺はこう返した。

「貰えても貴様にはやらん」

と、ここまでは互いにいつもの軽口だ。

しかし彼の返答は意外なものだった。

「俺が、というより彼女が好きで、サプライズみたく渡せたらな、と。
図々しくてごめんなさい」

おいおい、本当に可愛い後輩になってしまったじゃないか。
こっちが馬鹿丸出しでふざけたのが恥ずかしいくらいに純粋なお願いだった。
そういうことならばこちらも頼れる先輩になろう。

先刻の馬鹿丸出しを隠そうと、しかし必ず貰ってきてやるからなという意思で返信した。

「yamaと仲良くなれたらな」

そしてその2ヶ月後、俺はyamaとの対バンを無事に果たし、意気揚々と帰宅した。

もう流れでお気付きだろう。

忘れたのだ。

可愛い後輩が恥を忍んでしてくれたささやかなお願いを、俺は忘れたのだ。

大体2ヶ月前に言われても忘れるだろ。せめて直前にもう一回連絡しろ。俺は行きの時点で忘れてるんだぞ。

責任転嫁ばかりが頭に浮かんだ。
俺は謝罪するにも出来ず、それ以降特に連絡をしなかった。

そして公演から3ヶ月後、朝目を覚ますとその後輩から着信履歴が残されていた。
ついに、平謝りの時がきたか…と、しかし即電話するのは怖いので、

「yamaと仲良くなれなかった」

と送った。単なる言葉遊び、言い訳だ。
するとまたもや意外な返答があった。

「連絡来ないから忘れられてると思ってました笑
今度花火しません?」

今度花火しません!?!?!?

俺は忘れたんだ。共演者のサインすら貰えず、お前との約束を忘れ、お前の彼女への思いも踏みにじったカス野郎なんだ。
そんな俺を、花火に誘ってくれるのか。

いい後輩を持てて良かったと、不意にその後輩からの昔の連絡でも見てみるかという気分になった。

1月18日、俺の誕生日に連絡してくれている。

「誕生日おめでとうございます!今度ご飯行きません?」

「先輩の奢りで」

お前もカス野郎かい。

全部忘れてください、さようなら

こばやし・わたし
1999年1月18日、東京都あきる野市生まれ。多摩美術大学在学時より、本格的に音楽活動をスタートし、2020年6月に1st EP『生活』を発表。シンガーソングライターとして、自身のYouTubeチャンネルを中心に、オリジナル曲やカバー曲を配信し、支持を集めている。6月30日、デジタルオンリーの新作EP『後付』(あとづけ)を発表。表題曲の“後付”は、今秋公開予定の映画『さよならグッド・バイ』の主題歌になることも決定している。また、5月に配信オンリーでリリースしたEP『包装』が、“サラダとタコメーター”(Acoustic Ver.) をボーナストラックとして追加、タワーレコード限定で発売中。

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