筒香嘉智が3球団目で成功した理由は? メジャーを渡り歩いた斎藤隆が分析

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2021年09月19日 06:51  webスポルティーバ

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 メジャーリーグの2021年レギュラーシーズンがまもなく終わろうとするなか、今季3球団目のピッツバーグ・パイレーツに移った筒香嘉智が猛打を炸裂させている。27試合で71打数21安打、打率.296、7本塁打、OPSは1.083だ(現地9月16日時点)。

 今季、タンパベイ・レイズでは打率.167、ロサンゼルス・ドジャースでは12試合3安打と低迷したなか、パイレーツ加入後に突如打ちまくっているのは、なにか理由があるに違いない。各メディアが関心を寄せ、謎を解こうとしている。




 果たして、筒香は日本時代の打撃を取り戻すことができたのか、あるいはマイナーリーグで新たな感覚を掴んだのだろうか。

「そこに関しては短時間で伝えるのは難しい。両方もちろんあると思う」

 9月4日のシカゴ・カブス戦後、記者の質問に筒香はそう答えた(翌日の『スポーツニッポン』電子版より)。スイングの始動が早くなったという指摘や、広角に打つ意識が功を奏しているという声もある。

 真相は今季終了後に筒香自身が語るだろう。日本人打者がどうやってメジャーに適応したかは興味が尽きないと同時に、活躍の背景として見逃せないのが環境要因だ。

「ナ・リーグの中地区は、バッターが最初に行くにはすごくいいところだと思います。これまでは行く先々でデカく感じる球場が多かったと思いますが、中地区には日本に近いような大きさの球場が多いので、バッターにとって非常に優位ではないかなと」

 そう語るのは、元メジャーリーガーで解説者の斎藤隆氏だ。

 実際、「ピッチャーズ・パーク」「ヒッターズ・パーク」という表現が使われるように、球場がパフォーマンスに及ぼす影響は無視できない。MLBが運営するデータサイト『ベースボール・サーバント』でパーク・ファクター(2019-2021)という「球場別の得点や本塁打の出やすさを表す指標」を見ると、15位以内に入った球場は以下の内訳だった。

ア・リーグ東地区(レイズ)=2
ア・リーグ中地区=2
ア・リーグ西地区=2
ナ・リーグ東地区=3
ナ・リーグ中地区(パイレーツ)=3
ナ・リーグ西地区(ドジャース)=3

 パーク・ファクターは球場のサイズや形、標高などに影響される。パイレーツの本拠地PNCパークは15位で、左翼=約99.1メートル、中堅=約121.6メートル、右翼=約97.5メートル。両翼と中堅の距離だけを見れば、ZOZOマリンスタジアムやほっともっとフィールド神戸など日本の球場の平均的なサイズと同程度と言える。

 一方、レイズのトロピカーナ・フィールドは28位と、打者にとって難しい球場だ。最下位の29位はアスレチックスの本拠地オークランド・コロシアムだった(※レンジャーズのグローブライフ・フィールドはランキングから除外されている。サイト内に説明はないが、開場が2020年とデータ採取年数を満たさないからと推測される)。

 また、中地区は移動距離のメリットも大きい。パイレーツと同じナ・リーグ中地区のミルウォーキー・ブリュワーズでプレーした際、斎藤氏は"地の利"を感じたという。

「中地区は東と西、どちらへ行くにしろ、だいたい約3、4時間のフライトで済みます。時差的にはどちらも1、2時間の違いなので、全然大したことない。ブリュワーズでプレーした時、そう感じましたね。アトランタ・ブレーブス(ナ・リーグ東地区)やロサンゼルス・ドジャース(ナ・リーグ西地区)でプレーしている時の移動を考えると、恵まれていました」

 筒香はレイズ時代、メキシコ湾岸に位置するタンパを本拠地としていた。同じ東地区といっても、ブルージェイズのトロントには飛行機で約2時間40分かかる。マリナーズが本拠地とする北西のシアトルまでは6時間だ(Googleマップで計算)。パイレーツにやって来て、コンディショニングは明らかに整えやすくなったはずだ。

 実は渡米して以降、「筒香は痩せたのでは?」という指摘も囁かれた。体重を減らしたことが不振の裏側にあるのではないか、と。

 メジャーは10を超える連戦も珍しくなく、さらに試合が決着するまで延長戦は続く。移動距離も日本とは比較にならない。加えてマイナーとなれば、環境的にはもっとタフになる。

 そうした背景が筒香にどんな影響を与えたかは定かでないが、ドジャースとマイナー契約を結んで渡米した斎藤氏が実体験からこう語る。

「マイナーでは一般のお客さんと同じ空港で乗り換え、平気で3、4時間待つこともあります。挙句、エンジンの調子が悪くて飛行機が1時間遅れることも普通にありました。球場に着いたら審判がいなくて、監督が横から『ストライク』『ボール』と言っていることもありましたね。ダブルA(2A)やハイA(1A)だとバスで5、6時間移動して、仮眠して朝から試合をやることもあります」

 一方、メジャーリーグはチャーター機による移動で、時間自体はかかるものの、公共交通機関を使う日本よりはるかに快適という声もある。どちらがラクかは個人差も関わってくるが、斎藤氏は日本との違いについてこう話す。

「メジャーだけで言えば、神経質かどうか、というくらいです。すべてを受け入れられるか、と言うか。たとえば、移動中に大騒ぎしている選手もいるなか、平気で横になってリラックスしたり、音楽を聴いたりできるか。そういう神経の図太さを持ちながら、グラウンドでは異常なほど繊細さを求められる世界です。そのとんでもないギャップは、日本の比ではないですね」

 アメリカやアジア、中南米から選手がやって来て、各地を転戦しながら試合を繰り返す。最高峰の相手との対戦が続き、メンタル的なタフさを求められ、オンとオフの切り替えが必要になる。

 とりわけ筒香が所属したレイズとドジャースは、どちらも地区で1位、2位を競っている球団だ。レイズはデータ活用を元にした守備シフトやブルペンデーなど、野球の"合理化"が最も進んでいるチーム。一方、ドジャースは球界最高峰の資金力をバックに大物選手を揃えている。

 対して、ナ・リーグ中地区で首位ブリュワーズに35ゲーム差をつけられるパイレーツは、対照的なカラーだ。それが現在の筒香にとってプラスに働いた可能性があると、斎藤氏は見ている。

「パイレーツはお金をかけずに強いチームを作りたい、という方針のチームです。つまり、成長途上の選手が多い。アンドリュー・マカッチェン(現フィラデルフィア・フィリーズ)みたいに長年在籍した名選手もなかにはいますが、例外中の例外です。アスレチックスと似ていて、若くて無名の選手を使って評価を上げてきたら放出して、を繰り返すチームです。

 筒香がこれまで在籍したのは優勝を狙う球団で、周囲は"チームの顔"みたいな選手たちばかりでした。そのなかで"借りてきた猫"みたいな野球を強いられてきたところもあったと思います。でも、今はのびのびとプレーできている。今シーズン最後の最後に、いいチームに行ったのはラッキーでしたね」

 幸運は向こうからやって来たわけではない。レイズをDFA(40人登録枠から外す措置)、ドジャースでマイナー降格という憂き目に遭い、日本球界復帰を促す声も上がるなか、アメリカでプレーしたいと初志貫徹した。だからこそ、再び日の当たる場所に立つことができた。

 そうした本人の意志に加え、アメリカの豊潤な野球文化も選手が光り輝く土壌にある。斎藤氏自身、36歳を迎えるシーズンに渡米し、マイナー契約からメジャー昇格を勝ち取り、アメリカで計5球団を渡り歩いたからこそ感じることがある。

「それだけ野球をやる環境があるのが素敵ですよね。30チームあるということは、どこかに自分に合うチームがあるのではと思います。あの野茂英雄さんが、最後までいろんな球団を渡り歩きました。筒香もそれくらい決意していたということですよね。本気でアメリカに勝負しに行ったことを自ら証明しました」

 自身の腕を試しに海を渡り、マイナーで磨きをかけて最高峰の舞台に舞い戻った。挑戦を続ける者だけが、翌年以降も再び勝負するチャンスを掴むことができる。

 メジャーリーグで日本人野手の成功例が決して多いとは言えないなか、今季終盤戦で筒香が見せている姿には大きな価値がある。

このニュースに関するつぶやき

  • 筒香な真実・・・・不都合な真実はクリントンの副大統領のゴアだっけ?
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  • 日本で中日からロッテにトレードされた加藤のように、移籍先で活躍出来る選手もいるので、まさに需要と供給が上手く合致しないといけないですね。筒香も粘り強く、新天地を求めていたのが良かったと思います。
    • イイネ!6
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