ルカクもレジェンドもCFに決まったスタイルなし。唯一の共通点は「大量に点をとること」

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2021年09月19日 11:11  webスポルティーバ

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サッカー新ポジション論
第6回:センターフォワード

サッカーのポジションや役割は、時代と共に多様化し、変化し、ときに昔のスタイルに戻ったりもする。現代サッカーの各ポジションのプレースタイルや役割を再確認していく連載。今回は「センターフォワード」だ。歴代レジェンドから現代のルカクまで、さまざまな選手のプレースタイルを紹介する。

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<唯一の条件は点をとること>

 背番号9はセンターフォワード(CF)のナンバーだ。「ファルソ・ヌエベ(偽9番)」がすっかり有名になっているが、偽がいるなら本物もいる。

 統計として、ペナルティーエリア内中央付近からのシュートが最も得点になりやすい。当たり前の話のようではあるが、DFのマークが最も厳しい場所で得点するには、それなりの能力が必要だ。誰にでもあるわけではなく、技術や体力だけでも説明がつかない。

 プロのスカウトの話によると、「ストライカーに関しては体の大きさも足の速さも決定的ではなく、ただ実際に得点できるかどうかが判断材料だ」と言っていた。理由ははっきりしていなくても、とにかくたくさん点をとれることが重要だそうだ。

 現在、CFらしいCFと言えば、ロメル・ルカク(ベルギー)が筆頭だろう。

 今季はインテルからチェルシーに移籍して早くも大活躍中。190cm、94kgの体格からして威圧感がハンパない。プレミアリーグのフィジカル自慢のセンターバックが当たりにいっても、てんで歯がたたない。

 それでいて速い。名前が売れ始めたころは技術的にまだ粗いところもあり、現在のように完成されたFWではなかったが、足の速さは強烈だった。短い距離よりも長い距離を走る時に顕著で、ロングカウンターをさせたら無敵。途中でDFが体を当てても、かえって弾き飛ばされてしまう。大きなストライドでぐんぐん加速していった。

 現在のルカクは万能のCFだ。ポストプレー、ヘディング、コンビネーション、ドリブル突破と何でもござれ。

 新シーズン、マンチェスター・ユナイテッドに移籍してきたクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)は、ルカクとは全くタイプは違うが、得点力の高さは折り紙つきである。もともとはウイングだったが、レアル・マドリード時代の終盤からはゴール前を主戦場としていて、ユベントスではCFになっている。

 今でもときおり切れ味鋭いフェイントを見せるが、それよりも鍛え抜いた肉体によるシャープな動き、得点の仕方を知り抜いたポジショニング、正確なシュート、圧巻のジャンプからのヘディングが武器になっている。

 ただ、ルカクやC・ロナウドのほかにもさまざまな点とり屋がいて、CFにこうでなければいけないというルールはない。とにかく点をとれればいいというのが、おそらく唯一のルールである。

<重戦車型と万能型>

 20世紀初頭のイングランドの大スター"ディキシー"・ディーンは、ヘディングの強さで有名だった。1927−28シーズンには、エバートンでシーズン60ゴールという途方もない記録を打ち立てている。

 クロスボールをヘディングシュートというルートは、昔も今も有効だ。至近距離からのダイレクトシュートはGKにとって防ぎにくく、サイドからのボールはDFがボールウォッチャーになりやすい。ズラタン・イブラヒモビッチ(スウェーデン)やエディン・ジェコ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)といった空中戦の王者は、現在も重要な得点源になっている。

 英国にはディーンのような頑健で勇猛なCFが多かったが、他国のCFはそういうタイプばかりではなかった。

 通算得点1329点のアルトゥール・フリーデンライヒは、「虎」と呼ばれたブラジル人だ。通算得点には諸説あって、史上最多はペレという説もあるが、CFとしての最多得点者なのは間違いなさそう。1919年のコパ・アメリカ優勝で国民的ヒーローとなり、"ジョガ・ボニート(美しくプレーしよう)"の先駆とも言えるテクニシャンだったそうだ。

 オーバーヘッドシュートで有名になった、レオニダス・ダ・シルバもブラジル人。1938年フランスW杯の得点王で、「黒いダイヤモンド」のニックネームがあった。この銘柄(ジアマンテ・ネグロ)のチョコレートが爆発的に売れたという。

 フリーデンライヒ、レオニダス、あるいはアルゼンチンリーグ最多得点者のアルセニオ・エリコ(パラグアイ)といった南米のストライカーは、高さもあったが敏捷で足技に優れていたようだ。イタリアのセリエA得点記録保持者、シルヴィオ・ピオラも弱点のない万能型だったという。

<サッカー史上、双璧のゴールゲッター>

 1950年代あたりまでは映像がほとんどないので、紹介した伝説的ストライカーは当時の記事や誰かの回想、あるいは得点記録そのものから、「何だかすごそうだ」と言うしかないわけだが、1950年代以降はある程度映像も残っている。

 圧巻なのは1960年代に活躍したエウゼビオ(ポルトガル)だ。ポジション的には4トップの10番なので、CFというよりセカンドトップなのだが、とにかくシュートが強烈だった。

 キック力だけでなく走力も技術もすばらしく、近年で似た選手を探せばジョージ・ウェア(リベリア)とディディエ・ドログバ(コートジボワール)だろうか。相手の酷いファウルにも全く動じず、堂々としていて風格もあった。

 とにかく点を取とりまくったということでは、1960年代後半〜70年代に活躍し、「爆撃機」と呼ばれたゲルト・ミュラー(西ドイツ/当時)が図抜けている。

 ミュラーはどちらかと言えば小柄な部類で、体型もずんぐりしていた。プロになった当初は「太りすぎだ」と言われてダイエットに励んだ時期もあったそうだ。華麗なテクニシャンではないが、ボールを止める技術と角度をつけてゴールの隅に蹴る能力は非常に高かった。

 引退してずいぶん経ってからだが、来日して日本の子どもたちを指導したことがあり、その時に取材した。日本の子どもたちの印象を聞くと、

「ドリブルばかりでパスができない。止めるのと蹴るのは下手だ」

 と、かなり辛辣な答えが返ってきたのを覚えている。

 ミュラーは凝ったフェイントなどやらず、せいぜい切り返しぐらい。ドリブル自体あまりしなかった。しかし、ごく短い距離の動きが異常に速く、しかもピタリと止まれる。その時のボールコントロールはうまかった。

 ラストパスやこぼれ球への予測が的確で、反応がとびきり速いのでチャンスを拾える。そしてチャンスをつかんだら、ゴールの隅にボールを転がして入れる。ゴールがどこにあるかを見なくても正確に把握する能力が抜群だった。これはCFにとって重要な能力だ。

 ミュラーの10年ほどあとに出てきたロマーリオ(ブラジル)も敏捷性とシュート技術でよく似たタイプだった。ブラジル人だけあってミュラーよりも技巧的だが、真骨頂はボックス内でのスピードとコントロールシュート。体格に頼らず得点を大量生産した2人は、サッカー史上で双璧のゴールゲッターだろう。

<エレガントなファン・バステンと爆速ロナウド>

 オランダ代表とミランで活躍したマルコ・ファン・バステンは万能型。長身だがあまりパワーはなくて、技術で点をとるタイプだ。1988年ヨーロッパ選手権決勝のボレーシュートが有名なように、シュートの正確性と洗練されたボールコントロールで、エレガントなCFだった。

"フェノメノ"と呼ばれたブラジル人のロナウドは、スピードスターだ。フィールドの半分をドリブルでぶっちぎって次々にゴールを決めた。現在のキリアン・エムバペ(フランス)に似ている。ただ、最高のロナウドはインテルで重傷を負うまでで、その後も得点は量産していたが走る距離はかつての半分ぐらいになっていた。

 このロナウドを抑えてワールドカップ通算最多16ゴールを決めたミロスラフ・クローゼ(ドイツ)も万能型の部類だろう。ただ、空中戦もドリブルシュートも、特段にすごい印象はない。それでもいつのまにかゴールしていた。

 ポルトガルのペドロ・パウレタもC・ロナウドに抜かれるまで代表最多得点記録を持っていたが、こちらも何がすごいというストライカーではなかった。よくわからないが得点はやたらとれるという点で、典型的なストライカーと言えるかもしれない。

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