長友佑都の野心の原点となる11年前の言葉。FC東京復帰でチームは激変した

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2021年09月20日 07:01  webスポルティーバ

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 2010年5月、東京・小平。南アフリカワールドカップに向け、筆者は長友佑都にインタビューを行なっている。

「自分のベースにあるのは、反骨心や向上心なんだと思います。それがなければ、長友佑都という選手は存在しない」

 当時、FC東京の中心選手だった長友はそう言いきった。彼の言葉は、ヨーロッパに渡ってから、生き方で実証されている。野心旺盛かつ精力的な戦いで、チャンピオンズリーグやワールドカップなど世界サッカーの最前線を駆け巡ったのだ。

「世界の一流選手と戦うことを思い浮かべると、心の底から湧き上がる興奮を感じます。やるからには楽しまないともったいない。自分は今まで支えてくれた人たちのために頑張るし、その気持ちがエネルギーになるんですよ」

 彼は言葉の端々に熱を滲ませた。それは溢れかえるほどの熱量だったのだろう。反骨心には暗さはなく、向上心には明るさが満ちていた。

 その原点に、長友は11年ぶりに戻ってきた――。




 2021年9月18日、東京・味の素スタジアム。台風14号の影響で大雨に見舞われた横浜FC戦で、長友はFC東京の選手としてJリーグ復帰の舞台に立っている。背番号50は、大好きな番号という5と原点のゼロから始まるという意味を込めた番号だ。

 試合開始直前、左サイドバックに入った長友は両手を天高く上げ、顔に大粒の雨を浴びている。空からのエネルギーを受け、祈るような格好になった。どこか芝居じみた仕草も、快活に世界のサッカー界で実績を残してきた男がやるとさまになっていた。パンツを誰よりもたくし上げ、逆サイドまで聞こえるように声を張り上げ、味方を鼓舞し、好プレーに惜しみなく拍手し、逐次、指示も与えていた。

 長友の存在は味方の戦闘力を高め、プレーに集中させていた。直近の代表戦で足を痛め、チーム練習に合流したのはわずか3日間だったが、世界で戦ってきた男が与える緊張感か。チームはまるで別の顔をしていた。

「チーム全体に、長友の存在が伝染していて不思議です」

 FC東京の指揮官である長谷川健太監督は言う。

「ひとりの熱を持った選手のおかげで、ここまで変わるものなんだなと。チームとして根本のところで熱い気持ちが足りず、安定して力を出しきれていなかったところ、彼がトリガー(引き金)になってくれました。戦う気持ちで周りを奮い立たせ、劣勢も跳ね返すというか......。太陽のような選手がひとり入って、大きく変わりました」

 FC東京は横浜FCを圧倒した。守備は堅牢で、攻撃は電光石火。ボール支配率そのものは下回ったが、攻守の切り替えの強度で違いを見せた。何度となく敵陣でボールを奪い、ゴールに迫って、一度失敗しても、再び奪い返し、波状攻撃を敢行。ディエゴ・オリヴェイラの先制点は、彼自身の芸術にまで高められた技によるものだったが、そこまで押し込めたのはチーム力の差だった。その後もショートカウンターや連続攻撃で加点し、4−0と完勝した。

 長友自身はその勝利の中で、終始、堅実なプレーを選択していた。堅守カウンター型のチームで、左サイドの持ち場を明け渡さなかった。献身的に中に絞り、ラインをコントロールし、自らもサイドの選手を後方支援。周りを促し、滑らかなプレーを促すような環境を作っていた。もっとも、対面したブラジル人選手には、1対1で何ひとつやらせていない。

「11年ぶりに青赤のユニフォームでプレーしたんですが、嬉しかったし、痺れました。当時の野心溢れる自分を思い出して。若かった自分に負けたくないと思いましたね」

 長友は復帰戦を、そう振り返っている。

「まずはチームの士気を高め、熱量を上げる、というところを伝えて練習に入りました。前節の試合を見て、まだ自信なさそうにプレーしている姿が目についたので。試合中も90分間、ずっと声をかけていました。"セカンドボール"、"ラインコントロール"、"コンパクトに"だったり、細かい指示だけでなくて、みんなの気持ちを鼓舞し、集中させ、モチベーションが上がるように」

 背番号50の存在は、これからじわじわとチームに浸透するだろう。チームは競争力と結束力を同時に手に入れたようなもので、何人かの選手は飛躍的成長を遂げるかもしれない。それはいつか、「長友効果」と呼ばれるのだろう。

 原点をエネルギーに飛躍を遂げた選手が、古巣に戻ってその経験を行き渡らせる。これほど健全なサイクルはない。何より戻ってきた選手本人が、今も誰よりも強烈な野心を持っているのだ。

 11年前、長友はこうも言っていた。

「『ワールドカップが最終目標』なんてダメだと思う。『通過点』くらいの気持ちでいないと、これからの長いサッカー人生、勝負していけない」

 新たな冒険譚の始まりだ。

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