「混沌とした時代になぜ舞うのか」室町時代のスーパースター“世阿弥”の少年時代をエネルギッシュに描く“ダンシング” マンガ

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2021年09月20日 20:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真『ワールド イズ ダンシング』(三原和人/講談社)
『ワールド イズ ダンシング』(三原和人/講談社)

 突然だが、あなたは、今もなお演じ継がれている「能」という演劇を大成した大スター“世阿弥”のことを知っているだろうか? 世阿弥は、南北朝が分裂した混沌とした時代から室町時代初頭、室町幕府3代将軍の足利義満の寵愛を受け、父の観阿弥と共に、身分の高い人から庶民まで、多くの人々を魅了した猿楽師だ。能は、江戸時代までは「猿楽」と呼ばれており、観阿弥の率いる「猿楽」を演じる“観世座”も、地方へ巡業し、名を売る機会を狙っていた時代があった。

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『はじめアルゴリズム』で数学の奥深さを描き、その名を轟かせた三原和人先生の新作『ワールド イズ ダンシング』(講談社)は、伝説の猿楽師で、のちに世阿弥と呼ばれる少年・鬼夜叉の少年時代を躍動的に描いたマンガである。監修は、『室町は今日もハードボイルド』などの著書がある、歴史学者の清水克行氏がつとめている。

 物語は、花のように美しい少年・鬼夜叉が、父が率いる人気上昇中の一座・観世座に所属しながら修行しているものの、「人がなぜ舞うのか」がわからず、その理由をぼんやりと考えているシーンから幕を開ける。芸を司る家のものに生まれ、芸がすべての父のもとで、物心のついた時にはすでに舞っていた鬼夜叉。だが、明日をも知れぬ混沌とした時代に、あえて人が舞わねばならない道理が気になって仕方がなかった。

 そんなある日、鬼夜叉は、狭くて暗い家の中で、貧相な身なりのまま白拍子を舞う女に出会う。枯れた声にやけくそに歌っているようにも聞こえる歌、ふらついた舞にもかかわらず、彼女の芸に未だかつてない「よさ」を強烈に感じた鬼夜叉。人として生きるため、身体ひとつで舞うしか道がなかった…女の誰よりも深い絶望が生んだ舞に圧倒され、「やるせない気持ちを抱えるしかない時、人は身体を使って舞う」ことを鬼夜叉は12歳にして学んだのだった。

 その頃、父の観阿弥のもとには、将軍がご台臨なさる、京都の東山・新熊野神社での演舞の打診が届く。猿楽が初めて貴人の前で奉仕を務める、勧世座一世一代の大舞台だ。そこで鬼夜叉は、父からとんでもなく重要な配役を任されるのだが――!?

 自ら「舞いたい」という熱烈な気持ちが高まった鬼夜叉の運命は、次第に加速していく。1巻で描かれる世阿弥の人生は、まだほんの序章だ。しかし、さまざまな人々との鮮烈な出会いを経て、幾度もの思索を繰り返し、「舞う」ことの意味を、自らの身体を通じて理解していく鬼夜叉の姿は、弾けるようなエネルギーに満ちあふれていた。また、今日に伝わるさまざまな文化の基礎が生まれた室町時代のバイタリティあふれる空気感もマンガからにじみ出ており、猿楽や田楽など、多くの芸能が、不安定な社会に生きる人々の心に響いたであろうことが想像できた。

 物語終盤では、読者が出番を今か今かと待ち望んだあの将軍も姿を見せる。室町時代のスーパースター・世阿弥の人生と、狂おしいまでに熱き思いが込められた華麗な「舞」から目が離せないマンガである。

文=さゆ

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  • ヤングジャンプのダンス漫画はウルトラジャンプに島流しにされてたな
    • イイネ!2
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