「野球部未所属」選手の指名も…ドラフトの“隠し玉”獲得は成功しているのか

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2021年09月21日 18:00  AERA dot.

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写真元阪神の黒田祐輔(OP写真通信社)
元阪神の黒田祐輔(OP写真通信社)
 あと約3週間に迫ったプロ野球のドラフト会議。高校生と大学生にはプロ志望届の提出が義務付けられるようになり、本当の意味での“隠し玉”という選手は出づらくなっているが、それでも毎年のように驚きの指名があることもまた事実である。そこで今回はそんなサプライズ指名でプロ入りした選手は果たして戦力となっているのか、近年の事例をピックアップしながら検証してみたいと思う。


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 2004年のドラフトで大きな話題となったのが阪神から8巡目で指名された辻本賢人だ。中学からアメリカに渡り、日本の高校野球を経験しないまま15歳でプロ入りすることとなったが、これはドラフト会議史上最年少記録である。しかしプロ入り後は故障もあって5年間の在籍で二軍でも1勝もあげられずに退団。2010年からはアメリカに渡り、1年間独立リーグでプレーした後、メッツとマイナー契約を結んだが、肘の故障もあってメジャー昇格を果たすことなく2013年にユニフォームを脱いでいる。


 阪神では2007年大学生・社会人ドラフト4巡目の黒田祐輔もサプライズ指名だった。静岡高校時代は大型右腕として県内では評判の投手で、卒業後は強豪の駒沢大に進学。しかし2年の冬に大学を中退し、地元に戻ってシャンソン化粧品で働きながら高校生とともに練習しているという状況だった。ちなみにドラフトでは名前を呼ばれるときに所属チームもアナウンスされるが、黒田の所属していたシャンソン化粧品は野球部があるわけではなく、あくまで当時働いていた企業ということである。黒田もプロ入り後は故障に苦しみ、投手として3年間プレーした後、野手に転向。このタイミングで育成選手としての契約となったが、野手としても結果を残すことができず、2013年限りで引退している。


 更なる変わり種として世間を驚かせたのが2011年に日本ハムから7位指名された大嶋匠だ。新島学園、早稲田大ではいずれもソフトボール部でプレーしながらも、その打撃が関係者の目に留まって日本ハムの入団テストを受験。見事に合格を勝ち取って見せたのだ。ドラフト会議前から報道されていたこともあって、当日はある意味予定通りという空気だったが、それでも所属チームの「早稲田大学ソフトボール部」という響きは新鮮なものがあった。プロ入り後は1年目の紅白戦でいきなりホームランを放つなど非凡なところを見せたが、なかなか結果を残すことはできずに二軍暮らしが続いた。5年目の2016年に開幕一軍入りを果たし、12試合の出場で3安打を放ったのが一軍で記録したヒットの全てである。2018年オフに現役を引退。その後は地元群馬の高崎市役所に就職し、ソフトボールに復帰してプレーを続けている。



 大嶋と同様にドラフト会議直前にその存在が明らかとなって話題となったのが2016年に巨人が7位で指名した廖任磊だ。台湾から日本の岡山共生高校へ留学して3年間プレーし、卒業後は台湾に帰国して開南大へ進学。大学在籍中に台湾のアマチュア代表としてアジアウインターリーグにも出場している。日本の高校で3年間プレーしていたことから、外国人選手扱いではなくドラフト対象となり、巨人が指名したという恰好だ。巨人ではわずか2年で自由契約となったが、合同トライアウトを経て西武に入団。2019年には一軍初登板を果たしている。しかしここでも目立った結果を残せずに1年で退団し、2020年以降は台湾に帰国。今年から台湾プロ野球(CPBL)の味全ドラゴンズでプレーしている。


 ここまでは変わった経歴の選手を取り上げたが、1位指名でもサプライズが起こることが稀にある。近年では2017年の吉住晴斗(ソフトバンク1位)がそれにあたるだろう。この年は清宮幸太郎(早稲田実→日本ハム)に7球団の指名が集中。ソフトバンクも清宮に入札したがその抽選を外すと、続けて指名した安田尚憲(履正社→ロッテ)、馬場皐輔(仙台大→阪神)でも当たりくじを引くことができず、12球団で唯一4度目の1位指名となり、そこで選ばれたのが吉住だった。


 鶴岡東では2年夏に甲子園に出場しており、東北ではそれなりに名前の知られた存在ではあったが、本人も育成で指名があるかもしれないと思っていたと話しているように、上位候補という位置づけではなかった。そんな吉住だったが、プロ入り後は層の厚い投手陣の中で三軍でのプレーが続き、昨年オフには支配下選手としての契約解除を言い渡される。直後は引退をほのめかす発言もあったものの、それを見たダルビッシュ有(パドレス)が親交のある石川柊太を通じて連絡をとり現役続行を決意。今年からは育成選手として再スタートを切っている。



 このようにまとめてみると、いわゆるサプライズという形で指名された選手はプロ入り後に苦戦していることがよく分かる。プロ入りすることよりも、プロで成功することの難しさを感じた選手も多いのではないだろうか。しかし過去には田畑一也(元ダイエー、ヤクルトなど)のように家業を手伝いながら入団テストを受けて、一軍で大活躍した例も確かに存在している。またロッテで現在代走の切り札として活躍している和田康士朗も高校では野球部に所属せず、BCリーグを経てプロ入りした変わり種である。また彼らのように、驚くような経歴からプロで成功をおさめる選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)


●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員


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  • 隠し玉って他球団のスカウトにほぼほぼ評価されてないからそんな扱いになるんであって評価されてたら隠し玉にはならんと思うねんな。 https://mixi.at/aeRTrds
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