緊急事態宣言延長に「ラッキー」店の解体費、新店舗開店資金…“協力金バブル”の実情

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2021年09月21日 22:00  週刊女性PRIME

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写真今や見慣れた緊急事態宣言発令により「臨時休業」を伝える張り紙
今や見慣れた緊急事態宣言発令により「臨時休業」を伝える張り紙

「10席の小さなバーですから、正直なところ協力金をもらい続けた方が儲かります。コロナが収束してほしいと願う一方で、緊急事態宣言が“延長”と聞くとラッキーと思ってしまう自分がいる」

 と、語るのは都内にある飲食店の経営者。長引くコロナ禍で、営業時間の短縮に応じる飲食店に協力金が支払われるようになったのは、昨年4月の緊急事態宣言のときのこと。以降、国や自治体は、協力する飲食店に対して『感染拡大防止協力金』を支給し続け、冒頭のように話す飲食店も出現。“協力金バブル”なる言葉まで生まれてしまった。

 今年1月に再び緊急事態宣言が発令された際は、1店舗あたり一律6万円/日に引き上げられた。そのときから協力金を申請した、都心でガールズバーを経営していたA氏は次のように話す。

「僕の店は、20坪で賃料が50万円ちょっとでした。最後にお店を開けたのは去年のクリスマス。今年に入ってからは1日も開けずに、7月いっぱいで店を閉めました。コロナ前は毎日営業でオープンは20時だったので、協力金は満額を請求でき、ありがたくいただきました。

 ここだけの話、通常営業より店を閉めて協力金をもらっていたほうが利益はありましたね。今はもらった協力金を元に、神奈川に一軒、新しく店をオープンしました。賃料は、閉めた店の1/2ちょっとくらい。協力金は、お店を出す資金に充てました

 現在、協力金は「事業規模」や「前年又は前々年の1日当たりの売上高」などによって支給額に差異があり、一律ではなくなった(さらに地域によって支給額も異なる)。

飲食店を敵視する消費者

 しかし、年が明けて以降、東京に関して言えば、9月30日時点で緊急事態宣言ではなかった日は、全日数の約25%しかなく、申請した飲食店には給付金が支給され続けている。

 宣言下ではない『まん延防止等重点措置』期間においても同様の措置であったため、いよいよ飲食店を敵視する消費者まで現れる始末だ。

 週刊女性PRIMEが、首都圏の飲食店経営者・自営業者約150人を対象に緊急アンケートを実施したところ、協力金を加算しても、コロナ前よりも収入が落ちた店は88%、上がった店は12%という結果だった。

 あくまで週刊女性アンケート上ではあるものの、全体の1割ほどしか“協力金バブル”の恩恵を受けていないことになる。ところが、飲食店憎しの声は少なくなく、協力金によって飲食店と消費者の間に壁ができている感は否めない。

“飲食店だけ”という措置を取ったことが、結果的にネガティブなイメージを作り出してしまった。また、店舗や業態によっては、協力金だけでは足りません。その結果、通常営業という判断にいたる店があらわれ、そこに客が殺到し、感染防止の意味をなさなくなってしまった。『感染拡大防止協力金』は良策とは言い難い

 そう語るのは、食のあり方から飲食店の課題まで幅広く取材を重ねるフードジャーナリストの東龍さん。飲食店だけに限定するのではなく、幅広い範囲で行動制限をかけ、それにともなう保障をきちんと差配していれば、飲食店だけがやり玉にあがることはなかったと続ける。

「飲食業界を見渡したとき、飲食店だけが優遇されていることも問題でしょう。生産者はもちろん、酒造メーカーや卸業者、仲卸業者などサプライチェーンへの保障も手厚くするべきでした」(東龍さん、以下同)

 飲食店が休業すると、生産先や仕入れ先が在庫を抱え込むことになる。食材だけではない。飲食店でアルバイトをする従業員や、おしぼり業者なども苦境に立たされることになり、飲食業界の中で温度差が生まれてしまった。

何のために飲食店を開いたのか

 そういった軋轢を生まないためにも、飲食店の中にはデリバリーやテイクアウトという形で食を提供しようと努力するお店もある。しかし、都内在住の30代女性はこう漏らす。

「応援したい気持ちもあるから買ってはいますけど、飲食店の役割って違くない? って思います。仕事で疲れてリラックスしたいとか、できたての料理を食べたいとか、何気ない会話を楽しみたいから、わざわざ割高のお金を払ってお店に足を運んでいるんですよ。

 何かしら営業努力しているお店はまだいいけど、ずっと休業しているお店って、何のために飲食店を開いたんだろうって思います。そういうお店には行きたくないので、“うちはコロナ禍でも営業努力してました”とかわかるものがあったらいいのに(笑)」

 こういった拒否反応を示す人は少なくなく、東龍さんも「お店を応援したい人と、冷めてしまう人の二極化が見られる」と危惧する。

「星付きの飲食店などが閉店するケースもあります。協力金が十分ではないことも原因のひとつですが、お弁当を作るためにお店を開いたわけではない、お客様とのコミュニケーションを楽しむことができないといったモチベーションの低下もあるようです」

 実際問題として、飲食店が疲弊していることは間違いない。今年9月に帝国データバンクが発表した『新型コロナウイルス関連倒産』(法人および個人事業主)によれば、全2000件のうち336件と飲食店が業種別で最多。うち居酒屋が91件、バー、ナイトクラブが18件と酒類提供をメインとする業態が飲食店全体の3分の1(32.4%)を占めている。住宅街にあるようなバーやスナックは協力金で潤っているかもしれないが、繁華街の居酒屋やバーは青息吐息なのだ。

支給の遅延も飲食業界を苦しめている大きな要因」と東龍さんが説明するように、協力金の支給にも瑕疵がある。

 先の週刊女性PRIMEが実施したアンケートでも、「協力金が支払われているのは何月分まで?」という問いに対し、「5月まで」と答える人もいれば、「8月まで」というようにバラバラだ。しかも、支払われた協力金の金額(総計)に関しては、100万円から1000万円越えと大きな差異がある。公平さに欠ける施策と言わざるを得ないだろう。前出のA氏のように、協力金を元手に新たな事業を画策する経営者までいるとなれば、現状は“給付金狂騒曲”といえる。

お酒や飲食はネガティブなものに

 協力金とは一体何なのか……。何に協力しているんだとツッコミたくなる。また、ある工務店は「店舗解体が増えている」と教える。

「解体は木材、鉄骨、コンクリート、内装物のあるなしなどで費用が変わります。今は産業廃棄物処理料が高く、一坪3〜8万円くらいが相場になっている。10坪のお店を解体するにしても100万円ほどかかることが珍しくありません。そのため、協力金を解体費用にあてる人もいるみたいですね」

 街中を歩いていると、「え? ここ閉まるの!? 年季の入ったよいお店だったのに……」などと驚くことが少なくない。モチベーションの低下や、降って湧いたような協力金という名の退職金。こういった事情に鑑みれば、お店を閉めてしまう人がいても不思議ではないだろう。

 飲食店は、「我慢してください」一辺倒の政府や自治体を信用しなくなり、ユーザーは飲食店に対して信用を失いつつある。『感染拡大防止協力金』がもたらした“分断”を政府は予測できなかったのだろうか? 前出の東龍さんは語る。

「お酒に対するネガティブなイメージがついてしまったようにも思います。SNSなどは顕著ですが、お酒の写真をあげることや、飲食を楽しんでいる写真をあげることをためらう人が増えている。アップしようものなら何を言われるかわかりません(苦笑)。外食やお酒の印象が悪くなると、飲食業界全体にとって痛手となります。単にお金を配るだけではなく、飲食に従事する方、飲食を楽しむ方の心情をきちんと考えた施策が必要だと思います」

 本来、外食は楽しいものだったはず。どうしてこうなった……。

東龍 とうりゅう グルメジャーナリスト。1976年台湾生まれ。 テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。 ブッフェ、フレンチ、鉄板焼、ホテルグルメ、スイーツをこよなく愛する。 炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。

取材・文/我妻アズ子

このニュースに関するつぶやき

  • 協力金目当ての幽霊店になるのでは?(..) 緊急事態以外で店開けてないなら詐欺の可能性でてくるが。
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