姜尚中「民への愛が欠落した菅政権 自宅療養問題を解消しないまま行動制限の緩和へ」

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2021年09月22日 07:00  AERA dot.

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写真姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。


*  *  *


 菅義偉政権を一言でいうと、「安倍氏なき安倍危機管理内閣」でした。安倍政権の唯一目ぼしい「レガシー」だった東京五輪の強行。それが菅氏の最大の課題だったのです。逆に言えば、政権与党の体質や権力構造は、ほぼ変わっていないということになります。


 このことはコロナ対策についても言えます。安倍政権時代の「愛国」を掲げながらも「愛民」の欠落した、国民に分断を持ち込むような政策が継承されてきました。さらには最後の実績作りとばかりに、行動制限の緩和へと突き進もうとしています。10万人以上の自宅療養という名の医療放棄。その抜本的な解消も道半ばに。


 経済を回すことにも、感染抑止を徹底することにも、結局は及び腰。経済も抑止も「あれもこれも」と楽観的な見通しの果てに、「あれかこれか」もうまくいかず中途半端でした。自民党政権にとって最も強い支持基盤から、「経済を早く回せ」という突き上げも大きいのでしょう。11月以降、「ウィズコロナ」という形で、政治的に「トリアージ(救うべき生命の優先順位をつけること)」を断行し、経済を回すことへと大きく舵(かじ)を切ろうとしています。


 経済を回すためにも、誰もが気軽に検査や診察を受け、療養や治療、入院に至るまでシームレスに進む、安心・安全のシステムの構築が不可欠です。そのメドが立たないまま行動制限を緩和しても、冷え込んだ消費を刺激することはできません。


 専門家の見解を参考にするとはいえ、政治的な判断によるトリアージに踏み込むことは、コロナで亡くなる人が何万人くらいであれば、日本の社会は耐性が持ちうるのか、ということを政府が決めることになります。間接的には、政治が「積極的に生かす権力」と、「見捨てる権力」を行使することを意味するのです。


 一人として自宅療養で命を失うような悲劇をなくしたい。そのために、こんな施策を断行する。そうした決意を披瀝(ひれき)する場が国権の最高機関としての国会のはずです。それを事実上「閉店」にしたまま、コップの中の嵐のような党の総裁選で盛り上がるメディアの異常さは、何と言ったらいいのでしょうか。


姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍

※AERA 2021年9月27日号



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このニュースに関するつぶやき

  • 自宅で酸素吸入している状態を軽症っていうこと自体、言語感覚に問題があるのではないか。
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  • とっとと国へ帰れよ、キチガイ朝鮮ヒトモドキ
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