高市早苗に「プリテンダー」の声 女性の悔しさ知るはずなのに「この道しかない」のか

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2021年09月22日 11:00  AERA dot.

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写真9月17日に告示され、29日に投開票が行われる自民党総裁選への出馬会見を行った/9月8日午後、国会内で (c)朝日新聞社
9月17日に告示され、29日に投開票が行われる自民党総裁選への出馬会見を行った/9月8日午後、国会内で (c)朝日新聞社
 高市早苗という政治家の原点は、自分に真っすぐな「シスターフッドの人」ではなかったか。「わきまえて」見える彼女のいまをつくったものは何か。AERA 2021年9月27日号から。


【高市氏が初当選した時の写真はこちら】
*  *  *


 高市早苗前総務相が自民党総裁選への立候補を正式に表明した9月8日夜、テレビ各局の報道番組をはしごした。


「日本経済強靱化計画、いわゆるサナエノミクスの3本の矢は」


 そう力強く語る高市さんの声を、何度も聞いた。「金融緩和、緊急時の機動的な財政出動、大胆な危機管理投資、成長投資」と続くのだが、それよりも気にかかったことが二つあった。


 その1 自分で名付けておいて、「いわゆる」って言う?


 その2 「アベノミクス」の継承・発展なら「タカイチノミクス」じゃない?


 1からは権力者特有の図々しさを、2からはそのくせ「女子アピール」をする残念さを感じた。そしてこう思う。あーあ、結局、高市さんかー。


 高市さんは2006年、第1次安倍内閣で内閣府特命担当大臣として初入閣した。以来、彼女の言動はずっと安倍さんへの「ですよねー」だったと思う。選択的夫婦別姓→反対、皇統→男系男子、靖国神社→参拝。「信念だ」と言うだろうが、指さし確認で従っている感じ。で、その甲斐あっての立候補。菅首相が引っ込んだ途端、彼女への支持を表明する安倍さんに、どんよりする。


■シスターフッドの人


 高市さんは1961年3月生まれで、私は1月生まれだ。同学年だけに自分の会社員人生が重なる。わきまえることが大切と教えてくれたのは森喜朗元首相だった。はい、よくわかりました。それが高市さん。


 自分の話をもう少し続けると、30歳で結婚した。「そのうち別姓が選べるさ」と軽い気持ちで婚姻届を出さずにいたら、還暦を迎えてしまった。もし高市総裁なら、事実婚のまま古希か。もっと深刻なのは、日本中の若い女性が「わきまえないとダメだ」と思うことだ。いかーん。


 そんなある日、作家で経営者の北原みのりさんと元衆院議員でジャーナリストの井戸まさえさんがクラブハウスで高市さんについて語り合っているのを発見、即、聞いてみた。高市批判が飛び交うことを期待したのだが、違った。2人は、彼女がまだ政治評論家だった92年に出した『30歳のバースディ』という本の話で盛り上がっていた。




 厳しい母から逃れたくて早稲田にも慶応にも受かったのに、弟が私立中学に受かったからと断念させられ、奈良から神戸大学に往復6時間かけて通学した。ロックバンドでドラムを叩き、オートバイを操った。松下政経塾から突如、米国大統領選初の女性候補と目された民主党のパトリシア・シュローダー下院議員のインターンになった。合間合間に必ず挟まる、赤裸々な恋愛話……。そんな内容を語る調子に、彼女への共感がにじむ。2人が何度も引用していたのが、最後の一節だった。


「頑張っている同性の皆さん、一度っきりの人生だもの、自分に気持ちいいように生きようネ! GOOD LUCK、GIRL FRIENDS!」。高市さんはシスターフッドの人で、今の彼女はプリテンダーではないか。2人の一致した意見だった。


■女性は「お察しします」


 なるほどプリテンド(装う)か。シスターフッドは隠し、「安倍好み」のふりをし、総裁選へ。作戦としてはわかる。が、それでいいのかと割り切れない。2人に話を聞くことにした。


 北原さんは高市さんを悪く語る人(とりわけリベラル系の男性)に、「女性嫌悪」を感じたという。極端な右寄りで問題ありの人だが、それにしてもひどい、と。そこで本を読み、原点を知り、驚いたという。


「安倍さんにすり寄って、実力以上に評価されている人というイメージだけど、これだけ2世、3世の多い政治の世界で、サラリーマン家庭出身の女性があそこまでの地位をつかんだ。そのためには野田聖子さんや小渕優子さんがしなくてもいいことを、たくさんしたと思う」


 確かに、今回の総裁選へ立候補を表明している岸田文雄さんも河野太郎さんも、立候補を断念した石破茂さんも、みんな政治家の家に生まれている。


「高市さんは税金や軍事など、女が苦手とされるところに政治家としての自我を求めた。女だからと舐められないための戦略でもあり、舐められないために『女の味方ではない』と肩ひじを張った。それで保守の王道を歩みたいという思いはわかるけど、それにしてもあっちに寄りすぎちゃったよね、と思う」。そう言って、こう続けた。


「でも、そうなったのには訳がある。お察しします、と思います。女性だったらみんな、お察ししますなんじゃないかな」


 井戸さんは元衆院議員。次期衆院選に立憲民主党から立候補する。政策は相容れないが、「高市さんは人として、信用できる」と言う。井戸さんは松下政経塾出身で、高市さんの後輩。卒塾式での体験があるからだ。




■彼女だから候補に


 研修担当者が塾生の思い出を語るのだが、そこで井戸さんはいきなり「香水がきつかった」と言われた。激しく傷つき何も言えずにいたら、「そんなこと、ここで言うことじゃない」と抗議してくれたのが高市さんだった。


 それから10年以上経ち、井戸さんは自分の経験から「民法772条による無戸籍児家族の会」代表として活動していた。06年、高市さんが入閣、少子化担当でもあったので、民法改正を訴える手紙を送った。他にも法務相、総務相(菅義偉さんだった)らにも送ったが、返事があったのは高市さんだけだった。雛型にあてはめたものでなく、きちんと内容に則していて、手書きの署名が添えられていた。誠実に働き、きちんと事務所を運営している政治家だと思った。


「彼女を今の高市早苗にしたのは有権者であり自民党。彼女はそのルールブックに則ってきただけとも言えます。『女性の総理大臣候補が高市早苗なの?』っていろいろな人が言うけれど、彼女だから候補になれたというのが現実なんですよね」


 その現実をはっきり見せられるのがつらい。そう井戸さんに言うと、こう返ってきた。


「多くの女性が結局、上に行くには彼女の道しかないことに気づいている。それで責任を感じるとまでは言わないけれど、自民党を、この社会を変えられなかったことがどこかやましく、だからつらいんじゃないでしょうか」


『30歳のバースディ』を読んだ。そこにいる高市さんは、自分に正直でまっすぐな人だった。その印象は、衆院選に初当選した2年後に出した『高市早苗のぶっとび永田町日記』でも変わらず、2章が抜群に面白かった。


■悔しさ知っているのに


 92年、地元奈良県から参院選に無所属で立候補、落選した顛末(てんまつ)が書かれている。当初、自民党公認で出るはずが、党県連会長に阻まれる。その経緯を一言でまとめるなら、「会議の場で言われたことを額面通りに受け取ったが、実は裏で違うことが進んでいた」というもの。怒り、悔しがる高市さん。だが、その翌年衆院選に無所属で立候補、トップ当選する。たくましい。


 この時、高市さんが落ちたのは、「ボーイズクラブ」の陥穽(かんせい)だった。女性は立ち入り禁止の所で物事が決まり、今もあちこちで女性を待ち受けている。その悔しさを知っているのに、何で? と、思った端から思う。だからなのか、高市さん。


 総裁選は、どうなるだろう。(コラムニスト・矢部万紀子)

※AERA 2021年9月27日号


このニュースに関するつぶやき

  • AERA… めちゃくちゃ必死じゃ〜ん(笑) 長すぎて 逆効果では? 半分にして2つの記事にする 冷静さが必要
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