北欧の人々の交流をつくったのは「窓際のクマのぬいぐるみ」  国境を越えて広がる、コロナ禍の「助け合い」のアイデア

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2021年09月23日 11:40  ログミー

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薬局が地域のハブになる「コミュニティ薬局」の役割

司会者:では(今日ご紹介する)3つ目の最後のテーマ「Beyond LOCAL 地域はネクストステージへ」というところに入りたいんですけれども。ご存知のとおり日本各地、生産者ですとか小規模な事業者というのは、非常に打撃を受けたかと思います。世界各地で同じように、地域が打撃を受けているんですけれども。

その地域同士の事業者とか生活者が助け合って、自分たちが新しいアイデアで高めていくという取り組みが、自然発生的に生まれていました。ここはもう日本でもすぐに取り入れられるようなアイデアとか、そういう動きの事例が多かったです。小祝さん、こちらをぜひピックアップしてご紹介いただければと思います。

小祝誉士夫氏(以下、小祝):実際に上海に住んでる、弊社のリサーチャーの地域で起きたことなんですけど。今までマスクや薬を売っていた薬局が、地域のコミュニティのハブになって、チャットサービスを使ってお客さん同士をグループ化して、そこでモノを売るだけではなくて、しっかりとそこの相談に乗ったり。あとマスクの入荷状況とか、免疫力を高めるワークショップの案内みたいなことをしたり。

書籍では「コミュニティ薬局」と紹介したんですけれども、そうやって小売店舗が地域のコミュニティのハブになることで、実際モノを売るだけだった拠点が、人々の安心安全までカバーしてく。そのローカル薬局の新しい役割っていうのは、すごくおもしろいなと思いました。

地元の人や地域のお店を買い支える「支援する消費」の動き

小祝:次がヨーロッパの事例なんですけれども。今はAmazonとかでEC全盛の時代ですが、その流れに取り残されたというか、ローカルの小さな商店が今回のコロナで一番打撃を受けたと思うんですけれども。そういったものをしっかり支えるような動きが、スペインとかドイツとかで生まれてきています。

今までECサイトを持ってなかったような小規模店を支援する動きが出たんですけれども、それを「スローショッピング」と銘打っています。「スローフード」という言葉がヨーロッパにありますけれども、そうやって地元の人たち、自分たちの地域のお店を買い支えるような、そういった「支援する消費」という動きが出てきてるのが、非常に私の中で印象深かったです。

同じように、これは「Beyond SHOPPING」って欄に入れてもよかったんですけれども、中国のライブコマースです。もう間違いなく日本でも広がっていくであろうという事例なんですが。

「快手」(クアイショウ)というライブ配信アプリで、地方の農業の生産者が「コロナで売れなくなっちゃって、こんなに余っちゃってるんだ」っていうことを、直接消費者にライブ配信で訴えかけて、そこから購入につながっていく。このようなライブコマースが一気にこのコロナ禍で広がっていきました。これも「買い支える消費」につながってきていると思います。

あとはやっぱり中国ならではの事情もあってですね。顔が見える安心感、安全感があり、ライブ配信の場合だと地域も見えますし、現物も見えますし、生産者の顔も見える。そんなところで、非常に安心・安全感を訴求できることでもあります。

あとはもう1つは、コロナ禍でみんながステイホームしている中で、マンゴーの畑とかいろんな所を旅気分で観ることができる。やっぱりライブ中継なので、そういったエンタメ性も買い物の中に含まれているのが、非常におもしろいなと思いました。

いろんな業界にチャンスがある「応援消費」の可能性

小祝:ライブコマースが日本でなかなか広がらない事情って、原田さんはご存知だったりしますか。

原田曜平氏(以下、原田):本当に若者限定になっちゃうかもしれないんですけど、若い子たちの間ではゆうこす(菅本裕子)さんっていうインフルエンサーの方が、ライブ配信ですごい金額の化粧品を売ったりしています。広がってきてはいるんですけど、どうしても人口構成上、若い人のボリュームが少ないから見えにくい構造になっていると思うんです。

ただ、まだちょっと美容分野に限られちゃっている気がしてね。本当は中国の事例のような地方の生産者とかがやれるといいですね。特に日本は人口減少社会ですから、下手したら移住者を入れなければなくなってしまうような自治体が、令和の時代にはどんどん増えていくわけです。そういう人たちを支えるという意味もあると思います。

加えて「支える」とか、そういう変なボランティア意識みたいなものじゃなくてもね。純粋に「ここの農家の人が作っているんだ」とか、「おいしい桃ってこういう特徴があるんですよ」なんて聞いていたら、本当に「買いたいな」って、純粋に購買意欲を駆り立てることにもつながるしね。

ちょっと話また戻っちゃいますけど、「応援消費」で言えば、特にこれからのZ世代の人たちは、インフルエンサーの人たちがぜんぜんまだ芽が出てない、フォロワーが少ない時から応援して、だんだんフォロワーが増えてくという姿を、誰しもが見ているので。これはインフルエンサーだけではなくてね。

だから下手したら農家の人のみならず、いろんな業界の人にチャンスがありますよ。ひょっとしたら和菓子職人がやってもいいかもしれないし、いろんなジャンルにもっと広がっていくべきだなと思いますね。

窓際がコミュニケーションの場になる「#GoingOnABearhunt」

小祝:そうですね。次の事例は、北欧のデンマークなんですけど。今回15ヶ国ぐらい調査した中で、やっぱりデンマークの事例が私の中ですごく印象的だったのがかなり多くてですね。これもそのうちの1つなんですけれども。

やっぱりなかなか外出ができなくなってくると、せめてローカルで、ご近所で楽しもうというような動きの中から自然発生的に生まれてきたんですけれども。書籍では「窓際交流」と言ってるんですが、窓際に誰ともなくクマのぬいぐるみを置き始めて、それを散歩しながら家族で探していくという遊びというか、行動が一気に広がっていった。それがイギリスとかアメリカとかにも飛び火したという、ちょっとおもしろい事例なんですけれども。

さらにデジタル大国であるデンマークらしいんですが、こういったローカルの動きに、「#GoingOnABearhunt」というSNSのハッシュタグを作って「ここにあるよ」と共有したりとか。地図アプリで、そのクマの場所を探し当てる宝探しゲームみたいなことをしたりとか。

地域のそれぞれの家の窓際がコミュニケーションの場になったという、ちょっと心温まる事例でした。こんな事例がたくさん北欧のデンマークから届いてきて、私の中では非常に印象深い国の1つでしたね。

原田:今回小祝さんといろんな事例を見せていただいた中でも、確かに北欧はとってもおもしろい事例が多かったですよね。

小祝:多かった。

原田:おそらく、これは勝手な仮説ですけど、もともとデンマークのような寒い地域はおうち時間が非常に長くて。おうちでのエンジョイの仕方は、世界でも抜群に進んでたエリアなんですよね。それがコロナによってさらに進化したということで、ちょっと何段階か先にいかれちゃったなっていう気がしますね。だから北欧は、むしろ今こそ注目すべき時期なのかなという気がします。

大事なのは「デジタルの活用」ではなく「人のインサイト」

原田:あともう1つ、さっきハッシュタグの話が出たんだけど。今回すごく思ったのが、もちろんさっきのバーチャルリアリティみたいな感じで、コロナによってデジタル化が急激に進んでいますよね。特に日本はデジタル化が遅れている領域がすごく多いので、もっともっといろんなデジタルサービスを普及させなきゃいけない・作らなきゃいけないという課題がある。

でも逆に、頭がデジタルにいき過ぎている気もします。このぬいぐるみの事例なんていうのは、下手したらデジタルはいらないわけですよね。コロナで外に出歩けなくなった、ご近所とも会わなくなった。でも人の絆は感じたい。なにをすればいいんだ。「そうだ、ぬいぐるみを置こう」って、アイデアはすごくアナログな発想ですよね。

このコロナ禍で、頭がデジタル一辺倒になっている企業が多いので。そこはそこで大事なんだけど、すごく重要なのはやっぱり人のニーズだったりインサイトであって。それにデジタルが必要だったら使えばよくて、関係ないものもいっぱいあると思うんです。

そこは今回の書籍で参考にしていただきたいなと思っています。「大事なのは人のインサイトだよ」と、すごく感じましたね。

小祝:非常に北欧らしい、ヒューマンタッチな事例だったので取り上げてみました。

国境を越えて広がりつつある「助け合い」のアイデア

司会者:最後の事例もそうですね。

小祝:そうですね。「リアルな相互補助」みたいなことが世界中、いろんなとこで生まれたんですけど。その中でもタイの「お裾分け棚」というのが非常におもしろい事例です。

極端に言うと、これも自然発生的に街の中に棚が生まれて、そこにお金持ちで食料や飲み物が余っているとうな人が食料を置いていくんですね。そして食に困っている人がそこから取っていく。こういう「お裾分け」が自然発生的にできるのは、「徳を積む」といった精神が非常に息づいてる仏教国のタイらしい事例なのかなと思って取り上げてみました。

この辺は、日本で生まれなかったのがちょっと残念だなと思う一方で、非常にユニークなシステムだなと思いました。

原田:日本も、観光業やホテル業にしても百貨店にしても、本当に苦しんでる業界がありますよね。学生さんもアルバイトをクビになったり。とても苦しんでる人がいたので、こういう発想がもっともっと出てきてくれたらよかったですね。日本ではあまり生まれなかったですね。

司会者:ありがとうございます。私のほうで最新の補足事例を集めていたら、実はアメリカでもこの「コミュニティフレッジ」という、本当にタイの「お裾分け棚」と同じように、街の冷蔵庫というかたちで無償で食料や飲料を提供して、それを恵まれない人・足りない人が持っていくと。

こういう動きが、テキサスをはじめ主要都市で非常に広がっているというのが、最新事例で届いています。やっぱりこのコロナで、人と人の絆、助け合い、そのアイデアが、グローバルに国境を越えて広がりつつあるなと感じてます。

自宅療養者を救う、デジタル×アナログの事例

司会者:もう1つ、こちらもタイでおもしろい事例で、「BeyondDATA」のカテゴリにも関わってきますけれども。今日本では自宅療養者の対応ができなくて、残念ながら亡くなってしまうというニュースも出ていますけれども、タイではいち早くこのデジタルマップのプラットフォーム「JITASA.CARE」が登場しまして。

JITASA.CARE จิตอาสาดูแลไทย

自宅療養者が自分で自分の状態とか、助けてほしい内容をマッピングしていくんですね。これを近くのボランティアが見て、できることをどんどん協力していくという。デジタルと地域のアナログ性をかけ合わせた、非常にすばらしい事例だなと思って見てます。

見てみると、本当にものすごい数がマッピングされていまして。例えば赤色のマッピングをクリックして日本語に変換すると、「ヘルプを待ってます。先天性疾患があります。助けてください」みたいに書いてあるんです。これをその近くの人、ボランティアの方が助けて、解決すると緑色に変わるという仕組みです。

これぐらいの技術は日本にもあると思うんですけど、やっぱり規制とか自治体のルールとか、いろんなものではばかられているところです。このコロナ禍で、進化すべき分野が浮き彫りになったかなと思っています。まだまだ世界にはヒントがたくさんあるなと思いました。

世界の事例を商材や業界とかけあわせて、日本初のものをつくる

司会者:時間も残りわずかになってきたので、最後にお2人に締めの言葉として、視聴者の方にメッセージをいただきたいなと思うんですけれども。まず原田さんからお願いできますでしょうか?

原田:はい。とにかくこの本(『アフターコロナのニュービジネス大全』)には、たくさんの事例が載ってます。それをそのまま、「うちの会社でもやってみよう」という使い方ができるものも、中にはあるかもしれません。

ただ、やっぱりお国の事情とかいろんな状況も違うので、多くの事例はそのままというよりも、たたき台として使っていただくといいんじゃないかなと思います。「タイでこの事例が起こっていておもしろいね、じゃあうちの商材やうちの業界にかけ合わせるといったいどんなことができるんだろうね」と。

事例を見て「これが答えだ」って、浅はかに思ってもらわないほうがいいですね。ぜひご自分の業界とかけ合わせて、むしろ新しい、日本初のクリエイティブなものを生み出していただきたいなというのが1つと。

あともう1つは、我々もTNCさんも、日々いろんな最新事例を仕入れることも仕事だったりもするので。今回のご縁ですから、なにか私に問い合わせがあったら、例えばTwitterとかで連絡をいただいてもいいですし、TNCさん経由でご連絡いただいてもいいですし。ぜひぜひ、今後いろいろ議論させていただいて、一緒にいろんなものを作り出していきたいなって思います。

大事なのは、情報を「どう咀嚼するか」

司会者:ありがとうございます。小祝さんお願いします。

小祝:途中でも言ったんですが、コロナ禍で進化したものや変化した価値観というのは、おそらく今後アフターコロナが見えてきた段階では、定番化していくと思うんです。そこに関しては「見えている未来」だと思って、積極的に変化に備えていただきたいなと思ってます。

何度も言ってしまって恐縮なんですが、とにかく「変わらなくてはいけない」ということを意識していただきたいです。できるだけ先を行ってる事例、いわゆる今日ご紹介したような海外の事例の情報を、積極的にアンテナを立てて取っていただいて、その情報を原田さんが言ったように「どう咀嚼するか」が大事だと思います。

これからどんどん新しい海外事例が入ってくると思うので、それをどう自分の会社のことにしていくかとか、日本にローカライズしてくかと考える癖をつけて、体質改善していただいて、未来に備えていっていただきたいなと思っています。今日はありがとうございました。

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