「スイートプリキュア♪」10周年 震災の年に描かれたシリーズ屈指の“優しいラスト”

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2021年09月23日 18:02  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真「スイートプリキュア♪」の4人(画像はAmazon.co.jpから)
「スイートプリキュア♪」の4人(画像はAmazon.co.jpから)

 2021年は「スイートプリキュア♪」放送開始から10周年の記念すべき年です。



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 その割に、世間では「ハートキャッチプリキュア!」と「トロピカル〜ジュ!プリキュア」のコラボ映画が話題になるなど、「スイートプリキュア♪10周年」があまり盛り上がっていない感じがあるのですよね。



 ですので、せめてここでは「スイートプリキュア♪」のお話をしたいと思います。「スイートプリキュア♪」は東日本大震災の年に描かれた「悲しみを消すのではなく、受け入れ未来へ進むプリキュア」を描き切った、プリキュア史にも残る超々名作なのですよ。



※記事後半に「スイートプリキュア♪」のラストについての描写があります。未見の方ご注意ください。



●スイートプリキュア♪



 「スイートプリキュア♪」は、2011年放送のプリキュアシリーズ第8作目。「音楽と友情」をテーマとし、キュアメロディ、キュアリズム、キュアビート、キュアミューズの4人のプリキュアが音楽の国メイジャーランドを救うため、妖精ハミィとともに幸せのメロディを不幸のメロディに変えようとするマイナーランドと戦いました。



 前半は北条響(キュアメロディ)と南野奏(キュアリズム)の2人の友情を中心にストーリーが展開し、何度もケンカしながらもお互いの気持ちが近づいていく姿が描かれます。



 物語中盤では敵の幹部だったネコ型妖精のセイレーンが「キュアビート」へと変身、妖精ハミィの「友達を信じぬく姿」が描かれ、後半戦に入ると「キュアミューズ」の正体と、その家族たちに焦点が当てられる物語構成となっています。



●大きなお友達の評価



 ただ、当時の状況をリアルで体験して感じていたのは「スイートプリキュア♪」は、いわゆる「大きなお友達」の評価は例年以上に分かれていたのは確かなのですよね(※プリキュアにおいて「大きなお友達の言葉」は何の意味もないことは承知の上です)。



 2019年に行われた「NHK全プリキュア大投票」の作品部門でも、全15作品中でトップ10外になるなど、やや不遇な扱いを受けることも多いシリーズです。



 自分の周りでも前半戦で脱落しちゃった人が多数観測されました。



 ファンから見れば「あの序盤のケンカ回があったからこそ、終盤の神展開につながるんだろうが!」と言いたい気持ちもわかるのですけど、リアル時間で約2カ月間ずっとケンカばかりしていた(ように見える)のを見ていた人の気持ちもわからなくもないのですよ。



●中盤から加速度的に面白くなっていく



 でね、この「スイートプリキュア♪」、前半戦は確かにやや遅めな展開なのは否めないのですけど、中盤に入ってからが、本当に神がかった面白さなのですよ。



 スイプリの後半戦見ないで脱落しちゃった人、本当にもったいない!



 第21話でのキュアビート加入、そしてキュアミューズの正体が判明する第35話あたりからのストーリー展開はプリキュアシリーズでも屈指のスピード感で怒涛(どとう)の展開が続き、本当に毎週目の離せない面白さだったのです。



 ラスボス「ノイズ」との激闘とその結末は今もなおプリキュアファンに伝説として語り継がれています。



●震災の影響



 「スイートプリキュア♪」を語る上で外せないのが、2011年3月11日に起きてしまった「東日本大震災」です。



 その影響は大きく、予定よりも1話少なくなり、秋公開の映画もシナリオを全部白紙にして再構成した事や、テレビシリーズも内容が変更されたことなどが当時の製作者インタビューでも語られています。



3月11日の時点で全体の3分の1くらいのシナリオはできていましたが、それ以後上がってきた話数に関しては、意図的な部分も無意識的な部分も含め、多分に震災の影響が盛り込まれていたと思います。とにかく前向きな作品を作りたい、という思いがあって。震災が無かったら、ラストも全然違った方向になっていたでしょうね。



引用:『アニメージュ』(2012年02月号、徳間書店)



 当時、「スイートプリキュア♪」の公式サイトでは、被災地の子どもたちに向け「プリキュアからみんなへの応援ムービー」やメッセージも配信され、子どもたちを勇気付けました。



 そして、この「震災」という悲しい出来事が、「スイートプリキュア♪」のラストを大きく変えていったのです。



●ノイズという存在



※注意!! この項には終盤のネタバレがあります!



 同作のラスボス「ノイズ」は悲しみの結晶です。楽しいこともあれば、その裏返しとして必ず悲しいこともある。そんな「人間の悲しみの結晶」がノイズという存在です。ノイズは人間がいる限り生まれ続けるのです。



 彼は、全世界を音楽の無い静寂な世界にした後、自分の悲しみをも消し去るため自分をも消滅させようとしています。静寂な世界を望む彼は、自身の「悲しみ」も許せなかったのです。



 プリキュアたちはノイズを倒すのではなく助けるために戦うことを決断します。



 ノイズ「何が笑顔だ! ほんの少しの心次第で、一瞬で悲しみに変わる!」



 キュアメロディ「だからこそ、どんなに深い悲しみも乗り越えたら笑顔に変わる!」



(「スイートプリキュア♪」第47話から)



 笑顔が一瞬で悲しみに変わるのであれば、逆に悲しみの先にはきっと笑顔がある。ノイズという存在が逆説的にそれを証明しているからこそ、ノイズを消し去るのではなく救うことによって笑顔の世界を取り戻そうとするキュアメロディ。



 このスイートプリキュア第47話ラストの10分にも及ぶ「プリキュア問答」はプリキュア史に残る名場面。戦いながらも対話の中でノイズを救おうとするプリキュアたちの姿はまさに子どもたちのヒーローだったのです。



 そして最終回。「戦闘シーン」は一切なく、平和になった世界での後日談が語られます。これもプリキュアシリーズにおいては珍しい構成です。



 プリキュアの4人によりノイズの野望は打ち砕かれ、ハミィの幸せのメロディより世界に平和が訪れました。



 しかし、人間がいる限り悲しみは存在します。その悲しみの結晶であるノイズは再び「ピーちゃん」の姿で人間の前に現われます。



 しかしプリキュアたちはそれを受け入れる選択をするのです。



 響:「いくら幸せの世界になっても、悲しみや苦しみが全て消える訳じゃない」



 奏:「私たちはピーちゃんを受け入れた上で、前に進みたい」



 エレン:「悲しみを見ないふりをするのが幸せとは言えないもの」



(「スイートプリキュア♪」第48話から)



 プリキュアたちは「悲しみを受け入れたうえで前に進む」道を選びます。それはずっと大人たちが出来なかった選択。大人たちは悲しみを消すことばかり考えていたのですが、子どもたちは悲しみを受け入れ前へ進もうとします。



 そんな子どもたちが作っていく新しい未来への希望が描かれ、「スイートプリキュア♪」は幕を閉じるのです。



●「絶対! 明日も笑っている!」



 「スイートプリキュア♪」の作中では「絶対」という言葉がよく使われていました。「絶対にゆるさない!」「絶対に助けてみせる!」「絶対負けない!」「絶対にあきらめない!」。



 その力強いキュアメロディの「絶対」は当時の子どもたちに本当に必要だった言葉なのかもしれません。



 「スイートプリキュア♪」の後期エンディング「#キボウレインボウ#」はそのタイトルの通り「希望」を歌った曲です。



 震災の年、先が見えない暗闇の中、子どもたちに届けられたその歌にはこんな歌詞があります。



 「絶対!明日も笑ってる!みんな一緒に!」(「#キボウレインボウ#」作詞:六ツ見純代)



 子どもたちにとって、プリキュアからの「絶対」は「絶対」なのです。そんなプリキュアからの「絶対、みんな明日も笑っているよ!」という力強いメッセージは、どれだけ当時の小さな子どもたちを勇気付けたことでしょうか。



 友達を信じぬく力。誰も否定しない。ぶつかっちゃうことはあるけれど、それはお互いを理解するのに必要なことで、決して相手を否定するためじゃない。



 悲しみを消し去るのではなく、受け入れ共に過ごすこと。あなたは決して1人じゃない。楽しいことも、悲しいことも、あなたという存在そのもの、それら全てが合わさって「一つの組曲」なのだから。



 震災が起きてしまい「悲しみをも受け入れ、それでも前へ進んでいこうよ」という、シリーズ屈指の「優しいラスト」で締めくくられた「スイートプリキュア♪」。



 ぜひ、この10周年の機会に、響と奏、エレンとアコ、4人のプリキュアが救ったこの世界に思いをはせてほしいのです。



 「『スイートプリキュア♪』全48話もあるんじゃ時間なくて全部追えないよ!」という人には、「映画スイートプリキュア♪とりもどせ! 心がつなぐ奇跡のメロディ♪」を見てほしいのです!



 この映画、わずか70分の間に、序盤の「女子中学生の部屋に侵入しようとして警察にガチ通報される元悪のボス」に始まり、キュアメロディとキュアリズムの仲良しっぷりから、キュアビートの天然っぷりとカッコよさ、キュアミューズの家族の思い、親子の絆に加えラストの超絶かっこいい戦闘シーンまで「スイートプリキュア♪」のエッセンスがぎゅうぎゅうに凝縮された超名作映画なのです! ぜひ!



●筆者:kasumi プロフィール



プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。


このニュースに関するつぶやき

  • Op.曲が神。ラストの“悲しみをも受け入れて進む”で、母さんを亡くした今では尚更、泣きそうになる。__…で期待が膨らんだ次番組、努力せず仲間内でヘラヘラ、不都合な闇は無視。何だこりゃ????
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  • 「エレン」推し!
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