ノジマステラ神奈川相模原で注目の松原有沙。チームを「W杯で優勝したなでしこジャパンのようにしていきたい」

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2021年09月26日 16:21  webスポルティーバ

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 9月からWEリーグが開幕した女子サッカー。

 プロ化され、11チームでホーム&アウェーを戦い、来年5月までリーグ戦が続く。ノジマステラ神奈川相模原は、その「オリジナル11」のひとつ。多くの選手が移籍してきてチームが活性化するなか、初代女王の座を狙っている。

 そのチームでキャプテンを任されているのが、松原有沙だ。



 大商学園高校、早稲田大学と名門チームでキャプテンを務めてきており、新しいスタートをきったチームを任せるのは、まさに適任と言えるだろう。

「キャプテン就任は、北野(誠)監督から言われました。最初は迷ったんですけど、そう言っていただける機会はなかなかないですし、自分もチームを引っ張っていかないといけないという気持ちが強くなっていた時期でした。キャプテンになることで自分の成長にもつながると思ったので、やりますと監督に伝えました」

 チームは、メンバーがかなり入れ替わった。

 新たなチーム作りが求められるわけだが、そのなかでキャプテンが果たす役割は大きい。だが、松原は、その大変さや難しさをそれほど感じなかったと言う。

「今年入ってきた選手が多いんですけど、もともと上下関係がないチームですし、関西から入ってきた選手たちが強烈すぎて、グイグイくるので(笑)、他の新加入の選手もすぐに仲よくなれた感じでした。ただ、試合では若い選手が少し遠慮をすることもあるので、そうならないように声かけなどをして思いきりプレーできる雰囲気を作っていきたいと思います」

 選手が伸び伸びとプレーできる環境や明るい雰囲気作りを意識しているのは、早稲田大学時代のキャプテンの経験が活きている。

「大学の時のキャプテン(4年時)は、高校の時とは全然、役割が違いました。高校の時は、監督の言うことをみんな、必死に頑張って聞こうみたいな感じだったんですけど、大学はみんな大人になって、それぞれ考え方が異なってくるじゃないですか。しかも早稲田に来る選手は、高校時代、みんな試合に出ていた選手ばかり。試合にかかわれないと気持ちが落ちてしまい、チームとして方向がひとつに向かない時期があって......そこがすごく難しかったです」

 そんな時、松原の支えになったのが、高校時代の恩師の言葉だった。

「高校の時、監督から『洞察力を持ったほうがいい』と言われていたので、高校時代から、周囲を見るということを意識していました。そのおかげで大学も周囲を見て、元気がない選手には声をかけたり、話をしたり、そういう行動を心がけていました。あと、自分たちの代は自由だったので、自分以外の仲間も試合に出られない選手の話を聞いたり、気持ちを上げてくれて、最終的には一緒に頑張ろうという雰囲気になりました」

 その結果、松原がキャプテン時は、インカレ優勝を果たし、2年時からの3連覇を達成した。

 現チームでも松原は、積極的に選手にかかわっている。練習中は声を出し、練習後、自主練に励む選手にはひと声かけている。キャプテンの周囲を見る目とちょっとした心遣いがチームのムードを変えていく。

 プロ化され、チームの環境は大きく変わった。

 松原は、アマチュア時代は、ノジマとの正社員契約で午前中は、ノジマアリオ橋本店でレジやフロアに立つなどの仕事をこなし、午後から練習をしていた。

「アマチュアの時は、仕事が午前中で、午後からサッカーの練習です。練習後は、特別なことをしていなくて、ちょっと自主練をして、明日仕事があるからもう寝ようって感じでした(笑)。でも、今は、プロになったので午前中の仕事がなくなり、その時間に全体練習をしています。午後は何もないので、どう時間を使うかいろいろ考えていますが、自分のレベルアップのために使いたいと思っています」

 個人練習は重要だが、体を休めることも大切なことのひとつ。ゆっくりできる時は映画やテレビ、ネットで動画を見たり、料理をして作り置きをしている。

「今は韓国ドラマのドクターズにハマっています(笑)」

 そう言って日焼けした表情をほころばせる。

 練習が午前中になり、人工芝の照り返しが強いせいか、ノジマステラの選手は健康的に日焼けをしている。日焼け止めを塗っている選手もいるそうだが、松原は「そのうち白くなるんで」と、あまり気にしていない。

 そんな松原のピッチにおける存在感は増すばかりだ。

 登録はMFだが、今は主にセンターバックを任されている。守備では対人の強さを見せて、相手を封じ込める。攻撃では最終ラインから持ち味である精度の高いロングキックでサイドや前線に展開し、攻撃をリードしている。

「攻撃では今年、サンデイ・ロペスという高身長の選手(182僉砲入ってきたのが大きいですね。今までだとボールを回せないなか、前に蹴っても大きな選手がいなかったので、なかなか収まらないことが多かったんです。でも、今は前でしっかりと収めてくれるので、それはひとつの戦術になるのかなと。ただ、もちろん自分たちもボールを持ってプレーする時間がほしいですし、そういう展開もできるチームになるようにしていきたいですね」

 182僂梁腓く厚いFWが前線でプレーする迫力は、なかなかものだ。これからフィットしていけば、松原の言うとおり攻撃の軸になっていきそうだ。

 外国人選手を入れて戦力をアップさせたノジマステラ神奈川相模原は今シーズン、どういうサッカーを展開していくのだろうか。

「基本的には全員攻撃、全員守備です。特に守備は大事にしていて、失点しなければ負けることがないので、いかに失点をしないか、選手一人ひとりのポジショニングを意識しています。試合は、無失点でいきたいですね。サッカーはなかなか点が入らないので、いっぱい点が入ったほうが見ている人は楽しいと思うんですけど、自分は点の取り合いはイヤです。でも、1−0で耐えるのもイヤです(苦笑)。3−0ぐらいが一番、余裕を持ってプレーできるので毎試合、圧勝したいですね」

 ノジマステラ神奈川相模原が攻守に覚醒すれば、初代女王争いは混沌としていくだろう。

そうして、リーグ戦が盛り上がることは大事だが、女子サッカーの人気はまだ代表に依存しているところが大きい。男子もそうだが、日本サッカー界は、構造的に代表チームがサッカー人気をリードしている。特に女子サッカーはそうで、2011年W杯優勝でなでしこ人気に火がつき、2012年のロンドン五輪の銀メダルでさらに勢いが増して、なでしこリーグの試合には1万人を越えるファンがつめかけた。代表が盛り上がらないとリーグが盛り上がらないという状況は今も10年前とそれほど変わっていない。

「そうですね。なでしこ(ジャパン)はメディアで注目されますし、テレビでも試合が放送されるので、たくさんの人に見てもらう機会がある分、そこで女子サッカーがこんなに面白いんだって思ってもらわないと、リーグにつながらないのかなと思います」

 松原は、19年、20年になでしこジャパンに招集されてプレーし、国際Aマッチ4試合を経験しているが、それ以降、代表を離れている。かつてはU−17W杯に出場するなど、カテゴリー別代表でプレーした経験を持ち、当時のメンバーには長谷川唯、清水梨紗らがいる。

「U−17 W杯ではいい経験をさせてもらったんですが、悔しさもありました。グループリーグである程度、勝てる試合には出させてもらったんですけど、ここが勝負という試合には絡めなくて......。決勝トーナメントのガーナ戦には出たかったですね。ガーナはスピードが違うし、足の長さも違って爆発的な力を見せつけられました。そういう試合に自分がもっと絡んでいきたいと思うようになった大会でした」

 松原がU‐17W杯に出場したのが2012年だ。あれから9年が経過し、代表については、どう考えているのだろうか。

「代表に入ることでチームを知ってもらうキッカケになりますし、知名度も上がると思うので、そこに貢献していけるようになりたいですね。ただ、代表に入るには、チームで結果を残さないといけないので、まずはチームに集中して、代表、代表と気負わずにやっていきたいと思っています」

 チームの目標は、「優勝」だ。

 松原は、優勝を念頭に置きながらも試合は「こだわりを持って戦っていきたい」と言う。

「優勝が一番の目標ですが、今年、開幕前の練習試合で得点がとれないなか、WEリーグ開幕前に外国人選手が入ってきてくれました。攻撃のバリエーションが増えたと思うので、失点をゼロに抑えつつ、得点にこだわって勝ち試合をひとつでも増やしていきたいと思います」

 プレシーズンマッチは4試合1得点13失点で全敗だった。

 だが、開幕戦ではアウェーでマイナビ仙台レディースの攻撃を粘り強い守備で跳ね返し、スコアレスドローで勝ち点1を獲得した。2戦目の三菱重工浦和レッズレディースには敗れたが、これから勝ち試合を重ねていけば自然と上が見えてくる。上位争いをして盛り上がれば、スタジアムに足を運ぶファンがさらに増えるだろう。そうして共鳴してくれる輪を広げていけば、地域に欠かせないクラブになる。その先、松原は、あるチームをノジマステラ神奈川相模原と重ねている。

「2011年のW杯優勝のなでしこジャパンは戦う姿勢を見せてくれましたし、たくさんの人が勇気づけられたと思うんです。自分は、あの時のなでしこジャパンのような存在にノジマステラがなれるようにしていきたいと思っています」

 あの時、なでしこジャパンには澤穂希というシンボルがいて強かった。 

 今、ノジマステラ神奈川相模原には松原がいる。これからは、そのことをプレーと結果で証明し続けていくことになる。

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