「AEDの使用が増えれば、もっと助けられる命がある」−東京慈恵会医科大学・武田聡先生

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2021年09月27日 15:00  QLife(キューライフ)

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 AED(自動体外式除細動器)を使ったことはありますか? 自動車の運転免許をとる際など何かの機会で、心肺蘇生やAEDのトレーニングを受けたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 総務省消防庁の資料1)によると、心臓発作などによって心臓や肺の機能が止まってしまう「心原性心肺機能停止」について、2019年のデータで一般市民が目撃した数は2万5,560人。一般市民が心肺蘇生を行ったのは1万4,789人(57.9%)でした。このうち、1か月後に社会復帰できた人は1,820人(12.3%)ですが、AEDを使用して救命したケース(1,311人)に絞ると、1か月後に社会復帰した人は603人(46.0%)に上ります。一方、一般市民が心肺蘇生を実施しなかった人(1万771人)のうち1か月後に社会復帰したのはわずか471人(4.4%)でした。この結果から、AEDを使って救命をすることが大切だとわかります。

心肺機能停止後2分でAEDを使用できれば救命率は80%

 医療機器の開発などを行うフィリップス・ジャパンは9月1日、防災の日に合わせて救命をテーマにセミナーを開催しました。

 セミナーで講演した東京慈恵会医科大学の武田聡先生(救急医学講座主任教授)は、「一般市民が心原性心肺機能停止している人を目撃した場合、約6割の人が心臓マッサージをしている」と評価しつつ、「AEDが使われているケースは少ない。AEDの使用が増えることで、もっと助けられる命がある」とAEDの使用を普及する必要性を訴えました。


武田聡先生(フィリップス・ジャパン提供)

 心肺機能が停止する場所で多いのは住宅で、その割合はなんと66.3%を占めます1)。武田先生は、「居室での心停止が最も多い。ここをどう救命するかが課題だ」と問題視しました。

 武田先生は「救命は時間との戦い」といいます。救急車を呼んで到着するまでの時間は全国平均で8〜9分です。心肺機能が停止すると、1分ごとに7〜10%救命率が下がるため、「9分後に救急隊が到着した場合、救命率は10%しかない。一方で、勇気を出して、心肺機能が停止してから2分後にAEDで電気ショックをかけられれば救命率は80%だ」と説明。「倒れている人を見つけたとき、AEDの使用をためらう理由はなにもない。電気ショックを行う必要があるかはAEDが判断するので、怖いという意識はなくしてほしい」と呼びかけました。

 武田先生はまた、東京マラソンの例を出し、「14年間で11人が心停止しているが、救命率は100%」と紹介。「全員を救命することも夢ではない」と言葉に力を込めました。

 万が一の事態に備えて、近隣施設にあるAEDの場所を調べておくことは大切です。日本AED財団では、どこにAEDがあるかを登録できたり、設置情報を把握できたりするAEDマップを提供しています。みなさんも、お近くの設置場所を確認してみてはいかがでしょうか? (QLife編集部)

1)総務省消防庁「令和2年版 救急救助の現況」(https://www.fdma.go.jp/publication/rescue/items/kkkg_r02_01_kyukyu.pdf)

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