「熟練社員より効率的に」 配送ルート最適化でトラックの燃料費を年360万円削減、OKIが挑む物流改革

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2021年09月27日 21:22  ITmedia NEWS

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写真OKIが開発するアルゴリズムの運用イメージ
OKIが開発するアルゴリズムの運用イメージ

 熟練社員が立てた配送計画に比べ、1日当たりの配送走行距離を約300km短縮し、年間360万円の燃料費と440kgの二酸化炭素を削減できる──沖電気工業(以下、OKI)は3月に、同社が開発している、トラックの配送計画を効率化するアルゴリズムの実証実験でこんな結果を出すことに成功したと発表した。



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 配送計画には貨物や車両、配送先などの要件が関わるが、専門知識や経験のある人しか効率的な計画が立てられない他、配送の要件が明らかになってから短時間で立案しなくてはいけない場合もあり、現場の負担になったり、必ずしも効率的なルートで配送できなかったりするケースも多いという。



 今回のアルゴリズムは熟練社員並みを実現するのではなく、熟練社員よりも優れた結果を出すというもの。OKIはこれをどう生み出したのか。同社の川口勝也さん(イノベーション推進センタービジネス推進部ビジネス推進第一チームスペシャリスト)に話を聞いた。



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●効率化のカギは「分割配送」への対応



 専門人材以上の効率化を実現したカギは、1つの拠点に複数のトラックで荷物を配送する「分割配送」という手法への対応だ。



 実は、今回のアルゴリズムのような配送計画用のシステムはすでにいくつも存在するという。一方で、これらのシステムは1つの拠点につき1つのトラックで荷物を配送する前提で配送計画を立てるものが多く、分割配送を想定した運用ができないという。



 しかし実際には、分割配送を活用したほうが効率的な場合もある。例えば2つの荷物が必要な店舗A、Bと、4つの荷物が必要な店舗Cに、最大で4つの荷物が積めるトラックで配送する場合、従来のシステムでは3つのトラックを使う必要がある。



 しかし分割配送に対応していれば、2つのトラックにそれぞれ4つの荷物を積んで店舗AとBに2つずつ配送。その後2つの車両を店舗Cに向かわせ、残りの荷物を配送させるといった計算ができ、トラックの数などを削減できる。



 OKIが開発しているアルゴリズムは、倉庫から小売店各店舗への配送ルートを、この分割配送を考慮した上で算出可能。配送先の店舗の数や距離、車両の数、積み荷の量などを入力すると、複数の配送ルートを導き出し、その中から距離やコストなどが小さいものを選んで提案できるという。



 実験は、運送業者のロンコ・ジャパン(大阪市)と協力して2月に実施。ロンコ・ジャパンでは通常、「配送マン」と呼ばれる2人の熟練社員が、配送先や荷物積載量といった要件を基に、分割配送を活用しつつ、毎日最適なルートを考えている。



 実験ではこの作業を自動化し、スキルのない従業員でも配送計画を立てられるようにすることを目標に、13台の車両を使った計画をアルゴリズムを活用して作成した結果、冒頭のような成果を得られたという。



●知名度の低い配送手法を現場で発見、ヒアリングが効率化のヒントに



 川口さんは分割配送に対応したシステムが少ない理由について、分割配送の知名度がそもそも低く、AIやアルゴリズムを開発する事業者が認識していない可能性が高いと話す。つまり、これまで自動化が試みられなかった作業に着目したわけだ。



 「私も現場を見るまで(分割配送)を知らなかった。OKIだからできた技術か、といわれると分からず、他の会社でもできたかもしれない。机の上で考えるのではなく現場の声を聞いて課題を解決する方法を考えよう、というやり方がうまくいった例なのかなと考えている」



 分割配送に対応していないシステムが多い都合上、実験に協力したロンコ・ジャパンでも、これまでは人手で分割配送を考慮したルートを導き出す方がソフトウェアを使うよりも効率的であると捉えられており、結果として自動化や効率化が進んでいなかったという。川口さんは、こういった認識の事業者はロンコ・ジャパン以外にも存在すると話す。



 「物流業界でロボットがもてはやされている中、実際に倉庫作業の現場で導入したものの、効率化が実現できず、人手で実施したほうがコストが安いため活用されなかったという他社の事例もある。このように物流の現場では、人を超えないと『やっぱダメじゃん』と冷ややかに見られることもある。今回のアルゴリズムでは、そうならないよう現場でヒアリングし、分割配送への対応に挑戦した」



●量子コンピュータが物流に挑むきっかけ?



 分割配送に対応することで、業務削減と効率化を両立するOKIのアルゴリズム。しかし、これまで情報通信領域を主力事業として展開してきたOKIが、なぜ物流の課題に挑んでいるのか。理由は大きく分けて2つあるという。



 一つはSDGs(持続可能な開発目標)に即した新規事業を模索していたためだ。OKIは新規事業創出に向けた施策として、環境汚染や労働力不足といった社会課題を解決するような新規分野に取り組む戦略を掲げている。この一環として、物流を新たな事業分野に選んだという。



 もう一つは量子コンピュータ技術を活用して2019年に実施した、工場の製造ラインを最適化する実証実験だ。



 この実験では、カナダD-Waveが提供するアニーリング型量子コンピュータを活用。OKIのグループ企業・OKIデータの工場にある半導体製造装置や作業員の位置を最適化することで、作業員の移動距離を削減することに成功したという。



 この実験が物流への挑戦につながったのは、どちらの取り組みも、数ある組み合わせの中から最適なものを選ぶ「組合せ最適化」の問題であり、「数理最適化」をその解法として活用しているためだ。



 OKIデータの工場では、製造工程の異なる複数の製品に対して、いくつもの半導体製造装置を共用して作業員が装置間を移動して製造しており、生産性向上のためには、これらの膨大な組み合わせのパターンの中から最適なものを選択する必要があった。



 一方、OKIが開発しているアルゴリズムも、トラックや荷物、輸送先の拠点などの組み合わせからルートを算出する仕組みだ。この共通点から技術応用の可能性があると判断したことも、今回のアルゴリズムを開発するきっかけになったという。



 ロンコ・ジャパンと行った実験では、組み合わせのパターンがOKIデータの工場ほど膨大ではなかったため量子コンピュータ技術は活用していないものの、今後は応用も検討するという。



●「各ドライバーの運転距離に差」など課題も



 一方でこのアルゴリズムにはまだ問題点もある。例えば(1)店舗による到着時間の指定がある場合を想定した計算ができない、(2)ドライバーごとの運転距離や運転時間が均等になるようなルートを算出できない、(3)有料道路の通行料金を考慮できない──などだ。



 ただし、これらの機能を備えたアルゴリズムはすでに完成しており、10月中にもロンコ・ジャパンと協力して実地テストを行う予定という。テスト後は配送事業者向けの商品化も検討しているが、時期や提供形態などは決まっていないとしている。



 「OKIは2030年までにサプライチェーン構築の完全自動化を実現したいと考えている。幹線輸送などではベテランが(配送計画を)やっていることが多いが、こういうことを少しずつ高速化したい。今回のアルゴリズムは一部地域でのトラック配送という小さなものだが、これを広げて自動化を実現していければ」


このニュースに関するつぶやき

  • トラック配送の事、ホンマに分かってますか?道路も荷物も生き物です。机上の空論で走らされたら、ドライバーもったもんやない�फ�á��ܤ���ちゅうねん�फ�á��ܤ���
    • イイネ!1
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  • 一番問題なのは配車が決まってからの荷物の追加、配送先での待機等よね。
    • イイネ!5
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