【コラム】ジョニー・デップ演じる映画「MINAMATA」 環境への影響を考える原点

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2021年09月28日 10:11  OVO [オーヴォ]

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写真(C)2020 MINAMATA FILM, LLC
(C)2020 MINAMATA FILM, LLC

 地球温暖化、海洋プラスチック、持続可能性。今般の「環境問題」を説明する言葉の中に、「公害」の文字はあまりない。だが、加害と被害の関係が直接的で近く、より明確な公害は、環境が人に及ぼす影響の重大性を考える原点になる。昭和の中頃、熊本県で化学工場から排出されたメチル水銀化合物が、魚の食物連鎖を通じて人々に重篤な被害を及ぼした「水俣病」。現地に入り写真を撮り続けたアメリカ人写真家、ユージン・スミス氏を描いた映画「MINAMATA」が公開された。

 スミス氏は「ニューズウィーク」や「LIFE」などさまざまなメディアで活躍、第二次世界大戦時は硫黄島やサイパンなどでも取材、沖縄戦を撮っていた時に砲弾の爆風で重傷を負った。映画では、LIFEを辞めて酒におぼれるスミス氏が、後に妻となるアイリーンさんに出会い、水俣病を知って熊本で撮影を始める様子が描かれている。

 企業側の買収工作や暴行、放火による妨害に遭うスミス氏。だが、壮絶な日々を送る被害者を前に、戦争の後遺症とアルコールで放棄しかけた氏の人生にスイッチが入る。その内なる“蜂起”の過程を、ジョニー・デップが静かに、確実に演じている。

 膠着(こうちゃく)する国内問題に、国外のジャーナリストが一石を投じた史実を描くこの作品は、韓国の光州事件で、政府の弾圧を世界に知らせる役目を果たしたドイツ人記者を描いた映画「タクシー運転手」と重なるものがある。人々の苦しみや憤りへの国境を越えた共感、そして世紀をまたぎ、形を変えて立ちはだかる「環境」問題の壁。坂本龍一の旋律が、過去から未来へと流れる時間軸の一点に立ち、迷える我々の輪郭を浮かび上がらせているように聞こえる。

text by coco.g

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