「総裁候補の政策がバラバラで理解に苦しむ」 野党幹事長から見た自民総裁選

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2021年09月28日 18:00  AERA dot.

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写真福山哲郎(ふくやま・てつろう)/1962年生まれ。98年参院選で京都選挙区から初当選。民主党政権時には内閣官房副長官。2017年の立憲民主党結成に参画し現職(撮影/写真部・高野楓菜)
福山哲郎(ふくやま・てつろう)/1962年生まれ。98年参院選で京都選挙区から初当選。民主党政権時には内閣官房副長官。2017年の立憲民主党結成に参画し現職(撮影/写真部・高野楓菜)
 自民党総裁選が連日メディアで取り上げられる中、野党は次期衆院選をにらみ、連携を進めているという。今回の総裁選を野党側はどう見ているのか。AERA 2021年10月4日号では、立憲民主党の福山哲郎幹事長に話を聞いた。


【立憲民主党が発表した主な政策はこちら】
*  *  *


──緊急事態宣言下での自民党総裁選挙を、どう見ますか。


 唯一、女性が2人立候補したことはよかったと思います。1年前、自民党は総裁選をやって圧倒的多数で菅義偉首相を選びました。1年たった今、再び総裁選をしているということは、自分たちが選んだ総理・総裁が失敗だったと自ら認めていることに他なりません。しかも菅政権も、その前の安倍政権も、コロナ対策の道半ばで突然、政権を投げ出しました。今は緊急事態宣言の最中です。国家の危機にもかかわらず、首相自ら政治空白を作ったのです。野党が再三再四、憲法に基づいて国会を開いて議論しようと求め続けているのに、いわば身内の権力争いを優先し、躍起になっています。あまりにも身勝手極まりない。


 総裁選の候補者は、いずれも自民党幹部です。河野太郎氏は菅政権のワクチン担当相という要職です。それにもかかわらず、いずれの候補者からも、これまで1年半余りの自民党のコロナ対策に関する反省や謝罪がありません。国民からしてみれば、なぜ菅首相がこのタイミングで政権を手放すのか、全くその理由すらも見えてきません。安倍政権以降、とにかく「説明しない」政治が続いています。


■選挙の連敗ですげ替え


──なぜ、このタイミングでの総裁選なのでしょうか。衆院議員の任期も迫り、解散総選挙を有利に進めるためですか?


 3月の千葉県知事選挙、4月の三つの補欠選挙と再選挙、そして、8月の横浜市長選挙。一連の選挙で菅首相は勝利することができなかった。対内的に自民党総裁の最大の仕事は「選挙で勝つこと」。しかし、このまま菅首相の下で解散総選挙を行えば、自民党は大惨敗を喫する。だから総理の首をすげ替えて、権力の維持を図る。無派閥の菅首相は派閥の領袖(りょうしゅう)に担がれて、総理の椅子を手に入れました。しかし、「菅じゃ無理だ」となった途端、一気にはしごを外された。菅首相は、首相の専権事項である「人事権」と「解散権」を盾にして抵抗しましたが、いずれも封じられ急速に求心力を失ったと思います。




──総裁選に立候補している4人についてどう見ていますか?


 率直に申し上げると、4人の総裁候補の政策があまりにもバラバラで、自民党という政党は権力維持以外に何をアイデンティティーとしているのか理解に苦しみます。例えば経済政策ですが、岸田文雄氏は「新自由主義からの脱却」と言い、高市早苗氏は「アベノミクスの継承」を前面に打ち出しています。河野氏の経済政策はどっちつかずです。野田聖子氏は「教育・子どもへの投資が最大の成長戦略」です。それぞれ個人の考え方なので、それが悪いとは申しません。しかし、岸田氏は前政調会長で自民党としての経済政策には、一定の責任がある立場です。河野氏は現役の閣僚です。これほどまでに各候補の経済政策がバラバラだということは、じゃあ、安倍政権以降に自民党が推し進めてきたアベノミクスによって生まれた格差と分断は、いったい誰の責任なのか、ということになります。


■自民党にできない政策


──自民党政権下では首相が代わっても、絶対に実現できないことがあると指摘しています。


 アベノミクスと同時に自民党政治を象徴するのが「選択的夫婦別姓」と「LGBT平等法」を否定し続けているということです。これらの課題に対する立場も4者4様です。しかし、結果として安倍・菅政権の9年間は進むどころか後退しました。各議員の政治的立ち位置があまりにもバラバラで、党内一致できないのです。LGBT平等法についても、国際的な潮流とはかけ離れた議論しかできず、五輪の年にもかかわらずまとまりませんでした。一部の自民党議員が超党派でこれを法律として国会に提出しようとしましたが、最後の関門である総務会で見送られました。


 世界では当たり前となっている性別や国籍などあらゆる「差別」を法律で禁止すると明文化することも自民党政権ではできないでしょう。


──原発に関する立ち位置も、4候補者ですら異なります。


 誰とは言いませんが、新しい原発の開発、研究を進めるという総裁候補がいる一方で、どこかで原発は無くなるのだから、一定の再稼働は仕方がないと自らの「原発ゼロ」という前言を翻した候補者までいます。原発に関しては自民党が政権を握る限り、絶対に無くすことはできません。これも選択的夫婦別姓、LGBT平等法と同様です。政策志向が一致しない自民党を「多様性がある」「懐が深い」とメディアは持ち上げてきました。野党が同じことをすれば「バラバラだ」と批判されます。




■長期政権の副作用


──危機管理においても相当、考え方に相違があるはずです。


 緊急事態下では意思決定を収斂(しゅうれん)させて対応しなければならなくなります。安倍・菅政権で「この政策は誰が責任者なのか」「どのような根拠でこの政策が採用されたのか」など閣内ですら意思統一が徹底されない場面が多々ありました。国民を最も不安にさせたのが「後手後手」の対応です。これらも、もしかするとこの党内の「バラバラ感」がガバナンスの欠如につながっているのかもしれません。


 緊急事態下での意思決定は、とにかく時間との勝負です。国民が求めている政策を、一定の速度をもって実現するためには、自民党という政党の体質では極めて難しいと思います。


──「安倍・菅政権」を振り返り、どんな感想を持ちますか?


 菅政権は安倍政権の「亜流」でした。つまり、長期政権の副作用というか、非常にまずかった点が、より象徴的に浮き彫りになって、その結果、国民の支持を得ることができなくなり、菅首相は1年で政権を投げ出すことになりました。


■「低党高邸」と忖度


 具体的に言うと国会でも「説明をしない」ことが安倍政権の特徴でした。菅政権では拍車がかかります。最たるものが緊急事態宣言下での東京五輪の開催です。緊急事態宣言をいつまでにするのか、という国民の最大の関心事を政治的な思惑で決定しました。二言目には「専門家の意見を聞く」と言いながら、菅首相本人は非常に非科学的、反知性的な意思決定を繰り返したことも。まさに安倍政権の悪かった点が凝縮された格好でした。最後の最後には、菅首相の前で政府対策分科会の尾身茂会長が、首相の判断について疑問を呈する場面が何度もありました。人事権を握られている官僚機構は、政権への忖度(そんたく)を重ね、その結果、政府が機能しなくなったのです。


──官邸主導の結果、現在の自民党は内部から声を上げることが極めて難しくなっています。


 安倍・菅政権を振り返ると、「低党高邸」の言葉通り、党よりも官邸の権力が強大になりました。党内で活発な議論をしてそれを政策として反映するのではなく、官邸の意向が先にあって、それに異論を挟む議論は許されない。そうなると、党だけでなく霞が関も官邸の意向を忖度するようになってしまいます。


──立憲民主党は政権交代したら、最初の閣議で決定する項目を具体的に発表しています。霞が関の抵抗を受けると思いますが、実現可能ですか?


 例えば、選挙で政権が代われば、それは国民の意思です。その意思によって霞が関は動きます。政治は誰がやるかによって絶対に変わります。自民党政権によって隠蔽された公文書や映像などは、その日のうちに開示できるように動きます。政権が代わるというのは、そういうことなのです。これからも、経済、子ども、女性、気候変動、エネルギーなど、順次、政権公約を発表していきます。


(構成/編集部・中原一歩)

※AERA 2021年10月4日号


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  • 野合はバラバラではないと? https://mixi.at/aeYUBWN
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  • 本音:「悔しいニダ!羨ましいニダ!でもウリは地元京都の同○の皆さんの期待を背負っているから引くわけにはいかないニダ!」
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