レッドブル・ホンダを救った「恵みの雨」と「正しい決断」。濡れた路面でピカイチの速さを見せた

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2021年09月28日 19:31  webスポルティーバ

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 雨に笑い、雨に泣いた。

 ランド・ノリス(マクラーレン)は最後の5分、路面が急速に乾いていった予選で誰よりも鋭い走りを見せ、自身初のポールポジションを獲得した。

 決勝でもスタートでひとつ落としたポジションを13周目に取り戻し、その後もレースをリードし続けた。後方からは王者ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が猛烈な追い上げでDRS(※)圏内まで迫ってきたが、レースは残り8周。初優勝に向けて、最後の大勝負が始まる......。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。




 そんな矢先の46周目、突然、雨が降り出した。

 勝利を追いかけるふたりは、ドライタイヤのままコース上にとどまろうと懸命の走りを見せる。だが、ハミルトンが49周目にピットに飛び込んでインターミディエイトタイヤに交換する一方、ノリスはチームの制止を振り切るようにハードタイヤで走り続け、目の前に見える勝利を掴み獲ろうとする。

 しかし、無情にも雨脚は急速に強まり、ノリスはリードを吐き出して後退を余儀なくされてしまった。

 雨の予選でタイヤ交換のタイミングを逸して4位に沈み、さらには決勝のスタートで7位まで後退しながらも、前半はタイヤ温存・燃費セーブに集中。前のダニエル・リカルド(マクラーレン)がいなくなった瞬間から猛プッシュに切り替え、1秒も速いペースでノリスを追いかけたハミルトンが、最後の雨に完璧なタイヤ選択をして自身100勝目を掴み獲った。

「昨日の夜、自分のドライビングはハッピーじゃなかった。リプレイ映像を何度も、何度も見て、ミスは小さなものではあったけど、そういうものがたくさんあって、決して最高とは言えなかった。だからこそ今日は、絶対に最高の仕事をやり抜くんだという強い決意を持って朝を迎えたんだ」

 ここのところのハミルトンは、小さなミスが続いていた。だが、7度目の戴冠を決めた昨年のトルコGPと同じように、どんな苦境でもあきらめず、攻めと守りのメリハリが利いた王者らしい走りが蘇った。

「スタートで出遅れてしまったけど、とにかく混乱に巻き込まれないように気をつけた。ランドがどのくらい前にいるのか、自分がどこにいるのかもわからない状態でレースをしていたけど、ベストを尽くし、マクラーレンの1台を抜いてからランドを追いかけていった。

 トラフィックに引っかかるとか、ミスでもないかぎり、ランドを抜くのは難しかったかもしれない。彼はまったくミスを犯さなかったし、本当に速かったし、すばらしい走りをしていたからね。彼はまだ若いし、この先にいくつもの勝利が待っているよ」

 一方、金曜FP1の走行でメルセデスAMGとのタイム差を見て、4基目のパワーユニット投入とペナルティ消化を決めたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、前戦イタリアGPで科された次戦3グリッド降格もあって、最後尾20番グリッドからのレースとなった。

 彼が目指すのは優勝争いではなく、1点でも多くポイントを獲るレースだった。実際のところ、それが決して簡単なものではないこともわかっていた。

 ドライコンディションとはいえ、土曜の大雨で路面は汚れ、タイヤには厳しい状況が予想された。そして実際に走り始めてみれば、金曜のロングランデータがまったく役に立たないほど、タイヤの振る舞いは異なるものだった。

 レース序盤こそ下位勢・中団勢を次々とオーバーテイクしていったが、1レース保つはずのハードタイヤはレース前半でグリップを失い、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)よりも前に出ることはできなくなってしまった。

 26周目という早い段階でタイヤ交換を強いられ、残り半分をさらに柔らかいミディアムで走り切らなければならないという苦しい状況。やはり最後はタイヤが厳しくなり、ピットストップで抜いたはずのアロンソにコース上で抜き返されてしまった。

「雨がなければ7位か、よくても6位で終えていただろう。フェルナンド(アロンソ)に抜かれてしまったけど、僕の左フロントが終わってしまっていたのに対し、彼のほうがいいタイヤを履いていたからね。ハードタイヤがあんなに早くダメになってしまうとは思わなかった。

 あとになってみれば、ミディアムでスタートするほうがいい戦略だったかもしれない。今日のグレイニング(表面がささくれ立つ状態)が出てしまうタイヤの状況では、僕らにやれることはそんなに多くはなかった。だから最後尾から追い上げて、最後は雨が降ってきた時に正しい決断をできてよかった」

 タイヤのグレイニングが収まればグリップが回復し、アロンソを抜いて6位でフィニッシュできたかもしれない。だが、優勝争いをするハミルトンとの差は大きく広がるはずだった。

 しかし、急に降り出した雨によって、フェルスタッペンはハミルトンより1周早く動き、インターミディエイトに履き替えて一気にポジションを上げた。後方からの追い抜きのために誰よりも薄いリアウイングを装着していたにもかかわらず、濡れた路面での速さはピカイチだった。

「(ドライとインターミディエイトの)クロスオーバーにある時、我々は常にドライバーのコールに委ねている。どれだけのグリップを感じているのか、コンディションがどのような状態なのか、ドライバーが最もよくわかっているからね。

 ドライバーが、インターミディエイトが必要だと感じたところで交換する。クロスオーバーはドライバー次第で、今日のマックスは正しい決断を下した」(クリスチャン・ホーナー代表)

 すべてがうまくいったとしても、ドライコンディションのレースでは5位が最大限、いうのがレッドブルのレース前予測だった。しかし、雨を味方につけたことで2位を掴み獲り、フェルスタッペンはハミルトンのわずか2点差にとどまることができた。

「最後尾スタートから2位まで挽回できたのは本当によかった。オーバーテイクはかなり難しかったし、DRSトレインにスタックしてしまうと(乱流の影響で)簡単にタイヤを傷めてしまうので、決してイージーなレースではなかった、だけど幸運なことに、最後に雨が僕らのジャンプアップを助けてくれた。

 ペナルティを消化したにもかかわらず(ハミルトンに対して)たったひとつポジションを失っただけだから、間違いなく悪くない結果だったね。今朝の段階ではこんな結果になるなんて、まったく想像もしていなかったよ」

 路面が乾いていく予選で速さを見せ、レースでも大半をリードしたのはノリスだった。しかし、突然の雨に巧みな対処をしてみせたのはハミルトンやフェルスタッペンといったトップドライバーたちであり、総合力で一枚も二枚も上手であることを見せつけた。大荒れの展開のなかで上位に食い込んだ顔ぶれを見ても、ドライバーの腕と経験がモノを言ったことは間違いなかった。

 ルーキーの角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)にとっては、極めて厳しいロシアGPとなった。

 金曜はステップバイステップのアプローチで、同僚ピエール・ガスリーとの差を意識しすぎることなく習熟に集中した。だが、モンツァとは真逆のダウンフォースを削る方向性のセットアップではマシン挙動が定まらず、ガスリーでさえ「速いけど走りにくい」と手を焼くほどだった。

 雨の予選では新品タイヤに交換するタイミングをうまく判断し、ガスリーに次ぐ13位。しかし金曜からのセットアップ変更を土曜のドライコンディションで確認できないまま臨んだ決勝スタートでは、リアの不安定さに自信を持ってドライブすることができず、1周目に次々と抜かれて最後尾まで落ちてしまった。

 ハースのニキータ・マゼピンを先頭とするDRSトレインの4台目で抜け出せず、中団グループからは大きく遅れてしまった。ただ、早めのピットストップでこれをクリアしたあとは、中団グループと同等かそれ以上のペースで走れており、決して速さがなかったわけではない。

 その速さがあったからこそ、チームは大幅に後方ポジションにいて失うもののない角田には、ソフトタイヤに賭けるギャンブルを採らせた。

 雨脚が強まったために失敗に終わったが、もし2、3周で雨が止んで予選Q3のように路面が急速に乾いていけば、ひとりだけ圧倒的なペースで走って大きくポジションを上げた可能性もあった。逆にいえば、そうでもしなければ入賞のチャンスはなかったのだから、ギャンブルをする価値はあった。




「今週末ずっと苦しんできたマシンバランスの問題が今日も続きました。1周目からかなりマシンバランスに苦しんでいて、コース上にとどまるのも厳しいくらいでした。それがレースの間ずっと続き、ペースもまったくよくありませんでした。しっかり分析する必要があると思います」

 3日間の中で一度も浮上のきっかけを掴むことができずにレースを終えた角田は、ガックリと肩を落とした。

 だが、見た目の結果ではなく、実質に目を向ければそんな必要はない。シーズン後半戦に入って新たなアプローチに切り替えてから、天候不順やトラブルなど外的要因で一度も3日間をスムーズに過ごすことができていないため、結果につながっていないだけだ。いずれその時はやって来るはず。

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