◆ 支配下時代の「00」を背負って「中堅」の守備にも
国指定の難病「両側特発性大腿骨頭壊死症」からの復活を目指していたものの病状が悪化、現役引退を表明したオリックスの西浦颯大(22)の引退試合が28日、オセアンBSでのウエスタン・リーグ、広島戦で行われた。
試合開始の約30分前、西浦は右脇に松葉杖を支えてベンチへ。途中、ネット越しに登場を待つファンに左手を挙げて応えた。
西浦の出番は、9回表に回ってきた。この回の先頭打者・永井敦士を迎える場面で慣れ親しんだ「中堅」の守備位置で出場。今季から替わった育成の「125番」ではなく、支配下時代の「00」のユニホーム姿で、やや左脚を引きずりながら、ゆっくりと中堅へ。一軍で活躍し、グラウンドで輝いていた姿で現役最後のプレーを終えさせてやりたいという球団の思いに、相手の広島も応え実現した。
西浦は、永井への1球だけで交代。左翼・中川圭太と右翼・田城飛翔にエスコートされ、西野真弘や大下誠一郎ら内野手が待つ一塁付近へ。そこに広島の高卒4年目の同期、中村奨成が三塁ベンチから駆けつけて花束を贈呈。一塁側から入団4年目の同期、西村凌が花束を贈る場面では、抱き合い西浦が涙する場面もあった。
試合は、2-6でオリックスが敗れ、西浦の最終戦で有終の美を飾れなかったが、試合後、整列した選手を代表して西浦が約240人の観客に「ありがとうございました」と一礼し、4年間のプロ生活に幕を下ろした。
西浦は試合後の代表取材に、「10カ月野球をしていなかったので、心はついていくが、体はついてこなかった。(イニング間の)練習のボールを受けた時は久しぶりで怖かったが、めちゃくちゃ楽しかった。ギリギリまで泣かないと思っていたけど、守備につくと自分のファインプレーが蘇り、涙が込み上げた」と、試合を振り返った。
引退を決断したのは8月初旬。「打席に立ちたいと、本当はダメだったティー打撃を始めたが、左脚は最初から重症で、なかなか良くならず、痛みもあり、医者から厳しいと言われて即決した。オレなら(この病気からの復活は)いけそうだと思ったが、やっぱり無理でした」と、予想以上に左脚の回復が思わしくなかったことが引退を決断させた。
優勝争いを繰り広げる一軍の試合は、テレビで観戦。9月25日の楽天戦(京セラドーム大阪)で、親しい宗佑磨が試合前の声出しで西浦の引退に触れ、その試合で先制本塁打を放ち、お立ち台でも西浦の話をしたことについては「うるっときた。やってくれるな、アイツと思った」と、感謝の言葉を口にした。
翌26日の楽天戦に、ユニホーム姿で駆けつけ、試合前の円陣で声出しを担当したが、当日の午前9時30分ごろにマネジャーを通じて中嶋聡監督から「今から来いよ」と、電話で誘われたことを明かした。
将来のことは「未定」としたが、「野球には携わっていきたいと思う」と西浦。将来の夢は「僕の夢はずっと、野球選手になること。現実的には無理だが、心の中で夢は、ずっと野球選手」と言い切った。
明徳義塾高時代の恩師、馬淵史郎監督は「球場に行ってやりたかったが、都合がつかず本人とは電話で話した。将来を嘱望されていただけに、もっと野球をさせてやりたかった。脚が売りの選手だけに、脚を使えなくなるのは本当にかわいそうだった。まだ22歳、故障をして引退したからこそ、今があると将来、思える人生を送ってほしい」とエールを送った。
取材・文=北野正樹(きたの・まさき)
【動画】西浦が引退試合で最後の守備へ
【ファーム 西浦選手引退試合 】
背番号『00』オリックス・西浦選手、最後の守備へ。#西浦颯大 #Bs2021 @Orix_Buffaloes @nishiura_hayato
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