「こども食堂」政策化より新総裁に求めたいもの 社会活動家・湯浅誠が語る

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2021年09月29日 08:00  AERA dot.

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写真湯浅誠(ゆあさ・まこと)/認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。ホームレス支援のほか、内閣府参与を務めた経験もある
湯浅誠(ゆあさ・まこと)/認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。ホームレス支援のほか、内閣府参与を務めた経験もある
 ホームレスやこども食堂の支援など、長年にわたり貧困問題に向き合ってきた社会活動家の湯浅誠さん。安倍・菅政権をどう評価し、新総裁に何を求めるのか。AERA 2021年10月4日号で語った。


【写真】岐阜市の支部会合でリモートであいさつする野田氏
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 1990年代から貧困の問題に関わってきた私から見て、安倍・菅政権の9年間は決して悪くなかったと思います。相対的貧困率は安倍政権下の2015年から下がってきていますし、最低賃金は上がり、大学無償化法も低所得世帯など一部対象ですが成立しました。


 菅義偉さんも、安倍晋三さんから引き継いだ「1億総活躍社会」を裏支えするためにも必須な「孤独・孤立対策」に取り組みました。当初は「まずは自助」発言で批判もされましたが、コロナ禍での自殺も増えるなど同対策の重要性がさらに増す中、発言を結果的に修正しました。いずれの対策も2人が本当にやりたかったのかはともかく、貧困問題への社会意識の高まりを受けて、結果は出したわけです。


 ただ、総理総裁は国民から話しぶりも含めて見られる存在。とくに菅さんは会見などでプロンプターを「読んでいる感」が出て、貧困対策を「心からやりたい」という思いが国民に伝わりにくかった。「語り力」の力強さは、総理総裁になる人にとって重要な要素だと思います。


 総裁選に立候補している4人のうち、貧困問題で言えば、私の主張に近い内容を話しているのは、格差是正を掲げる岸田文雄さんや、虐待・貧困に対応する「こどもまんなか社会」に言及する野田聖子さんでしょうか。


 ただ、実際に総理総裁になって実現できるかはガバナンスの問題が大きく影響します。民主党政権で、鳩山由紀夫さんは子どもの貧困問題に熱心でしたが「子どもの貧困対策法」を通せず、通したのは鳩山さんほど関心がなかったかもしれない安倍さんの政権です。個人として持つ主張と、総理総裁としてできることは一緒ではないでしょう。


 私のような実践者としては、誰が総理総裁になっても聞く耳を持ってくれるよう働きかけていきますし、一生懸命説明して訴えます。新総裁には貧困対策や孤独・孤立対策をきちんと進め、かつ深めていただく。そこに総裁ご本人の気持ちも乗れば、さらにウェルカムです。




 いま私が支援している「こども食堂」は、貧困問題や福祉の枠を超えた多世代交流の場として、民間ベースで機能し始めています。政治家の中には「第2学童保育の位置づけで政策化を」と提案してくださる方がいますが、それでは子どもと高齢者の交流ができなくなって、こども食堂の可能性を狭めてしまうので、「その方向での政策化は求めていません」と伝えています。


 求めたいのは、今年の「骨太の方針」で示された「人と人のつながりを実感できる包摂的な社会」を具体化する政策・予算、具体的には多世代交流拠点の全国での設置を地方創生の目玉として位置付けてほしい、ということ。安倍・菅政権では道半ばに終わった課題でもあります。


 例えば東京都が「『未来の東京』戦略ビジョン」で、「誰もが集い、支え合う居場所・コミュニティが至る所に存在する東京」を2040年代までに目指すとしています。このようなことに対し、「地方を活性化するソフトインフラとしての交付金」を創出し、国として後押しする。新総裁にはぜひ実現してほしいですね。


(構成/編集部・小長光哲郎)

※AERA 2021年10月4日号


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