紙ドライバーFのへなちょこ試乗日記 第1回 運転初心者に新型「ランクル」は無謀か?

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2021年09月29日 12:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
トヨタ「ランドクルーザー」やメルセデス・ベンツ「Gクラス」のような巨大なクルマを“ころがして”いる人たちには常々、畏敬の念を抱いていた。煙を巻き上げて砂漠を疾走するならいざ知らず、東京のように込み入った道路が多い街で、あんなに大きなクルマを正確に操作し、交通の妨げにならないように暮らしていくなど、自分には考えられなかったからだ。



ただ、新しいランクルが納車まで2年待ちの人気と聞くと、一度は乗ってみたいという気持ちにもなる。このクルマの何が多くの人を引きつけるのか。それを探るため、ペーパー(紙)ドライバーが足掛け4日間をランクルと共に過ごしてみた。


○大きさにも慣れてくるから不思議



まずは「GR SPORT」というグレードのガソリンエンジン車に乗ってみる。というか、乗り込む。車高が高くて座る位置も高いので、ステップに足をかけ、クルマに登って乗り込むというイメージだ。


運転し始めて最初に思ったのは、とにかく目線が高いということ。ちょっとしたトラックであれば、信号待ちで並んだときに運転手さんと目の高さが同じくらいになる。


横幅も2m近いので普通ではない。同じトヨタ車の「RAV4」と比べると、10数センチは幅が広い。なので、クルマの左側が車線の中に収まっているかが、けっこう気になる。乗り始めたころは左側の障害物を避けて通るたび、運転席で伸びあがるようにして左前方を確認した。



そんなサイズ感にも慣れてくるから不思議だ。だんだん、自分の大きさが飲み込めてくる感覚がある。これにはおそらく、ボンネットの形状も関係しているはず。中央が縦に深く凹んでいて、両側が盛り上がっているからフタコブラクダを横にしたような感じなのだが、左側のコブが車体左側の位置をつかむための目印になる。全体的に四角いボディもサイズ感をつかみやすい。ただ、自宅付近のコインパーキングはギチギチだった。


○「クルーザー」の看板に偽りなし



2.5トンを超える重量物であるにも関わらず、よく走るのには驚いた(ちなみに、先代モデルよりは200キロくらい軽くなっている)。たぶん、速いといっていいと思う。軽やかに素早く動くわけではないが、ぐぐっと伸びていく。かといって、走り出しに重々しさは感じない。安いグレードも同じエンジンを積んでいるから、値段によって走りに大きな違いがあるわけではなさそうだ。

乗り心地は、ちょっと揺れているように感じた。「ガタガタ」とか「グラグラ」ではなく、とてもゆっくりと、前後左右に「ユッサユッサ」とくる。これが心地いいか気持ち悪いかは人によりそう。クルマに詳しい何人かに聞いてみると、この乗り味はランクルらしさでもあるとのことだった。ちなみに、「GR SPORT」では「ECO」「COMFORT」「NORMAL」「SPORT S」「SPORT S+」「CUSTOM」の6つからドライブモードを選べるが、COMFORTが最も揺れて、SPORT S+が最も揺れなかった。とはいえ、全く揺れないわけではない。


この後、3.3LのV6ツインターボディーゼルエンジンを搭載する「ZX」グレードにも乗ったのだが、ガソリンとディーゼルで、どちらかがはっきりと力強いとか、速いとかいったような印象は受けなかった。どちらもよく走るので、不満なしだ。ディーゼルは「ドロロロ!」という勇ましい音がするから、いかにもデカくてパワーのあるクルマに乗っている感じがして楽しかった。


今回、試乗した2台のクルマはトヨタに貸してもらったのだが、驚いたのは「盗難防止グッズ」も一緒に手渡されたこと。新型ランクルには指紋を登録して盗難を防ぐ機能が付いているとは聞いていたのだが、さすがに借りたクルマに指紋を登録するのはまずい気がしたので、このグッズが意外にありがたかった。いろんなメーカーにクルマを借りてきたが、盗難防止グッズが積んであったことはこれまでにない。ランクルが盗まれやすいのは紛れもない事実のようだから、買うなら何らかのケアは心掛けたいところだ。


ガソリンとディーゼルを1泊ずつ、計4日間の試乗では、千葉の袖ケ浦に行ったり、相模湖の近くまで行ったり、練馬区や荒川区などの狭い道を通ったりと、さまざまな道路事情でランクルを運転することができた。最初はあまりの大きさに恐る恐る走らせていたのだが、だんだん慣れてくると、ゆったりとした気分になってきたのは自分でも不思議だった。



例えば、普通のクルマであれば2台が難なくすれ違えるシーンであったとしても、ランクルではスルッと通り抜けられない場合がある。左側に障害物があったりサイクリストがいたりすると、右にふくらんで避けて通るのにかなり気を遣う必要もある。であるにも関わらず、「ランクルに乗っていると神経がすり減って、降りる頃にはヘトヘトだった」と報告する気には全くならないのだ。



大きなクルマで街を走れば、いくらか周囲にご迷惑はかけてしまうかもしれない。それは全く申し訳のない次第なのだが、かといって、急いでも通り抜けられない場所は通り抜けられないので、「どーも、すいません」と頭に手をやりつつ(実際はハンドルから手を離さず、あくまで心の中でだが)、落ち着いて運転をしていくしかない。そうこうしているうちに、なんだか鷹揚な気分になってくる。



ユッサユッサと揺られながら、ゆったりとした気持ちで乗る。その名の通り、ランドクルーザーは陸のクルーザーなのだ。クルーザーに乗船したことはないが、おそらく、香港とマカオを結ぶ船のように、白波を巻き上げてぶっ飛ばすような航海(もっとも、香港〜マカオ間は一往復しただけなので、そんな船ばかりではないのかもしれないが)はこうした船にふさわしくないし、実際にしてもいないはず。日本でランクルに乗る場合も、土煙を巻き上げて爆走できる場所など探しても見つからないのだから、悠々とした気分で乗るに越したことはないのだ。


ランドクルーザーは、慌てず騒がず乗るクルマ。4日間を共に過ごした印象は、そんな感じだった。



紙ドライバーF かみどらいばーえふ 生活するには自動車が必須な北陸の某県で生まれ育ちながら、運転免許証の取得後は都会暮らしとなったため、これまでに一度も自家用車を所有したことのないペーパー(紙)ドライバー。すでにマニュアルトランスミッションの操作方法もおぼつかないが、ひょんなことから自動車業界を取材することとなった。 この著者の記事一覧はこちら(紙ドライバーF)
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