BABYMETALプロデューサーKOBAMETALに直撃 改めて「BABYMETALはメタルか否か」を考える

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2021年09月29日 12:25  AERA dot.

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写真KOBAMETAL Photo by Susumu Miyawaki(PROGRESS-M)
KOBAMETAL Photo by Susumu Miyawaki(PROGRESS-M)
世界的人気を誇るメタルダンス・ユニット「BABYMETAL」のプロデューサーであり、作詞家、作曲家でもあるKOBAMETALが二作目となるエッセーを出版した。その名も『鋼鉄(メタル)っぽいのが好き−人生9割メタルで解決−』(KADOKAWA)。自身の“メタル愛”をこれでもかと書き連ね、人生において“メタル”がいかに重要かを説く異色のエッセーだ。そんなKOBAMETALに、改めてメタルとは何か、BABYMETALとはどんな存在なのかを聞いた。


【写真】BABYMETALのライブショトはこちら
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 KOBAMETALの著書『鋼鉄(メタル)っぽいのが好き』では、メタルを森羅万象さまざまな事柄と結び付け、その共通点や親和性の高さが指摘される。ドラえもん、紅白歌合戦、料理、プロレス、水戸黄門、新庄剛志、SDGsなどなど……。一見ふざけているようにもみえるが、その内容はいたって真面目。「怖そう」「うるさい」など、世間では一面的なイメージで捉えられているヘヴィメタルが、実は多様性に富んでいて形を変えながら世界中で広まってきたこと、また「メタル的」な生き方がいかに人生を豊かにするのかを、切々と書いているのだ。まさにKOBAMETALの“メタル愛”があふれた一冊なのだが、彼はBABYMETALのプロデューサーという立場ゆえ、これまで個人的なことはあまり語られなかった。


 まずは、KOBAMETALとメタルとの出会いから聞いてみた。


――初めてメタルに触れたのは、中学生の頃に聖飢魔IIを聞いたことだと書かれています。この後、どうやって“メタル少年”へと成長していったのでしょうか。


 聖飢魔IIを初めて見たときは衝撃で、すぐに近所のレコード店に走って、第二大教典『THE END OF THE CENTURY』のカッセットテープを買いました。テープが伸び伸びになるまで聞き込んだので、第二大教典の8曲は今でも脳に刷り込まれています。ただメタルファンからすると、聖飢魔IIは“異端”の存在だと思います。だからワタクシ自身、メタルはこうあらねばならぬ、みたいな考えにはなりませんでした。1960〜70年代の名盤から、新しめのデジタル系のメタルまで何でも聞いていました。




 メタルのバンドを組んでいましたが、メタル以外の音楽も好んでいたので、さまざまな音楽に触れていました。ただ、いろんな音楽を聴く中でも、一貫して好きだったのがヘヴィメタルで、それは大人になった今でも変わらないということです。


――そこからBABYMETALという大プロジェクトを率いることになるわけですが、もともと、仕事としてメタルに携わりたいという思いはあったのでしょうか。


 1日24時間という限られた時間の中で、どうしたらモチベーション高く仕事に臨めるかを考えたときに、やはり一番自信が持てる音楽に携わりたいという思いはありました。そういう意味で、選択肢としてメタルがあったことは確かです。


――BABYMETALが結成されたのは2011年ですが、その時からメタルとダンスを融合させた「BABYMETAL」という形は見えていたのでしょうか。


 当時は大所帯の女性グループが隆盛で“バブル”ともいえる状態でした。いくら時流に乗っても、そこから一歩抜け出さないとすぐに消えてしまう。ワタクシが構想していた「メタル×ダンス」というスタイルはなかったので、チャンスはあるかなと思っていました。これはいけると確信できたのは「BABYMETAL」という名前が降りてきたときです。そこからメンバー、スタッフがモチベーションを高く持ち、チームとして一丸となって動けたことが飛躍につながったと思います。


――本では「メタル的」なマインドを持った生き方についても紙幅が割かれています。ドラえもんから元プロ野球選手まで多岐にわたってメタルとの共通項を挙げていますが、普段からこうした視点は意識しているのでしょうか。


 BABYMETALというアーティストの成り立ちもそうですが、既存の枠組みや常識から一歩抜け出さないと、発展や進化はありません。ヘヴィメタルという音楽ジャンルは、古き良き伝統を大事にする“メタル・エリート”と呼ばれる人たちが多い分野でもあります。ワタクシは「メタルSDGs」と称しているのですが、時代の流行に流されずに、世界各国それぞれの地域で独自のメタルが生まれて、そのコミュニティーでミュージシャンもファンもメタルを循環させていく仕組みがあります。だからこそ、世界中で一定の市場が残ってきたというメリットがありました。




 しかし一方で、膠着した市場はゆるやかに衰退していきます。ヘヴィメタルも例外ではなく、レジェンド的なアーティストほど「変えるべきもの」と「変えてはいけないもの」がわかっている。世界各国でその形を柔軟に変えて発展してきたように、メタルは硬いようにみえて、実は柔らかい。その思考は、日々の仕事や生活の知恵にもなる“普遍性”があるのではと思いました。今こそ、伝統を継承しながらも柔軟に形を変える「メタル的思考」を見直してみよう、というのが本書の趣旨です。


――そういう意味で、BABYMETALはKOBAMETALさんの思考を具現化して、新しい市場を開拓してきたように思います。10周年を迎えた今、BABYMETALは世界で活躍できるアーティストへと成長しました。この間、変えずにこだわってきた“コア”はどこだったのでしょうか。


 シンプルに言えば「ブレない心」と「自分たちを信じる力」です。いかにオンリーワンであり続けるか、自分たちのオリジナリティーに自信を持ってユニークな存在でいられるか、それにこだわってきました。


 もともと、一般的なメタルのバンドをやりたくてBABYMETALを始めたわけではありません。いかに速く曲を弾けるか、激しく叩けるか、を追及してきたわけでもない。「メタル×ダンス」というコンセプトで、新しい音楽の形をつくっていくことが目的なので、そこは絶対にブレてはいけない部分でした。


 テクノロジーの進化とともに、ミュージシャンのパフォーマンスも日々変化しています。楽器や機材の進化によって、ステージパフォーマンスも従来のライブというスタイルに加えて配信のような新しいスタイルも登場しました。特にメタルというジャンルはデジタルとの相性が良いと感じています。そのような進化とともに変化していくことはメタルにとってもBABYMETALにとっても必要だと考えています。


――メジャーデビューして知名度が上がるにつれて、一部のメタルファンから「BABYMETALはメタルなのか」という論争も巻き起こりました。まさにメタル・エリートの人たちを中心に起こった議論だと思いますが、サウンドがメタルかどうかということに縛られず、「メタル的」な思考を体現しているという意味で、BABYMETALはメタルである、と言えるのではないでしょうか。



 BABYMETALをメタルとするかどうかは、受け手次第だと思います。BABYMETALのファンの方の裾野はすごく広い。もちろんメタル好きもいますが、アイドル、アニメが好きな人、ダンスやファッションが好きでファンになった方もいる。メンバーや音楽そのものではなく、コンセプトや世界観が好きという人もいます。つまり、BABYMETALのどこに“刺さって”いるのかは本当にさまざまなんです。楽曲も、様式美を感じるオーセンティックなメタルの曲から、ヒップホップを絡めたダンスミュージックまでいろいろとある。なので、一部を切り取って「(サウンドが)メタルかどうか」を議論することには、あまり意味は感じません。


――BABYMETALは今後のライブ活動を「封印」すると宣言されました。10周年というタイミングで「区切り」としたのは、何か意味があるのでしょうか。


 2020年1月に幕張メッセで「LEGEND − METAL GALAXY」という3rdアルバムの集大成的なライブをやった際に、エンディングで次回は「METAL RESISTANCE 最終章」と告知していました。それゆえ、急に決まったことではありませんし、コロナ禍だからという理由でもありません。海外ドラマの「シーズン1」とか「シーズン2」のように、「10」という数字的なキリの良さもあり。BABYMETALは何かにつけて数字に引っ掛けることが多いので(笑)。いろいろな受け取り方があるとは思いますが、今回は世の中の状況も踏まえて、今後ライブの予定が無いということをあえてアナウンスした形ですね。先のことは決まっているわけではありませんし、まさに「ONLY THE FOX GOD KNOWS(キツネ様のみぞ知る)」です。


――BABYMETALは国内ではアリーナクラスの会場をいつも即完売させ、NHK紅白歌合戦にも出場しました。海外ツアーでも外国人をきちんと集客できる数少ないアーティストであり、日本でトップクラスの存在になりました。ここまでの成功を収めたことをプロデューサーとしてどう感じていますか。


 何を持って「成功」とするかは人それぞれですが、単純に、すごく幸せです。BABYMETALを始めたころから、ワタクシにはビジョンマップみたいなものがあって、実現させたいことをメモのように書き込んでいました。それを一つ一つ達成していった、その積み重ねが今につながっていると思います。BABYMETALは、メンバー、スタッフ、ファンの方が全員でつくってきたプロジェクトです。何かひとつでも欠けていれば、また違ったものになっていたかもしれません。この10年、さまざまな国で、いろいろなアーティストの方たちと一緒に、得がたい経験をすることができました。これもBABYMETALというチームがブレずに、自信を持って活動してきた結果だと思います。それこそ、ワタクシが追い求めてきた“メタル道”です。その精神はこれからも貫いていきたいですね。(構成=AERA dot.編集部・作田裕史)


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