「赤ちゃん学」の第一人者が残した数万字のメッセージ 子育てにゆとりを 病床で書いたメモを書籍化

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2021年10月16日 07:00  ウィズニュース

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写真「子どもはこう育つ!」(小西行郎・小西薫共著 赤ちゃんとママ社 イラスト…齊藤恵)より
「子どもはこう育つ!」(小西行郎・小西薫共著 赤ちゃんとママ社 イラスト…齊藤恵)より

小児科医で赤ちゃん学研究センター長だった小西行郎さん(享年71歳)は、闘病中、病室で子育て世代へ伝えたいメッセージを残していました。数万字にもなったメモを、小西さんの妻で共に乳幼児の研究をしてきた小児科・小児神経科医の小西薫さんが書籍にまとめました。「子育てにゆとりを」と言い続けた行郎さんが伝えたかったことは?薫さんに聞きました。


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クスッと笑って、心にゆとりを
赤ちゃん学研究センター・前センター長の小西行郎さんが生前に伝えたいメッセージを、妻で小児神経科医の薫さんと共にまとめた著書「子どもはこう育つ!」が昨年発売されました。

子どもに寄り添った視点で、胎児〜6歳までの子どもの成長を分かりやすく解説する育児本です。

本は、1項目ごとに見開き2ページで、イラストやマンガが添えられ、分かりやすく解説しています。

薫さんは「子育てで煮詰まったら、この本を開いて見ることで、クスっと笑ってもらいたい。子育ての楽しいところが見える本です」と話します。

子育て世代が子どもの成長のメカニズムをあらかじめ知ることによって、子どもの行動や言動を見通して、心にゆとりを持ってもらいたいという思いを込めたそうです。

数万字に込めたメッセージ
「子どもはこう育つ!」は、小西行郎さんが病床で、妻の薫さんとともに書き残した膨大なメモをまとめたものです。

行郎さんは、2019年に白血病で入院してから病室にパソコンを持ち込んで、伝えきれていない子育て論のメモを打ち込みました。起き上がるのが難しくなってからは、言葉で吹き込んで文章化される機器を使い作業を続けました。

薫さんも、時間を見つけては寄り添い、一緒に議論しました。残されたメモは何万字にも渡ったといいます。

薫さんは「多くのことは語りませんでしたが、熱意を持って書き残していました」と振り返ります。

子どもを理解する「赤ちゃん学」から
本では常に「子どもの目線に立って」ということが強調されています。その原点は、行郎さんが第一人者でもある「赤ちゃん学」から生まれたものでした。

小西さんは1990年、オランダの大学に留学し、発達行動学を学びました。それまでは、子どもの脳の発達について大人の脳の研究から推測していたそうです。小西さんは海外に出たことで、ロボット知能などの工学的視点や、人間の発達の原点とつながる霊長類の研究と連携など、赤ちゃんを多角的な視点から理解することの大切さを学ぶことができたといいます。

行郎さんは、2001年、「日本赤ちゃん学会」を設立。第一人者として、臨床や保育の現場と連携しながら、子どもの発達の謎について研究を続けてきました。
行郎さんと二人三脚で、小児神経科医として、臨床に携わってきた薫さんは、「たとえば、寝ている赤ちゃんがばたばた動いているにも、意味があります。大人の教科書通りに子どもの成長を決めつけるのではなくて、子どもを観察して、その理由を解明することが大切なのです」と話します。

子どもの能力を信じて
子育て中は、どうしても焦って子どもに「教えなければ」と色々と世話を焼いてしまいがちです。

薫さんは「赤ちゃんはまっさらな状態」と考えない方がいいと強調します。

「そうではなくて、子どもは元々能力を持っていて、それを出せるように、手助けをしてあげる、というスタンスで向き合うことをすすめます」


【コミュニケーションは赤ちゃんから】(P62,63)
赤ちゃんはゆっくりと静かに、自分のペースで認識を深めていくのです。大人の思い込みや思いつきで、一方的に働きかけるのは考えものです。
まずは、赤ちゃんからのサインがコミュニケーションの始まりと心得て、赤ちゃんに応えていきましょう。

【子ども同士で育ち合う】(P142,143)
子どもを信頼し、子ども同士のつきあいに任せることも必要だと思います。わんぱくな子どもたちの姿を見せてほしいものです。

【役割を果たす「ごっこ遊び」】(P152,153)
あれこれ自由にイメージできる時間が、子どもには必要です。ひとりで思いをめぐらせているようすが見られたら、できるだけ、そっとしておきましょう。

【覚悟と自信が必要な親家業】(P174,175)
私たちは、親になったら覚悟が必要だと思っています。子どもという一人の人間の登場です。当然、今までどおりの生活を続けることはできませんし、子どもは親の思いどおりにはなりません。(中略)
一方で、子どものために親である自分の人生を、犠牲にすることはないとも思います。なにかに向かって自信をもって生きている姿を子どもに見せることは、親が子どもにできる、最高の教育ではないでしょうか。

子どもに寄り添った あだ名は「カバさん」
「小西(行郎さん)は診察中、保護者に厳しく言うこともありましたが、それは子どもを第一に、と考えているからこそでした」

そんな行郎さんは、子どもの発達の診断では、「お医者さんだ」と怖がらせないよう、白衣は着ずに接したそうです。

「子どもとじゃれたりするのが好きで『カバさん』と子どもたちから言われていました」

薫さんは、行郎さんの意志を引き継ぎ、2人で一緒に設立した香川県のクリニックで、臨床の場で小児科医・小児神経科医として活動し、子育てのアドバイスをしています。

子育て中の記者も、子育てで不安になることはままあります。そのようなときに、行郎さん、薫さんのメッセージがつまったページを開いてみると「肩の力を抜いていいよ」と背中を押してもらえるような気がします。

     ◇
小西行郎(こにし・ゆくお)さん:元・同志社大学赤ちゃん学研究センター長、教授。小児科医。日本赤ちゃん学会理事長。 専門は小児神経、発達神経科学。1947年生まれ、享年2019年。京都大学医学部卒業。 主な著書に「赤ちゃんと脳科学」(集英社新書)、「赤ちゃんのしぐさBOOK」(共著、海竜社)、「はじまりは赤ちゃんから」(赤ちゃんとママ社)、「発達障害の子どもを理解する」(集英社新書)、「今なぜ発達行動学なのか―胎児期からの行動メカニズム」(診断と治療社)など。

     ◇
小西薫(こにし・かおる)さん: 小児科医・小児神経専門医。2010年〜小児科・発達支援の「すくすくクリニックこにし」院長(香川県木田郡三木町)。専門領域は、小児神経学、小児発達神経学、小児保健学、障害児教育、育児学。児童発達支援・放課後デーサービスや病児・病後児保育も手がける。1948年2月京都市生まれ。大阪医科大学卒業。夫で同志社大学赤ちゃん学研究センター・前センター長の小西行郎氏と三男一女を育てた。

     ◇
赤ちゃん学: 小児科学、発達認知心理学、発達神経学、脳科学、ロボット工学、物理学、教育学、霊長類学などの異分野研究の融合による新しい学問領域。赤ちゃんの運動・認知・言語および社会性の発達とその障害のメカニズムの解明から、ヒトの心の発達までを対象とする。2001年には「日本赤ちゃん学会」が設立。08年に同志社大学内に開所した赤ちゃん学研究センターは、16年に文部科学省の共同利用・共同研究拠点「赤ちゃん学研究拠点」として認定された。


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