欧州からのJリーグ復帰組を査定。誰が一番チームに貢献しているか

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2021年10月16日 11:21  webスポルティーバ

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Jリーグクライマックス2021

欧州→J復帰組の現在(前編) 後編を読む>>

「欧州帰り」――その響きは今も甘美である。世界サッカーの最前線で助っ人として活躍。その経験を積み重ねての日本へ凱旋だ。

 当然、周囲の注目を集めることになるが、期待に応えるのは容易ではない。
 リーグのレベルの上下はあるとしても、欧州でプレーしていた選手たちにとっては、日本のJリーグもすでに"異国"で、新たに適応しなければならない。また、「活躍して当たり前」という目に見えない重圧を一身に受けることになる。それはメディアやファンだけでなく、クラブ関係者や味方選手からも、だ。

 大迫勇也、武藤嘉紀(ともにヴィッセル神戸)、酒井宏樹(浦和レッズ)、宮市亮(横浜F・マリノス)、乾貴士(セレッソ大阪)、安西幸輝(鹿島アントラーズ)、そして長友佑都(FC東京)という選手たちが、この夏、こぞって帰国した。いずれも有力選手であり、代表経験もある。Jリーグでも輝かしい活躍が望まれるわけだが......。

 欧州帰国組のここまでを"査定"してみた。




〇大迫勇也(ブレーメン/ドイツ→ヴィッセル神戸)

 大迫は、ロシアW杯の前後から「日本を代表するセンターフォワード」の座を譲っていない。そのポストワークは出色。サイドやトップ下に得点力のある選手を生かす技術の高さやビジョンに特長があるだろう。

 しかし、昨シーズンはブンデスリーガで無得点に終わり、2部降格の戦犯のひとりにされた。ブレーメンでは、ストライカーというより中盤の選手のような起用も増加。与えられた役割を器用にこなしていたが、その結果、点取り屋の凄みはやや失っていた。

 帰国当初は、神戸でも苦しんだ。才能の片鱗は見せるものの、周囲とのコンビネーションが合っていなかった。アンドレス・イニエスタを中心に作られたチーム構造だけに、古橋亨梧(現セルティック)の代わりを求められてノッキング。足元でボールをもらおうと近づいてもパスは出てこず、裏を狙う動きを要求された。調整が必要だった。

 ただ、9月末の川崎フロンターレ戦では、イニエスタのロングパスを左サイドで引き出し、それを持ち込んで武藤に完璧なクロスを送ってアシストを記録した。周りと協調する力はもともと非凡で、プレーを重ねるたび、新たなスタイルも作り出しつつある。代表中断前の浦和戦では、酒井高徳のクロスに合わせて初ゴール。左に流れて、中央のイニエスタのゴールもアシストした。

 先日の日本代表のオーストラリア戦で負傷。復帰が待たれるが、フォワードとしての総合力の高さはJリーグで飛び抜けているだけに、長期的に見て、結果を出せるのではないか。

〇武藤嘉紀(エイバル/スペイン→ヴィッセル神戸)

 武藤は肉体的にも技術的にもポテンシャルが高い選手だ。サイドでもセンターフォワードでもプレーできる。献身的で、ユーティリティ性は武器と言えるだろう。

 2015年から3シーズン在籍したブンデスリーガ・マインツ時代は得点をコンスタントにとることでコンディションを上げ、信頼も得ていた。しかし、2018年にプレミアリーグ・ニューカッスルに移籍後はチームにフィットせず、リズムを失った。昨シーズンはエイバルに新天地を求めたが、定位置をつかめず、チームは2部降格の憂き目に遭っている。その結果、パス所有先のニューカッスルに契約を解除され、欧州挑戦は終わりを告げた。

 武藤の場合も、ゴールに関わる仕事ができるかどうかが成功のバロメーターになるだろう。神戸ではFWの選手が余剰なだけに右サイドでの起用が多くなっているが、チームの構造(と言うほどの組織としての形がない)と武藤自身のキャラクターかあいまって、はまり具合は悪くない。清水エスパルス戦、川崎戦と、大迫が左に流れてクロスを入れ、中に入った武藤が連続得点を記録。これは今後もひとつのパターンになるかもしれない。

 浦和戦ではイニエスタの右からのクロスをヘディングでゴールに流し込んでいる。イニエスタ次第のチームだけに、このホットラインを確立することが成功の架け橋になるだろう。個人能力で相手を凌駕しているだけに、相応の数字を望めるはずだ。

〇酒井宏樹(マルセイユ/フランス→浦和レッズ)

 帰国組のなかで、現状では最も賞賛に値する選手だろう。その貢献度は、厳しい日程のなかで戦っている(欧州のシーズン後、そのまま東京五輪に出場し、その後は日本代表にも帯同)とは思えない。新チームの戦術を理解しながら、自らのコンディションを調整し、早くもチームの核となりつつある。

 酒井が右サイドバックにいることで、右側の守備全体が安定し、それが左側の攻撃の円滑さも生み出している。確実に失点が減って、得点は増えた。チーム戦術を革新させつつあると言っていいほどだ。

<チームへの波及効果>という点では、特Aランクを与えられるだろう。デビュー戦となったサガン鳥栖戦からFC東京戦までの7試合、チームは6勝1分けで、失点はわずか2。直近の神戸戦こそ5−1と大敗したが、好転したのは明らかだ。

 そしてプレーひとつがスペクタクルでもある。裏に出されたボールに対し、カバーリングで見せる読みのよさとダイナミックさ、カウンターに入って攻め上がる迫力、空中戦で相手を跳ねのける猛々しさは、どれも必見。第30節FC東京戦(1−2で勝利)ではラインぎりぎりでボールを受けると、角度のないところから冷静に流し込んで同点ゴールを決めたが、攻守一体の集中力は世界標準だ。

 まるで大物外国人選手のような別格感を漂わせ、リーグアン・マルセイユで先発を張り続けてきただけのことはあると思わせる。
(つづく)

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