勝地涼「“一緒にやりたい”と思う人には、自分から積極的に声をかける。そうして生まれたのがこの岩松作品です」

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2021年10月17日 15:11  ダ・ヴィンチニュース

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写真勝地 涼さん
勝地 涼さん

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、10月から始まる舞台『いのち知らず』で主演を務める勝地涼。親友である加藤シゲアキの最新著書『オルタネート』を読んで感じた作風の変化、友人から受ける大きな刺激、そして敬愛する岩松了作品への出演についてたっぷりとお話をうかがいました。

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(取材・文=倉田モトキ 写真=干川 修)

「シゲ(加藤シゲアキ)がこの小説を書いている時もたまに会っていたんです。その後、完成した本を読んで驚きました。僕と同じ30代の時間を過ごしている中で、どうして彼はこんなにも瑞々しい青春小説を書けるんだろうって」

 勝地涼さんがおすすめ本として選んだのは、親友・加藤シゲアキの長編小説『オルタネート』。過去の作品もすべて読んでおり、その魅力について「すごく映像が浮かんでくるんです」と話す。

「登場人物たちを追いながら、“自分だとこう演じるかな”といったイメージが湧いてくる。表現者の視点でいろいろと考えさせてくれるんです。そこが大好きなんです」

 しかし、『オルタネート』を手にした時は、これまでと少し異なる気づきも生まれた。それは、文章の変化だ。

「表現が丸くなった気がしたんです。以前だと“俺はこう思っている”という主張が強かった気がするのですが、すごく柔らかくなったなあって。作中に登場する女子高生たちの心情もとても繊細で。“どうして10代の女の子の気持ちがここまでわかるの!?” と思いましたが、きっとそれは彼自身が学生時代に見てきた景色を切り取っているからなのかなって思いました」

 過去の経験を忘れることなく、自身の今の仕事につなげていく。「それは僕たちの仕事にとってすごく大事なことなんです」と勝地さん。

「役者も同じで。どれだけイメージしても、結局は実際に自分が見てきたものや、経験してきたことだけしか、自分の体から表現として出てこない。だからこそ忘れない努力をする必要があるんです。加藤先生の本はそのことも教えてくださるんです」

 また、加藤さんと交友を深める中で教わったことがもうひとつ。それは“インプット作業”の大切さ。

「どれだけ忙しくても、一日のスケジュールの中で何かしらの作品に触れる時間を作るようになりました。今は映画や舞台を観ることが多いのですが、できれば小説をもっと読みたくて。やはり、文章を通して頭の中で登場人物たちのキャラクター像を構築していく作業は、役者にとって大事だと思うんです。こうしたインプット作業をやり始めたのは、シゲと出会ってからなんです。彼は映画や小説、それにアニメ、マンガなどいろんなジャンルの作品を積極的に自分の中に落とし込むことをしている。それも、自分がこれまで関心を持っていなかったものまで触れるようにしている。そんな背中を見ていたら、すごく刺激を受けました」

 二人は同年代として、そして同じ表現者として切磋琢磨し合う存在だ。勝地さんはこんなエピソードも披露してくれた。

「まだ彼と知り合いになる前のことなんですが、NEWSが4人体制になるという発表があった日に、たまたま僕が出演していた舞台(『髑髏城の七人』/2011年)を観に来てくれていたそうなんです。そこで自分と同じ年代の役者たちがキラキラ芝居をしているのを目の当たりにし、泣きながら帰ったらしくて。その時、彼は“自分はこのままだとダメだ”と思い、身を削るように小説を書き始めた。だから以前の小説は少し尖った印象があるんだと思います。それが今、丸くなってきたのは、心に余裕が出てきたからなのかもしれない。それを思うと、面白いですよね。やっぱり人間が書いているんだなぁって感じられて」

 アイドル、役者、そして作家として活躍する加藤シゲアキを見て、「自分にしかできないことはなんだろうと考えるようになった」という勝地さん。まもなく公演が始まる舞台『いのち知らず』は、そんな思いが彼を突き動かして実現したのかもしれない。

「岩松了さんの作品が大好きで、2019年に初めて『空ばかり見ていた』で直接演出を受けたんです。そのとき、僕のほうから『僕と(仲野)太賀にホンを書いてください』とお願いしました。“この人と一緒にやりたい”と思った方には、自分から積極的に行かないとダメだと思って。生意気に思われるかもしれないという思いもありましたが、岩松さんは『………へぇ……面白いね』ってニンマリされてました (笑)」

 共演者には、自らリクエストした仲野太賀をはじめ、光石研、新名基浩、そして岩松了。そうそうたるメンバーが顔を揃えた。

「ある意味‟化け物“しか集まっていないので、ものすごく怖いです (笑)。しかも、自分が言いだした手前、緊張もしています。でもこれが、僕の役者人生のターニングポイントになるかもしれない。そんなワクワクした気持ちもあります」

 振り返ると、勝地さんの舞台デビュー作は岩松了脚本の『シブヤから遠く離れて』(2004年)だった。演出は、その後いく度となくとも芝居の面白さと厳しさを教えてくれた蜷川幸雄。

「蜷川さんも厳しい方でしたから、もし今その現場に行けといわれたらかなり辛いです(笑)。当時は初舞台で、何も知らなかったからまだよかったんでしょうね。初めて『シブヤから遠く離れて』の戯曲を読んだ時はさっぱり意味が分からなくて(笑)。“なんだ、これ?”と思いました。結局わからないままの部分もあったのですが、それでも役に入ると楽しいんです。稽古では緊張もしていましたけど、それ以上に役を演じられることが嬉しくって。岩松さんの戯曲には、セリフを口にしているとどんどん楽しくなっていく魅力があるんだなと、その時感じました」

 今回で2度目となる岩松演出については、「めちゃめちゃ怒られてもいいと思ってます」。

「一昨年はあまり怒られなかったんです。それがちょっと残念でした。蜷川さんにもたくさん怒られたので、また鍛えられたいなって思っているんです。そう言いながら、本当に怒られたら、ものすごくビビるんでしょうけど(笑)。また、役者としての岩松さんと共演するのは初めてなので、それも楽しみです。ただ、演出と役者を同時にするというのが、僕にはどのような感覚なのか想像もつかなくて。演出家として『お前、なんだその芝居は!』『もう一回やれ!』って役者に怒鳴りながらダメ出しをしたあとに、ご自身はどんな感じで芝居をされるのか……そんな瞬間がきたらちょっと面白そうですよね(笑)」

ヘアメイク:井草真理子(APREA) スタイリスト:上井大輔(demdem inc.) 衣装協力:パンツ2万3100円(ATTACHMENT/Sian PR ☎03-6662-5525)(税込)、その他スタイリスト私物

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