不良を描く「東京リベンジャーズ」で、「悪党」を体現する稀咲鉄太

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2021年10月17日 21:12  アニメ!アニメ!

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写真東京卍リベンジャーズ』(21)著者:和久井 健 /出版社:講談社
東京卍リベンジャーズ』(21)著者:和久井 健 /出版社:講談社
アニメやマンガ作品において、キャラクター人気や話題は、主人公サイドやヒーローに偏りがち。でも、「光」が明るく輝いて見えるのは「影」の存在があってこそ。
敵キャラにスポットを当てる「敵キャラ列伝 〜彼らの美学はどこにある?」第16弾は、『東京リベンジャーズ』より稀咲鉄太の魅力に迫ります。
『東京リベンジャーズ』は不良の物語だ。この作品のポイントは、不良という概念を、クズや悪党から切り離している点にある。

マイキーやドラケンたちは、中学生にもかかわらずヘルメットなしでバイクを乗り回していて、明らかに社会のルールを守っていない。しかし、情に厚く仲間想いで、人の道を踏み外さない。主人公の花垣武道を含め、主要な仲間たちはみな不良であるが、決して悪党ではない。

このように不良を悪党から分けて共感できるように描けるのは、悪党的なキャラクターと対比させているからだ。本作で悪党を代表するのが稀咲鉄太である。稀咲は、まちがいなく人の道を踏み外したキャラクターとして、本作で特異な位置を占めている。しかも、本人が踏み外しているだけでなく、他者に道を踏み外させるのが上手いキャラクターだ。

表には出ず、人を操り自らの野望を推し進めるフィクサー。稀咲という敵役が『東京リベンジャーズ』の中でどのような存在かを考えてみたい。

トップに立たないからこそ厄介な男
不良の世界では腕っぷしの強さが重要な意味を持つ(あくまでフィクションの世界では)。本作でも、もめごとはだいたい抗争によって決着をつける。強者だらけの中で、弱い武道は、それでも凄惨な現実(未来)を変えようと努力する。武道に立ちはだかる敵も、ほとんど腕っぷしの強い連中ばかりで、物語はそうした連中との殴り合いで進行していく。

だが、稀咲だけは主要キャラクターの中で殴り合いに参加することが極端に少ない。自分で手を下すこと自体が稀で、策略を張り巡らし、裏で糸を引くことに終始する。腕っぷしがモノを言う世界で、強さを誇示せず(実際彼は、そんなに強くない)、知略を巡らし暗躍する男だ。

腕っぷしが大事な不良の世界で、主人公の武道と敵役の稀咲だけがあまり強くない。だが、ともに人を動かすことに長けている。
武道は、真正面から強敵にぶつかっていき、何度やられても立ち上がる。その勇気が結果的に人を動かしていく。時に無謀とも思える武道の戦いがまぶしく感じられるのは、徹底して表に出ない稀咲のやり方が好対照をなしているからだ。

敵役として稀咲のユニークな点は、彼が決してトップに立とうとしないことだろう。彼は自分を月に例える。「月は1人じゃ輝けない」と言い、カリスマ性のある人物の下に付き、意のままに操ろうと画策する。

稀咲は頭が切れる。それゆえに、トップに立つには知恵だけでは足りないことを知っている。自分はその器ではないと冷静に自己分析できる点が稀咲の敵役としてのやっかいな部分なのだ。例えるなら、総理大臣になると不人気だが、官房長官だと力を発揮するタイプと言えるだろうか。

現実の社会でも、組織の代表となるのはトップの人物だ。何か不祥事が起きればトップの責任が追及される。だが、ナンバー2は、トップを隠れ蓑にして免責されることも多い。稀咲は、様々な族を渡り歩くが、その都度生き延び、別に組織にしれっと入り込んでしまう。実際、この現実社会では稀咲のようなタイプの方が出世しやすいかもしれない。本作においても、本来の武道が生きる時代では、稀咲は東京卍會(東卍)の中枢となっており、ドラケンなどの古参メンバーが苦境にさらされている場合が多い。

未来の東卍は、あらゆる犯罪に手を染める悪党の集団になっており。過去では、「カッコいい不良の時代を作ること」を目標に掲げていた不良の集団は、稀咲というフィクサーによって悪党に堕ちていく。主人公、武道の戦いの肝は、東卍を悪党の集団にさせないことにあると言える。不良と悪党は違う、だが、とても近しい存在なので、ちょっとしたことでバランスが崩れ堕ちてしまうことがあるのだ。

自分を変えた武道と変えなかった稀咲
武道は、何度殴られても決してあきらめない。辛い未来を知っているからこそ、彼はここで踏ん張らないといけないことを知っているからだ。未来を変えるなら、まず情けない自分を変えなければならないと彼は痛感している。

だが、あきらめの悪さなら稀咲もまた負けていない。彼は自分がトップになれないと知っていても、野心も執着心も決して捨てない。彼は、武道が何度過去を変えても、手を変え品を変え、自らの計画を実行する。あきらめの悪さという点で、2人はよく似ている。

だが、稀咲は自分を変えようとは決してしない。自分はトップに立つ器じゃないとしっているが、決して努力してトップになろうとはしないのだ。武道が未来の日向を救うために、東卍のトップになると決意するのと対照的だ。

『東京リベンジャーズ』は、自分を変えた不良と、変えなかった悪党の闘いなのだ。何かを変えるには、自分を変えなければいけない。稀咲は、その反面教師としてとても優れた敵役だ。

「敵キャラ列伝〜彼らの美学はどこにある?」過去記事はコチラ

このニュースに関するつぶやき

  • これほどイカれた悪役を作れる和久井映見先生は、凄い人だ
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  • 「綺咲」は、魅力的な悪役ですぅ!
    • イイネ!11
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