25人に1人は意外と多い? 集中できない、失言、失敗…「大人のADHD」対処法【医師が解説】

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2021年10月18日 20:51  All About

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写真注意欠陥/多動性障害は基本的に小児期の疾患名ですが、「大人のADHD」も珍しくありません。大人のADHDについて解説します。
注意欠陥/多動性障害は基本的に小児期の疾患名ですが、「大人のADHD」も珍しくありません。大人のADHDについて解説します。

ケアレスミスに失言、失敗……大人のADHDとは

仕事でもプライベートでも人間関係はたいへん大切。その人間関係をうまくいかせるために問題行動を慎むのはベースラインとして、相手との距離感やまわりの空気を読むなど、気配りにかなり気を使う必要もあります。実際にみなさまも、相手に対して何か失礼がないように、ある程度、あるいはかなりしっかり注意されていると思いますが、そうした失敗をなぜか繰り返す方は意外に少なくないものです。

たとえば、約束を頻繁に忘れてしまったり、相手が気にしていることを不用意に言ってしまったり……。悪気がなくても、人間関係にヒビが入ってしまうこともあるでしょう。

こうしたことは一般的に当人のパーソナリティー、つまり生まれつきの性格の問題として片付けられがちですが、実は病気がその原因になっている可能性もあります。

ここでは、そうした病気のひとつである「大人のADHD」について詳しく解説します。

ADHDは子どもの病気? いいえ、大人にも可能性はあります

ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は「注意欠陥・多動性障害」ともいわれ、小児期の疾患のひとつです。症状の特徴は病名の示す通りで、注意力、集中力に著しい問題がある、あるいは多動が目立つ、あるいはその両者とも著しい場合もあります。椅子にじっと座っていることがとても苦手な子どもの姿を思い浮かべていただくと、この病気のイメージがつきやすいかもしれません。

これらのADHDの症状は年齢とともにしだいに改善していく傾向があり、大人になった頃には、かなり落ち着くことが少なくありません。しかし、その傾向自体は大人になってからもある程度続くもので、もしそれが原因で日常生活に何か深刻な問題が生じていれば、場合によっては「大人のADHD」と診断される可能性があります。

ADHDは個性・性格の問題ではなく、脳内の問題

ADHDで現れる症状は、しばしばその人のパーソナリティや生活態度の問題のように受け止められがちです。もし相手が気にしているようなことをストレートに言ってしまう癖があれば、周りからの印象は悪くなってしまうかもしれません。

見ず知らずの誰かなら、その場限りの失礼で終わってしまうかもしれませんが、もし同僚や仲間内、家族内でそのような言動が頻繁にあると、人間関係に深刻なダメージを与えてしまう可能性があることは、想像に難くありません。

こうした発言などは病気の症状とはなかなか思われにくいですが、もし大人のADHDがある場合、その原因は性格ではなく、脳内にあります。詳しいメカニズムはまだ判明していませんが、基本的には脳内の一部の機能が十分作動していないことが原因です。この病気のために、注意が続かない、物事に集中しない、さらには後先をよく考えないで行動する……といった問題が現れやすくなってしまいます。

思った事をつい口にしてしまうような先のケースも、決して性格に問題があるためではありません。例えば誰でも、目の前の相手に何らかの欠点があれば、それを心の内では認識することがあると思います。でも、それを言葉にして口から出してしまわないよう、脳がしっかりとストップをかけるのです。

しかし、ADHDの方の場合、そのストップをかける機能が脳内でしっかり作動しないために、そのまま言葉が出てしまう、とも考えられるかもしれません。

こうした問題は病気が生み出している以上、解決のために必要な治療をできるだけ早く受けることが望ましいです。

ADHDの治療薬は作動していない機能を作動させるのが目的

もし大人のADHDと診断されるレベルになっている場合、日常生活で深刻な問題が生じている可能性が高いでしょう。その人本来のポテンシャルを十分発揮することも難しいかもしれません。具体的にいえば、たとえ知能指数が上位1%に入るような大変優秀な方でも、日常の注意不足がひどくケアレスミスが目立つような場合は、仕事でも重要な役割を任せてもらうことは難しいでしょう。

これらのことが続くと、日常的にかなり高いストレスを抱えているはずです。こういったストレスは、うつ病などのリスクを高めることにもなります。必要な治療をできるだけ早く受けることが望ましいです。

大人のADHDに対する治療法は、治療薬による薬物療法と精神療法が大きな柱です。この疾患に対する一般的な治療薬は「メチルフェニデート」で、これは中枢神経系を刺激する薬物のひとつです。

薬の作用機序を簡単に解説すると、この治療薬の効果で、それまで十分作動していなかった脳内の機能が十分作動し始め、それにより注意力や集中力が増し、自身の言動に十分気を配れるようになる……という仕組みです。

また、精神療法もこの疾患に対する重要な治療法です。その目的は治療薬とは異なり、脳内の問題に直接的に対処するわけではありません。病気が引き起こす問題の有り様を正しく理解した上で、その対処を学び、それを身につけていくことで、日常生活の質を向上させることが目的です。

実際、この病気がどのような問題を自分に引き起こしているかがはっきり理解できれば、治療を受けるモチベーションも向上するはずです。それは服薬の意義をしっかり理解することにもつながり、治療薬の効果を向上させることにもなります。また、治療を通じて、日常のどの場面で問題が現れやすいかが分かっていれば、問題の発生をあらかじめ回避しやすくなります。

ここまで述べてきた大人のADHDはみなさまには稀な疾患かと思われたかもしれませんが、統計によっては成人の4%がこれに該当するという報告もあります。実際、注意力や集中力が明らかに不足している人は意外に少なくないものです。

もし自身がそうした問題に気づいていたら、あるいはご家族などの誰かにこうした問題があれば、精神科(神経科)を受診され、必要な治療を受けることがベストの解決法になる可能性が高いことはどうか知っておいてください。

中嶋 泰憲プロフィール

千葉県内の精神病院に勤務する医師。慶応大学医学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校などに留学。留学中に自身も精神的な辛さを感じたことを機に、現代人の心の健康管理の重要性を感じ、精神病院の現場から、毎日の心の健康管理に役立つ情報発信を行っている。
(文:中嶋 泰憲(医師))

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