新型コロナワクチンを開発した女性研究者、カタリン・カリコ氏の功績とは?

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2021年10月19日 06:41  ダ・ヴィンチニュース

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写真『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』(増田ユリヤ/ポプラ社)
『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』(増田ユリヤ/ポプラ社)

 先ごろノーベル賞が発表され日本人の受賞者も出るなど話題になった。残念ながら受賞こそ逃したが、今回は私たちの「リアルな生活」に直結する科学者が有力候補にあがっていたのをご存じだろうか。それはハンガリー出身の女性研究者カタリン・カリコ氏(66)。今まさに人類の最重要案件のひとつである「新型コロナワクチン」の開発に大きな貢献を果たした人物だ。実は彼女の「発見」がなければワクチン開発はもっと遅れ、世界はまだまだパンデミックをただ恐れるだけだったかもしれないのだ。

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 科学においても基礎研究の分野は馴染みが薄くピンとこないという方もいるだろう。そんな方にはぜひ『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』(増田ユリヤ/ポプラ社)をおすすめしたい。カリコ氏本人だけでなく彼女の恩師や娘といった関係者に取材して編まれた本書は、彼女がなしとげた偉大な発見がいかに我々の生活に直結するのか、そしてその発見への道のりがいかに困難なものだったのかを知ることができる一冊だ。

 1955年、ハンガリーのソルノクでバーテンダーをしながら精肉店を営む父と会計士の母のもと、2人姉妹の妹として生まれたカリコ氏。貧しくとも温かい家で好奇心をすくすく育んだ生物好きの少女は小学生の頃から優秀な成績で周囲の注目を集め、やがて研究者の道へと進む。しかし東西冷戦下で社会主義国だった母国ハンガリーは経済が低迷、次第に研究を続けることが困難になったカリコ氏は、ほぼ何も持たずにアメリカへの移住を決断した。彼女の支えとなったのは共にアメリカに渡った夫と娘の存在、そして「人類の役にたつ研究を続けたい」という熱意だった――。

 その後も様々な試練にあいながらも彼女が続けた研究対象は「mRNA(メッセンジャーRNA)」。今回、新型コロナワクチンが「mRNAワクチン」とも呼ばれているので、名前を聞いたことがあるという方も多いだろう。このmRNAはタンパク質を作ることができる物質であり、人工的に作ったmRNAを細胞の中に入れれば薬に利用することも可能になる。そのため1980年代から研究が続けられてきたが、炎症反応が避けられずに多くの研究が失敗に終わっていた分野でもあった。だがカリコ氏は辛抱強く諦めず、とうとうワイズマン氏との共同研究で炎症反応の抑制に成功。さらにmRNAを脂の膜で覆うことで安定させることに成功し、ワクチンや治療薬への活用に道を拓いたのだ。

 そしてこの発見があったからこそ、かつて完成までには2〜3年かかるといわれていたワクチンがこれほど早く実用化された。その開発スピードを危ぶむ声もあるが、実に40年近く研究されてきた蓄積があっての成果だということは覚えておきたい。mRNAの詳細は本書で確認してほしいが(わかりやすいので理系オンチでもご安心を)、新型コロナワクチンのメカニズムもわかるし、それが「人類のためになる研究をしたい」という彼女の不屈の魂が導いた結果だと思うと大きな「安心」も得られるだろう。

 カリコ氏のとにかくひたむきで謙虚な生き方にも学ぶところは多く、同時代人でありながら「偉人の伝記」を読むような感動が自然にわきあがる。それにしても「基礎研究に携わる科学者」というのは、なんと偉大な縁の下の力持ちであることか。人類の未来を救ってくれる彼らの存在に、あらためてリスペクトを送りたい。

文=荒井理恵

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  • 世界中を副作用で苦しめた悪魔。地獄に堕ちろ。できれば新コロで死ね。
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