高梨沙羅“3度目の正直”で金メダルなるか 五輪シーズンに向け、視界は良好

1

2021年10月19日 18:00  AERA dot.

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真前回の平昌五輪では銅メダルだった高梨沙羅 (c)朝日新聞社
前回の平昌五輪では銅メダルだった高梨沙羅 (c)朝日新聞社
 スキージャンプW杯は10シーズンで勝利数60で、表彰台は109。男女を通じた歴代最多記録を打ち立てている高梨沙羅だが、五輪は過去2大会で4位と3位。その勝利を得る難しさをこう語っていた。


【蜷川実花が撮った! AERA表紙に登場したときの高梨沙羅はこちら】
「自分の中では五輪で結果を残すことは、今まで支えてくれた人たちや、日本の女子ジャンプを切り開いてきてくれた先輩たちへの恩返しになると思っている。それを果たしたいと常々思っているけど、世界選手権も含めた大きい大会で勝てないのはなんでだろうと考えるけど、わからないんです。特に五輪は、4年間すべてを捧げてやってきたものがその一瞬、10秒程度が2回の合わせて20秒で決まってしまうじゃないですか。その20秒に4年間やってきたことを合わせる能力は何だろうと考えて……。アベレージを上げていくしかないと思うけど、『上げ切ったところで挑んでもダメな時があったよな』と考えると、もっと違う何かが必要なんだと思うし。どうしたらいいのかというのが単純にわからないんです」


 だからこそそれを追求したいという思いは、2回の五輪と、個人は無冠だった6回の世界選手権を経験してさらに強くなっている。


 平昌五輪シーズンはマーレン・ルンビ(ノルウェー)とカタリナ・アルトハウス(ドイツ)の躍進で、五輪とW杯総合1位と2位を占められた。ふたりはともにパワフルに踏み切るジャンプの精度を上げてきた。五輪では高梨も銅メダルを獲得したが、得点では上位を占めたふたりに大差をつけられた。


 その流れに対抗するために、高梨もジャンプ台に力を伝える踏切に取り組み始めた。だがそれがジャンプを狂わせ、その後の2シーズンはW杯も1勝ずつで総合4位と落ち込んだ。だが、五輪プレシーズンになってそれが形になり始めた。


「最初の2年は本当に苦しくて、目指すところもよくわからないまま探り探りの状態だったけど、今年に入ってそれが形になり始めて自分の思った以上の結果も出すことができた」


 こう話したように、今年1月31日のW杯ではジャンプ台にしっかり力を伝える踏切ができるようになって2位に。そしてその後は4戦3勝と調子を上げて世界選手権に臨んだ。



 世界選手権はノーマルヒル3位でラージヒル2位だったが、ノーマルヒルは1本目にテレマーク着地をしっかり決めていれば優勝できた惜しい結果。さらにW杯総合も終盤には1位争いをし、最終戦7位で9ポイント差の2位という大接戦を演じた。


 それでも「世界選手権は惜しかったと言われるが、まだ空中ができていないのでテレマークが決まらなかった。助走に滑り出しから始め、R(助走路の角度が変わる部分)の滑り、そこから踏切までと順番に取り組んできたが、まだ空中は手付かずなので。いい条件なら着地までスムーズに行けるが、追い風などの難しい条件に対応できる空中のスキルはまだできていない」と冷静に振り返っていた。


 北京五輪の金メダル獲得へ向けてその取り組みを進めている高梨は、今年7月から10月までのサマーグランプリは、全7戦中4戦出場して1位1回、2位2回、3位1回で総合2位。優勝したチェコ大会と開幕のポーランド大会第1戦では飛型点も高得点を取り、改良の成果を見せている。


 世界の状況を見れば、昨季は大きな変動があったシーズンだった。平昌五輪シーズンからW杯総合を3連覇していたルンビは世界選手権でのラージヒルこそ優勝したが、W杯は表彰台無しで総合8位と低迷。前シーズンはルンビと総合1位を競り合ったオーストリアのキアラ・ヘルツェルとエバ・ピンケルニッヒも不調とケガで低迷し、20歳前後の若手が一気に力をつけてきたのだ。


 その中でも20年札幌大会で初勝利をあげた時に「昨シーズンは結果が出ないのでやめるつもりだった」と驚いていたマリタ・クラマー(オーストリア)は、19歳の昨シーズンはビッグジャンプを連発して7勝。新型コロナウイルスのPCR検査陽性で2試合出場できなかったが、それがなければ総合優勝は確実という勢いを見せていた。また高梨に競り勝って初の総合優勝を果たしたニタ・クリズナ(スロベニア)は20歳の選手だった。


 11月下旬からW杯が開幕する今季、五輪連覇がかかるルンビは「体重管理で無理をしたくない」と、シーズンの欠場を表明している。サマーグランプリでは26歳のウルシャ・ボガタイ(スロベニア)が高梨を抑え、7戦で1位4回、2位2回で総合優勝しているが、W杯10シーズン中で18〜19年に3位が2回あるだけで、昨季も総合16位と未知数な部分は大きい。




 平昌五輪2位のアルトハウスも昨季は総合9位ながらも大舞台に合わせてきそうな怖さはあるが、順当なら昨季一気に力を伸ばし、今季のサマーグランプリでも着実に表彰台に乗っているクラマーやクリズナ、エマ・クリネク(スロベニア・23歳、21年世界選手権ノーマルヒル優勝)、シルジ・オプセット(ノルウェー・22歳、昨季W杯総合4位)などの若手が高梨のライバルになりそうだ。


 ただ、北京五輪のジャンプ台は、昨季1月にテスト大会としてW杯とコンチネンタル杯を開催予定だったがコロナ禍でキャンセルになっている。今年12月4〜5日のコンチネンタル杯は予定されているが、男女ともW杯と重なっているのでほとんどの選手はぶっつけ本番になりそう。コンチネンタル杯が開催されれはどんな条件になりそうなジャンプ台かという傾向も少しわかってくるが、選手たちは完全に白紙状態で臨まなければいけなくなりそうな状況だ。


 若手台頭の中でも着実にメダル圏内を維持している高梨だが、そんな条件での試合になれば、これまでの経験をうまくいかしたベテランならではの味を見せつけることができるかもしれない。(文・折山淑美)


    ニュース設定