ガラス張りヒトカラが中国でスクラップ化していく背景 暇つぶしとキャッシュレス決済の行方

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2021年10月20日 06:22  ITmedia NEWS

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写真モールにあるミニKTV
モールにあるミニKTV

 中国のモールでよく見たガラス張りの無人カラオケボックス「ミニKTV」が撤去されるというニュースを最近よく聞く。



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 ネットではあるとされているけど行ってみるともうなくなっている……そんなことが目立っているそうだ。



 ミニKTVは「友唱M-bar」「minik」をはじめ数社からリリースされていて競合している。



 部屋の中にはディスプレイがあり、そのタッチパネルを操作して選曲する仕組み。支払いはキャッシュレスアプリで行う。



 1曲単位、または15分、30分の時間区切りで支払うことができ、支払うと、曲をスマートフォンアプリにダウンロードできる仕組み。モールなどに設置されており、気軽に入って利用できる娯楽として人気になるはずだった。



 衰退した1つの理由は新型コロナウイルスだ。中国がゼロコロナ政策を取る中、密な空間で声を出すミニKTVは受け入れられなかった。



 新聞晨報によれば、2020年のミニKTV全体の売上高は前年比62.8%減の5億1000万元(1元=17.3円)という。中国文化娯楽工業協会によると、2016年には1台当たりの売り上げは年間2万2000元だったのが、毎年微減傾向が続き、2018年には2万元、感染拡大で人々が触れ合えなくなった2020年には8600元まで下がった。



 ただ理由はそれだけではない。そもそももうかっていなかったのだ。



 調査会社の前瞻産業研究院が2021年9月に発表した中国カラオケ産業に関するレポートによれば、ミニKTVのコストは、1台購入で1万元台前半から2万元台後半程度。さらに版権費が年2400元、メンテナンス代・電気代が年2000〜5000元、土地使用台が年3万6000元、つまり購入費に加え毎年4万元以上かかるのに対し、収入は純粋な売り上げ3万6000元+広告収入しかない。つまりマイナスなのだ。



●なぜマイナスのビジネスがもてはやされたのか



 ではなぜマイナスになるビジネスが盛り上がって中国を席巻したのか。2015年からの動きを当時のミニKTVの記事を読み解きながら振り返ってみる。



 ミニカラオケへの投資は2015年から活発になり、2018年まで行われた。中国でキャッシュレス決済が普及し、続いてシェアサイクルなどシェアサービスブームが巻き起こったときに、ミニカラオケも一気にその数を増やした。



 特に元気だったのは友唱M-barだった。テンセントのカラオケアプリである全民K歌(WeSing)と提携していてコンテンツは保証されていたし、SNS機能も1つ上をいっていた。加えて自動販売機大手の友宝が資本注入したことで、中国全土に展開していった。



 全民K歌はミニKTVやアプリだけでなく、スカイワース、康佳、極米などのテレビメーカーと提携し、レノボとは専用カラオケマイクとタイアップし、オンラインとオフライン、どちらでも歌うデータを共有できた点が強かった。もっとも、そこまで使いこなすヘビーユーザーはそう多くはなかったが。



 2017年にはイケイケなミニKTVを紹介するこんな記事がテンセントのニュースメディアに掲載された。



 「購入費に加え、通信費設置費用、それにテナント代を合わせれば1台に3、4万元はかかる。1日平均で500元稼げれば、半年で設置費用は回収できるだろう。自動販売機に比べ、ミニKTVは商品を購入する必要がなく、最新機種はリモートでオン/オフをコントロールでき、無人でメンテナンスできる。清掃など少しの作業で投資金が回収でき、もうかるのだ」



 テンセントだけではない。2017年当時、調査会社のiResearchはミニKTV市場について、「ミニKTV市場は前年比92.7%増で、さらに2018年には前年比120.4%増となり、市場は大きく増加するだろう」と右肩上がりを予想していた。当時のミニKTVは若者中心に利用され、順番待ちすらあった。



 しかしそれまで2台設置すれば1日300〜400元の収入が固かったミニKTVが、4台稼働させても数日で20〜30元しか利益が出ないという事態となる。



 登場当時は新鮮味があり若者が利用していたが、モールにクレーンゲームやカプセルトイなどが登場して若者の暇つぶし場所が分散。ライバルに比べて1回の利用料金が高く、新鮮味がないのでユーザーが突然離れてしまったのだ。



 カラオケ自体は斜陽ではない。カラオケアプリによるオンラインカラオケの利用者数は、調査が開始された2014年から一貫して上り調子だ。例えば前述の全民K歌のMAUはカラオケアプリの中では最も多く、1億3543万人となっている。



 ミニKTVのニュースを見ると、2017年までイケイケのニュースばかりだったのが、その後ニュースがなくなり、2020年に「ミニKTVは儲からず無用の長物と化した」という記事が出ている。思ったほどもうからなくなった時点ではまだ様子見でニュースも出ないが、コロナ危機で全く稼げなくなった頃にはネガティブなリアルが報じられたわけだ。



 暗い未来を予想していたメディアもある。億欧網という小規模テック系メディアが2017年に、「皆がミニKTVは儲かるというのになぜ投資者は後ろ向きなのか」という記事を掲載している。



 「(2017年当時の)この状況は極端な状況で現実はずっとこうはならない。娯楽は多種多様であり、今後の市場は予想できよう。個人的には投資したくない」という投資者のコメントを掲載している。まさにその通りになったわけだ。



 中国のモールに時間つぶしのための新しい娯楽ができることで、熱しやすく冷めやすい中国の消費者が離れていった。メディアも次に何が出てくるかを予想できず、筆者も含めて中国をウォッチする日本人もその情報に乗せられてしまった。



 流行しているものを後押しする中国メディアの記事は非常に多い。無数の記事の中から、ダメになる可能性を示唆する文章を発見しないと、正確な将来予測はできないようだ。



 最後に筆者の予想を。



 以前、ミニKTV同様に持ち上げられて盛り上がった末に絶滅危惧種となったものに、無人スマートコンビニがある。



 新しい無人コンビニ店舗がひっそりとオープンしているのを見るに、ミニKTVも完全に絶滅するようなことはなく、そこで培った技術は別のガラス個室のサービスに転用される。そんな未来が来るのではないだろうか。



(山谷剛史)


このニュースに関するつぶやき

  • 支那は本当に興亡が凄まじい。 成長も破滅も始まるとあれよあれと言う間に、野火の如く広がって行く。
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  • 国語のテストに載ってる「説明文」みたいな文章。
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