姜尚中「岸田首相はハト派かタカ派か アベノミクスと宏池会、葬られるのは?」

5

2021年10月20日 07:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。


*  *  *


 岸田文雄首相の所信表明でより明確になったのは、ハト派とタカ派の二面性です。幹事長に甘利明氏を据えたことからも、岸田氏と同じ宏池会と連なる麻生太郎氏におんぶに抱っこはできなかったことがわかります。


 かといって安倍晋三氏におんぶに抱っこだと、もっと反動が起こります。ただ、甘利氏にはカネの問題がまとわり付き、それが足かせになるリスクを抱えたままです。


 そうした過去のしがらみをリセットする印象を出すためにも、「新しい資本主義」をはじめ、「新しい」という形容詞を多用している。中間層へのアピールや成長と分配の好循環、医療や介護従事者への待遇改善など、アベノミクスとの違いを印象づけ、リベラル保守の宏池会らしさを出したいのでしょう。でも曖昧(あいまい)さは否めず、安倍亜流政権のイメージがつきまといます。


 ここに岸田政権の曖昧さがあります。特に経済政策では、宏池会らしく、所得再配分による格差の是正に政策的な資源を投入しようとするはずです。その場合、財源の捻出、財政出動や金融所得課税などの問題を巡り、財務省やその背後にいる麻生氏との不協和音に悩まされるかもしれません。



 他方、そうした軋(きし)みが顕在化しないためにも、岸田政権としては、安保・外交で安倍氏を中心とするタカ派からのバックアップを期待して右旋回していく可能性があります。それは大平正芳氏や宮沢喜一氏、加藤紘一氏らに受け継がれてきた宏池会のハト派的な国家戦略の否定につながります。岸田氏にはプラグマティックで柔軟な外交・安保政策が体質的に合っていたはずです。それが、対敵基地先制攻撃能力の確保と明言してはいないものの、それをにおわせていますし、対中政策も対立面がフレームアップされそうです。


 総選挙で芳しくない結果になるほど、タカ派への依存度が高まり、宏池会的なものは希釈されていくでしょう。それは、保守合同以来の戦後保守政治を嚮導(きょうどう)してきたリベラル保守の命脈が完全に絶たれてしまうことを意味しています。岸田氏がアベノミクスの「墓掘り人」になるのか、それとも宏池会の「墓掘り人」になるのか、総選挙後にハッキリとしてくるはずです。


姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍


※AERA 2021年10月25日号



【おすすめ記事】岸田新総裁は開成高、早稲田大卒 総裁選を争った4人の出身校と華麗なる同窓生たち


このニュースに関するつぶやき

  • 左巻きがこれだけ「安倍の影響」を嫌うと言う事は、どんどん安倍路線で進めるのが日本にとって最も良い方向だな。
    • イイネ!8
    • コメント 0件
  • ���塼���å�(^q^)���塼���å�生姜戯れ言
    • イイネ!14
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(3件)

前日のランキングへ

ニュース設定