「余命2週間」宣告された腎臓病の猫、「膝の上が大好きだった」あの子の“場所”は今も空いたまま

6

2021年10月22日 07:30  ORICON NEWS

  • 限定公開( 6 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

写真腎臓病を患った「あげお」(写真:ねこけんブログより)
腎臓病を患った「あげお」(写真:ねこけんブログより)
 今年の夏、猫の腎臓病の治療薬開発を進めていた東京大学の研究チームに、1億7600万円もの寄付金が集まったとのニュースが大きな話題を呼んだ。老齢の猫に発症が多い慢性腎臓病(慢性腎不全)は、とても死亡率の高い病気。異例の寄付金からも、猫の飼い主たちの期待がどれほど高かったかがうかがえる。今回は、そんな慢性腎臓病が発覚した猫「あげお」について、NPO法人『ねこけん』の代表理事・溝上奈緒子氏に聞いた。

【写真】「膝の上が大好きだった…」幸せそうなあげお、涙なしに見られない最期

■向精神薬を飲んでいた「あげお」、『ねこけん』で安定した生活を手にいれるが…

 茶白でおとなしい雄猫の「あげお」は、とても甘えん坊な猫だった。だが、『ねこけん』で保護する前は精神的に不安定で、薬を飲み続けていたという。「もともと、『ねこけん』のボランティアメンバーがインターネットで“心の病を持った猫を飼えないか?”という情報を見つけ、自分の家に保護したことがきっかけでした」と溝上氏。病院では分離不安症と診断され、あげおは向精神薬を飲むことになった。

 実は、猫が精神病を患うことは決して珍しくないという。分離不安症は、飼い主と離れることで心が不安定になり、問題行動を起こす症状。あげおの場合、かなりひどく鳴いてしまうということだった。

 だが、『ねこけん』のシェルターにやってきたあげおを見た溝上氏は、「この子は何も問題ない」と判断。たしかに、最初こそ不安そうに鳴いていたものの、しばらくするとそれも収まり、同じく保護されていた猫たちと打ち解けた。ちなみに名前の由来は、あまりにおとなしい猫だったため、もっと猫らしくわがままに元気になってほしいという願いを込め、「アゲアゲで行こう!」という言葉から「あげお」と命名されたそうだ。

 そんなあげおも、『ねこけん』に来てからはとても安定した生活を送っていた。薬を飲むこともなく、精神的にも問題ない。あとは幸せな家族ができることを待つばかり…のはずだった。

 ある日、あげおは体調を崩した。

 病院で血液検査を行った結果、あげおの腎臓の数値はかなり悪く、慢性腎不全と診断。つかの間の安定した生活から一転、あげおは入退院を繰り返すようになる。投薬に点滴と、毎日のケアが必要な状態となり、ボランティアメンバーはお盆休みを返上し、あげおに付き添った。なんとかあげおに回復してほしい、健康な猫生を送ってほしい。その一心で、メンバーたちは自らの仕事もありながら、必死であげおを見守り続けたのだ。

 だが、そんな甲斐なく、あげおの腎臓はもうほとんど機能していなかった。獣医師から宣告されたのは、「余命2週間」――。「今となっては、当初飲んでいた向精神薬が腎臓に影響したのかどうか、それはわかりません。でも、私たちもやれることはすべてやりつくしました」。

 余命宣告の2週間が過ぎても、あげおは生き続けた。そこで、2週間が過ぎた10月1日から、あげおの姿をYouTubeにアップすることにした。

 甘えん坊なあげおは、膝の上に乗ることが大好き。同じく甘えん坊のクロエと膝の上の陣取り合戦を繰り広げることもあった。「本当に膝乗りが大好きで、メンバーも他の仕事ができなくなるほど、ずいぶん占領されました。だから、私たちはあげおのことを“日本お膝会会長”と呼んでいたんです(笑)」。『ねこけん』のYouTubeには、そんな愛らしいあげおの毎日が残されている。

■開発段階の治療薬、猫を腎臓病から救うために必要なこと

 前述の治療薬開発に大きな支援がなされたことからもわかるとおり、腎臓病は猫の死亡原因でもっとも多い病気である。本来は体から老廃物を排出する腎臓だが、機能が低下すると、尿に排出されるべき毒素が血液中に残ってしまう。とくに猫は、人や犬ではその役割を果たす「AIM」という血液中の遺伝子が機能しておらず、それが腎臓病に繋がっているという。東大チームは、この「AIM」を生かした治療薬を開発している。

 治療薬が開発段階の現状では、猫が腎臓病にかかってしまえば、サプリメントや薬、点滴などの治療を施しても延命できるだけで、最終的に治る見込みはない。では、腎臓病を予防するためにはどうしたらいいのだろうか?

 「やはり、いいフードを食べさせてあげることが一つの予防法です。あとは、少なくとも年に1回は健康診断を受けさせること。腎臓病の進行を遅らせる薬はあるので、少しでも腎臓が悪くなっていたら薬を飲ませます。とにかく、手遅れになる前に早期発見することが非常に重要です」。

 10月8日、余命2週間と言われたあげおは、息を引き取った。宣告を受けてから約3週間、がんばった。我慢強く、おっとりしていて、膝の上に乗ることが大好きだったあげお。一緒に腎不全と闘った『ねこけん』メンバーに見送られ、眠るように虹の橋へと旅立っていったという。

 あげおのために空けていた膝の上は、今も空いたまま。治療薬の早期完成を望むばかりである。

(文:今 泉)

    前日のランキングへ

    ニュース設定