意外と知らない「クルマ」の豆知識 第16回 日産「オーラ」の源流? 小さな高級車の元祖とは

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2021年10月22日 11:31  マイナビニュース

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日産自動車は新型車「ノート オーラ」を「プレミアムコンパクト」として打ち出していますが、こうした「小さな高級車」の元祖といえるのは、どこで作られた何というクルマなのでしょうか? モータージャーナリストの内田俊一さんに聞きました。


○小さなロールスロイスと呼ばれたクルマ



日産自動車がコンパクトカー「ノート」の上級車として「ノート オーラ」を発売した。簡単にいってしまうと、ノートをベースとし、遮音ガラスを採用して静粛性を向上させたり、インパネ周りに木目“調”パネルやツイード“調”素材を貼って上質感を出したりしたクルマである。日産いわく「プレミアムコンパクト」、いいかえるなら「小さな高級車」という位置づけなのだ。


「小さな高級車」と呼ぶべきクルマは、実は以前から脈々と存在する。そもそも日産は、先代ノートに「メダリスト」というグレードを用意していたし、さかのぼれば「ローレルスピリット」という日産車もあった。当時の「サニー」をベースに上級車の「ローレル」を意識したデザインを施したクルマで、これも小さな高級車を目指したといっていいだろう。



世界に目を向けると、近年では2009年にデビューした「DS3」とシトロエン「C3」の関係が興味深かった。全く同じプラットフォームを使いながら、C3はベーシックカー、DS3はまさにパリの高級車という演出を見事に成し遂げていたのだ。


「小さな高級車」の歴史をたどっていくと、1960年代中期にイギリスで登場した「バンデンプラプリンセス」に行きつく。当時のブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)が生み出した1台だ。


BMCは「ADO16」という開発コードのもと、同社が所有していた各ブランド(オースチン、モーリス、MG、ライレー、ウーズレー、そしてバンデンプラ)それぞれにあった性格づけを施し、このクルマを販売していた。例えばオースチンやモーリスでは「ベーシック」として、そして、バンデンプラでは「高級車」としてキャラクターを作り分けていたのである。いわゆる「バッチエンジニアリング」という手法で、ベースは一緒ながらエンブレムだけ付け替えた、といった意味合いだ。



このADO16に限っていえば、それぞれの性格が明確だったので、バッチエンジニアリングは成功したといえるだろう。特にバンデンプラプリンセスに至っては、「小さなロールスロイス」とまでいわれるほどだった。そう呼ばれたのも当然だ。当時の高級車と同じ材質を使用し、同じ仕上げを施したレザーやウッドパネルを使い、後席には立派なピクニックテーブルまで備えたクルマだったからである。


バンデンプラという会社はもともと、ベルギーにあったコーチビルダー(イタリア語でいうカロッツェリア)で、戦前からロールスロイスやベントレーのボディを顧客の注文に応じて作り上げていたのだから、このあたりの仕上げ方はお手の物だったといってもいいだろう。イギリスの階級社会において、アッパークラスに認められたコンパクトカーはこれとミニくらいではなかろうか。


もっといえば、小さな高級車は1960年代以前から存在してはいたのだが、それらはほとんどオーナーの注文によるオーダーメイドや少量生産車などだったので、何かをベースにした大量生産車としては、このバンデンプラプリンセスが始まりという説を支持する声が多い。



内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)

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