“孤独担当大臣”の設置も 「大人の国」イギリスのよりよい国づくりへ向けた取り組みを紹介

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2021年10月22日 17:00  AERA dot.

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写真多賀幹子(たが・みきこ)/東京都生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材、執筆。著書に『親たちの暴走』『うまくいく婚活、いかない婚活』など(撮影/写真部・張溢文)
多賀幹子(たが・みきこ)/東京都生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材、執筆。著書に『親たちの暴走』『うまくいく婚活、いかない婚活』など(撮影/写真部・張溢文)
 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。


【写真】今回の「いま読んでおくべき一冊」はこちら
『孤独は社会問題 孤独対策先進国イギリスの取り組み』では、孤独を社会問題としてとらえ、孤独担当大臣を置いたイギリスの孤独対策を紹介する。NPOや企業の活動事例、英王室がチャリティー活動に果たす役割、恵まれた者による社会貢献、ロンドンの街に見られる配慮、がん患者への支援など、孤独を切り口にイギリス社会の奥深さを知ることができる。筆者である多賀幹子さんに、同著について話を聞いた。


*  *  * 


 孤独は個人の気持ちの問題だけではなく、健康や寿命にかかわっていることが近年の研究で明らかになっている。そんな中、イギリスは世界に先駆け、2018年に孤独担当大臣を創設した。


「孤独の問題を知らせるシンボルとして、大臣の設置は大きな意味があったと思います」


 と話すのは、ロンドンに暮らした経験を持つ、ジャーナリストの多賀幹子さん。実は政府が手をつける前から、慈善団体や企業は孤独対策に取り組んでいた。多賀さんはユニークな事例をいくつも紹介している。たとえば、スーパーマーケットに掲示された高齢者の夢の中から、自分が手伝えそうなものを実行するプロジェクト。「逮捕されてみたい」という104歳の女性のもとに警官がパトカーで駆け付け、「104年間も良き市民であった罪」で手錠をかけた。


「本人も周囲の人たちも大喜びでした。イギリスのユーモアを感じましたね。何をやってるんだ、と文句を言う人がいない大人の国なんです。お金をかけず、アイデアを出す。高齢者の夢を叶えることの重要性が認識される機会にもなりました」


 ほかにも、カフェで見知らぬ人同士がおしゃべりするための専用のテーブル、高齢者をボランティアの話し相手と結ぶ電話サービスもある。


 こうした活動の背景にはイギリスに根付いた文化がある。ベビーカーを電車から降ろそうとすればサッと手伝い、信号を渡り切れない高齢者に寄り添って歩く人がいる。



「何か助けることはないかなって、みんな見てるんですよね。弱者への眼差しを感じます。私も優しく対応されることが多いので、自然に何か助けられないかと思うようになりました」


 英王室とチャリティーの関係を取り上げた章は、長年、王室関連の取材を続けてきた多賀さんならでは。


「王室の基金に集まった寄付金はウィリアム王子、キャサリン妃らがパトロンになっている団体に分配されます。彼らがチャリティーの実績をアピールすることで、また寄付金が集まる。そういう循環を作ることも王室の役割です」



 この本は多賀さん自身の深い孤独の中から生まれた。執筆中の昨年10月、夫の康紀さんが亡くなったからだ。「泣きたい時は思い切り泣きなさい」「時間が薬になるからね」といった周りの人たちの言葉に助けられた。


「どうやって日常に戻ればいいのかわからなくて、言葉にすがるような気持ちでした。結局、孤独が怖くて人とのつながりを探していたんですね」


 人を孤独にしてはいけないという思いは一層強くなった。


「日本には人に頼ってはいけない、迷惑をかけてはいけないという美学がありますが、孤独だから助けてと声に出せる世の中のほうが優しいですよね。孤独を賛美しすぎず、イギリスみたいな国もあることを知っていただければと思います」


(ライター・仲宇佐ゆり)

※AERA 2021年10月25日号


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  • 7つの海を制して世界中から搾取して回った大英帝国も随分まるくなりましたなぁwww
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