「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」レビュー 忍者と極道がバイクと日本刀で戦う超絶アクション問題作

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2021年10月22日 19:37  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真とにかく忍者がカッコイイ映画!/(C) 2021 Paramount Pictures. Hasbro
とにかく忍者がカッコイイ映画!/(C) 2021 Paramount Pictures. Hasbro

 映画「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」が10月22日より公開されている。



【動画】映画の予告編



 本作は玩具を原作とした実写映画「G.I.ジョー」シリーズの最新作。その中でも屈指の人気を誇るキャラクター、12種の格闘技に精通する最強の忍者ヒーロー「スネークアイズ」を主人公に迎えた内容となっている。



 本作は、そのスネークアイズの「起源」を描く物語であるため、過去作をいっさい見ていなくても問題なく楽しめる。加えて、「日本人がいちばん面白く見られる」ポイントがたくさんある愉快な大作アクション映画に仕上がっていた。さらなる魅力を記していこう。



●ヤクザ集団が日本刀で襲ってくる!



 日本人にとってまずうれしいのは「日本が舞台」であること。新型コロナウイルス感染拡大直前の2020年2月にハリウッド映画史上最大規模の日本ロケ撮影が東京、大阪、兵庫、茨城などで行われており、世界遺産の姫路城や岸和田城などが登場するのだ。



 ここで、同じく大作アクション映画で「なんだかちょっとだけ違うけどリスペクトがたっぷりあるニッポン」を描いた「007は二度死ぬ」(1967)「キル・ビル Vol.1」(2003)「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013)などを思い出す方も多いだろう。公式サイトではロケ地のマップも掲載されているので聖地巡礼をしてみるのも楽しそうだ。



 ちなみに、当時の撮影クルーが国内の数カ所でロケを行って落とした金額は約19億円にのぼっているそうで、この映画が公開されて日本が注目を浴びると今後の経済効果は数百億円にも上る見込みがあるとも言われている。



 しかも、その日本でバトルを繰り広げるのは「忍者と極道」である。ヤクザ集団はデフォルトで日本刀を持ったまま襲ってきて、トラックに黒ひげ危機一発のように大量にぶっ刺しまくる。対して忍者はアクロバティックな動きで敵を翻弄し、時には同じく日本刀でタイマンバトルに躍り出る。



 さらに、バンクーバーにセットを建てることで実現した、雨降りしきるネオンサインが怪しく光る路地裏で、刀が振り上げられるたびに水滴が飛ぶ見た目にも美しいバトルも展開する。



 終盤のバイクチェイスはさらに圧巻で、運転しながらの攻防戦や、巨大な自動車運搬車の上での激しいつばぜり合いなど、規格外のアクションがぶっ続くのでたまらない。とあるスペクタクルシーンでは、「未曾有の忍者テロを阻止せよ!」という耳慣れなさすぎる単語が出てくるキャッチコピーがウソではないことが分かり驚愕することだろう。



 主演のヘンリー・ゴールディングはこれまで正式なファイトトレーニングを受けたことがなかったが、そもそもの鍛え抜かれた肉体もあってかメキメキと上達。最初の撮影の2カ月前からスタートしたアクション指導は過酷なもので、1度に7〜8人との振り付けを行うこともあったが、最終的には本人もスタッフも満足の行く仕上がりになったという。



 しかも、ライバルとなる男を演じたアンドリュー・小路、保安責任者のくノ一となった安部春香、試練を与える「ハードマスター」役のイコ・ウワイスは、それぞれがマーシャルアーティストでありキレキレのアクションを披露。さらに人がいっぱい死んじゃう系アクション映画「ガンズ・アキンボ」のサマラ・ウィーヴィングが凄腕の女性エージェントに扮しており、殺し屋の女の子2人による青春アクション映画「ベイビーわるきゅーれ」の伊澤彩織もメインキャストのスタントダブルを担当していたりもする。



 これら実力派キャストたちのアクション監督を手掛けたのは、実写映画版「るろうに剣心」シリーズなどで知られる谷垣健治。アジア映画で築き上げた技術が、ハリウッドのケレン味たっぷりのアクション映画で見事に昇華されことにも喜びを禁じ得ない。



 最高峰のスタッフが日本へのリスペクトを全力で示した作品であることに加え、「こういう忍者バトルが見たかったんだよ!」と心の中の中学2年生が大暴れするアクションの盛り盛りぶりは、一部で熱狂的な支持を得た実写映画版「モータルコンバット」も彷彿とさせるものだ。



●ジョジョみたいなNINJA修行が始まる!



 突然だが、マンガの「ジョジョの奇妙な冒険」の第1部に「グラスに入ったワインをこぼさないようにしながら敵を倒す」ことを命じられる名シーンがある。この「漆黒のスネークアイズ」でも同様に、「器に入った水をこぼさないようしながら戦う試練」が与えられるため、「もはやジョジョじゃん…!」と思わせてくれるのも愉快だった。



 ちなみに、ここで戦う相手の「ハードマスター」役のイコ・ウワイスは、高層ビルでSWATとギャングが戦う映画「ザ・レイド」(2011)でも「シラット」という格闘技を用いたすさまじいアクションを繰り出しているのでおすすめである。



 さらに、続く試練では「穴の底での心の鍛錬」を余儀なくされる。ここでも、「ジョジョ」の第2部で穴の底からの脱出を試みる「ヘルクライム・ピラー」という修行シーンがあったじゃないか……! と思い出す。もっとも、登ることそれ自体が目的ではないので厳密にはジョジョとは違うのだが。



 こうした「少年ジャンプ的」な修行がハリウッドの大作アクション映画で見られることが、またうれしい。なお、この試練でメンター的な役割を担う「ブラインドマスター」は、分かりやすく「座頭市」をリスペクトしているのだろう。



●任侠映画のような案外シリアスな物語



 ここまで書いてきた内容であると良い意味でバカバカしい、頭空っぽで見られる娯楽映画だと思う方も多いだろう。だが、物語そのものは「復讐心」や「異なる価値観の板挟み」などを主軸にした、意外にシリアスなものだったりする。



 あらすじはこうだ。幼い頃に何者かに父を殺され復讐心を捨てきれないでいるスネークアイズは、ある男の命を救ったことから秘密忍者組織「嵐影」への入門を許可される。 600年に渡り日本の平和を守り続けた嵐影は、悪の抜け忍集団と国際テロ組織「コブラ」連合軍による攻撃を受け続けていた。 スネークアイズはこの危機を救う真の忍者となるべく3つの試練に挑むのだが……。



 ロベルト・シュヴェンケ監督自身、本作は任侠映画と呼ばれるヤクザ映画の特定ジャンルを想起させる物語であり、「任侠映画のヒーローたちは家族や集団の相反する価値観と自分自身の気持ちとの間で板挟みになる」「このジレンマは映画におけるスネークアイズと(ライバルキャラの)ストームシャドーの両方の運命においても軸となっている」と語っている。



 主人公チームはヤクザではなく正義の忍者集団ではあるが、義理人情や「スジ」を通そうとする信念と、それにそぐわない復讐心を燃やす主人公との価値観との対立が描かれており、なるほど裏切りや共闘などの複雑なドラマが展開する任侠映画に通ずるものがあった。主人公とライバルキャラはまるで「コインの表と裏」のような関係性でもあり、主人公の忠誠心と己の目的とのせめぎあいなども、見応えのあるドラマになっていた。



●賛否両論必至の衝撃の展開



 ……と、ここまで「漆黒のスネークアイズ」を称賛したが、終盤のとある展開がヤバい意味でヤバいので、賛否両論は免れないだろう、というのが正直なところだ。



 ネタバレになるので具体的にどういうトンデモ展開になるかは一切明かせない。だが、「こうなるんだろうな」という予想の真逆を突っ走って行き、「そうはならんやろ! ていうかすんなや!」とツッコまざるを得ない、どんでん返しをどんでん返されたような衝撃があった、ということだけは告げておこう。



 願わくは、SNSなどでネタバレを踏んでしまう前に映画館で見届けてほしい。はっきり言って怒る人もいると思うし、クライマックスの超絶アクションを純粋に楽しむどころじゃなくなる深刻な問題も発生していた気もするが、筆者個人としては「どういう気持ちになれと?」という困惑もむしろ面白かったし、通常の映画ではあり得ない方向に突き抜けた驚きのほうが勝ったので決して嫌いではない。



 そんなわけで、日本を舞台にした忍者と極道の極限バトル、「ジョジョ」みたいなNINJA修行、意外にしっかりしたドラマなどまっとうかつ楽しい要素がそろっていながら、賛否両論必至の衝撃の展開のおかげで問題作に片足を突っ込んでいる気がしなくもない「漆黒のスネークアイズ」が、いかにたくさんの魅力を備えているかを分かっていただけただろうか。ぜひ、仲の良い友人と一緒に見て、会話に花を咲かせてみてほしい。他のアクション映画にはない何かが、そこにはきっとある。



 最後に余談だが、敵の大ボスが「ケンタ」という名前で呼ばれるのが、日本人の感覚からするとズレを感じるのがちょっと可笑しかったりもする。本作の日本語吹き替え版は木村昴、小林親弘、井上和彦、竹内順子、白石涼子などとても豪華な配役かつ素晴らしいクオリティーであり、その大ボスことケンタを演じる子安武人が「怒りんぼさんだな〜!」と挑発する様も愉快なので、声優ファンはぜひ吹き替え版で楽しんでほしい。



(ヒナタカ)


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