音楽だけじゃない 秋元康の“ドラマ制作者”としての実績 あえて「一過性」重んじる嗅覚

53

2021年10月23日 08:40  ORICON NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

写真秋元康氏 (C)ORICON NewS inc.
秋元康氏 (C)ORICON NewS inc.
 AKB48をはじめとするアイドルグループのプロデューサーとして知られる秋元康。作詞家としての印象が強いが、これまで数々のヒットドラマも手がけてきている。1980年代から企画や原案、監修などに携わり、田中圭ら出演の『あなたの番です』(日本テレビ系)は社会現象に。10月期も秋元ドラマが放送されているが、別々のテレビ局で3作品という活躍ぶりだ。そのドラマスタイルは時代と共に変容してきたが、一瞬の“流行”をつかむ手法は変わらない。一見すると刹那的であり、すぐに消費されてしまうコンテンツ…しかし、刹那主義は“時代を反映する”という点においては最も適しており、それこそが秋元ドラマの真骨頂と言えるだろう。

【写真集カット】白石麻衣、“裸にオーバーオール”の衝撃ショット解禁

■2度の転換期を迎え、作品も変容 30年以上にわたる秋元ドラマの歴史

 秋元康といえば、「おニャン子クラブ」や「AKB48」などのアイドルグループを生み出し、その作詞に携わっているというのが最も広く知られる実績であろう。

 そんな秋元は1985年の菊池桃子を主演としたSPドラマ『卒業-GRADUATION-』(日本テレビ系)を皮切りにドラマに携わり、1990年代には10作品以上の企画・監修を行ってきた。代表的なものは、裕木奈江主演『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系)、矢沢永吉主演『アリよさらば』(TBS系)など。不倫を描く『ポケベル〜』は裕木のキャラクターと芝居がハマり過ぎ、世の主婦から盛大な裕木バッシングが。『アリよさらば』では、矢沢永吉を連続ドラマ初主演に据えたことが話題になっている。

 秋元作品がガラッと変わったのがAKB48のプロデュースを始め、社会現象になりだした2010年。『マジすか学園』シリーズをスタートさせ、1990年代における本格ラブストーリーとは一線を画した、AKB48のためのドラマを企画した。その後、話題になったのが『あなたの番です』だ。誰が脱落するか先が読めない展開で視聴者は沸き、考察サイトが乱立、SNSも同様に予想・予測で溢れ、インターネットを巻き込むドラマスタイルのパイオニアとなった。

 さらにコロナ禍での状況を新しい視点からサスペンスに変えた『リモートで殺される』(日本テレビ系)。また競合するキリンとサントリーのスポンサー共演で、提供クレジットも2社の“共演OK”を意識した演出が話題となった『共演NG』(テレビ東京)など、話題の作品を常に企画してきた。

■『ポケベルが鳴らなくて』が顕著、ドラマは“一発屋”でいい? 消費されることをいとわないスタンス貫くワケ

 秋元が手掛ける作品のスタイルは大きく変化してきているが、その根本は変わらず、常に“流行”をとらえている。例えば『ポケベルが鳴らなくて』について、秋元は過去のインタビューで「僕たちが学生の時は、好きだということを伝えるためにラブレターを書いた。それがポケベルになったり、メールやLINEになったりする。ツールが変わっても、返事を待つ気持ちは変わらない。『ポケベルが鳴らなくて』という歌をあえて書いたのは、たぶんポケベルってなくなるだろうなと。この言葉を使うのは今の時代しかないと思った」と語っている。

 この言葉通り、ポケベルはあっという間に衰退。これにより『ポケベルが鳴らなくて』はユーザーに完全に消費され、“過去の”が強調される作品に。

 「もう一つ、秋元さんの特徴は、決して“最先端”の流行には手を出さないこと」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「AKBの楽曲『ヘビーローテーション』の逸話が有名ですが、この楽曲の案が来た時、秋元さんは『本当にその言葉は世に浸透しているのか』と難色を示し、吟味した上で作詞。「ちょっと遅れて」「老若男女に知れ渡った」という“熟れ”具合が“売れる”と考えている節があり、『アリよさらば』主演の矢沢永吉さんも過去のインタビューで『秋元さんから、90年代に入っても(トレンドをスーパーに例えて)“矢沢スーパー”に行列が絶えないのか興味があると言われた』と話されています」(衣輪氏)

 『あなたの番です』でSNSを上手く活用したのも、SNS創世期ではなく浸透してからの利用。AKBの選抜総選挙も、2009年の民主党躍進、政権交代で人々が選挙に沸く中で生み出した。そもそもそのAKBも自らが 『モーニング娘。』によるリニューアルされたアイドル時代再来を経て再び手掛けたものであり、“熟れた”素材を扱ってのヒットだ。

 だが“流行”とは一過性。ポケベルと同様、一世を風靡する事象や現象、“大ブーム”は長続きしないということだ。しかしドラマは、現在ほとんどが1クール(3ヵ月)という短期間で、時代を切り取ったものが好まれる傾向もある。つまり、すぐに消費されると分かっているコンテンツでも、ドラマに関しては問題ないのだ。小説や漫画原作が多いドラマにおいて、ほぼすべての作品でオリジナルの脚本で勝負しているのも、よりリアルタイムでの世相を反映するためだろう。

■重厚な社会派だけが“ドラマ”ではない! 時代の写し鏡としてのドラマの役割

 また、秋元作品は純粋なエンターテインメントである潔さも長所だ。秋元は、近年のトレンドともいえる“社会派”ドラマをほとんど企画していない。いい意味でメッセージ性が薄い「後に残らないドラマ」なのである。自身を「芸術家ではない」としており、「自分は職業クリエーター。まずは依頼してくださる人の思いを成立させなきゃいけない。クライアントやテレビ局の意向を考える」と話していることからも、「ヒットさせること」に重点を置いた作品作りをしているとわかる。

 実際、賛否両論はあるものの、秋元作品たちは大きな反響を呼ぶことに成功している。普遍的ではないかもしれないが、純粋に楽しめるエンタメもなければ世の中は面白くない。また、秋元作品や当時の反響を振り返れば、その時代がどんな時代で、何が流行っていたかわかる。消費されても史書的なニュアンスは遺る。

 「秋元作品のどれもが成功しているわけではありません。例えば、過去に『人間のクズゲーム』というカードゲームがあり、金と運と頭を駆使して女性をポンポン切っていって、早いとこ身辺整理をした方が勝ち、というものなのですが、話題にならなかった。ですがこのアイデアはAKBをフリまくるゲーム『AKB1/48アイドルと恋をしたら』に受け継がれます。その時に流行らなかったものを別の時代に再生産、そんな柔軟性も持ち合わせています」(衣輪氏)

 10月からは秋元が企画した、日本テレビ『真犯人フラグ』、TBS『この初恋はフィクションです』、テレビ東京『じゃない方の彼女』がスタートした。『真犯人フラグ』は『あなたの番です』以来の2クール放送で、既にSNSで考察が飛び交うオリジナルの長編ミステリー。『この初恋はフィクションです』は深夜の帯ドラマ。主演は女優オーディション番組『私が女優になる日_』で1位のメンバーが務め、YouTubeで全話配信される。『じゃない方の彼女』は、「家族で楽しめちゃう!?不倫コメディ」と銘打った、笑える不倫を描いた新ジャンルのドラマだ。

 このように、ドラマが始まる前から話題を呼ぶような仕掛けをいくつも用意し、SNS時代を象徴した戦略でドラマをヒットに導く秋元。消費されることを恐れず、トレンドのコンテンツを組み込んだエンタメを企画するからこそ、半世紀近くにわたり業界の最前線にい続けられるのだろう。

(文/中野ナガ)

このニュースに関するつぶやき

  • ☆ …このPが番組に関わると、全て悪質なメディアミックスに見えるんだよなぁ…100ワニの際の電通的というか(毒) バラエティの裏方に過ぎない放送作家が出しゃばり過ぎた悪例。
    • イイネ!0
    • コメント 0件
  • こいつの作るドラマは、色んなどんでん返しして周りをハラハラさせるのはいいが、最後の最後でワケわからん結末いれて視聴者をがっかりさせるのが常(笑)既に飽きられてるらしいよw。
    • イイネ!21
    • コメント 2件

つぶやき一覧へ(38件)

ニュース設定