レジェンドOB岩瀬仁紀が2021年の中日を総括。「負けているのにベンチで笑顔が見られるなんて…」

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2021年10月25日 11:01  webスポルティーバ

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 昨シーズン8年ぶりにAクラス入りを果たした中日だったが、今季は前半戦から苦しみ、優勝争いを演じることなくシーズンを終えようとしている。今シーズンの中日はレジェンドOBのひとりである岩瀬仁紀氏の目にはどう映ったのだろうか。また、来季から指揮を執ることが確実視されている立浪和義新監督に期待することとは?




---- 貯金5でリーグ3位だった2020年から一転、今季(10月24日現在)は借金17のリーグ5位。中日の2021年をどのように見ますか?

「投手陣は成績がいいし(チーム防御率は12球団トップの3.25)、充実していると感じます。エースの大野雄大が思うように勝てていない(7勝11敗)といっても、打線次第では勝利数と敗戦数が逆転してもおかしくない内容ですから」

---- シーズン開幕前の3月19日に公開された山本昌さんとの対談「山本昌&岩瀬仁紀のレジェンドOBに『今年の中日は本当に強いのか?』聞いてみた」を読み返してみると、岩瀬さんは大野投手、福谷浩司投手に対して不安を口にしていました。不幸にも的中してしまった感があります。

「福谷は昨年がよかった分、反動が今年にくる不安がありました。でも、彼は不振をカバーできるだけの力があります。大野と同様に勝ち星がつきづらい状況だったとも言えます」

---- やはり打線の問題は大きいでしょうか。チームの打撃成績を見ると、打率.237、69本塁打、401得点はリーグワーストです。

「打線の援護があるかないかで、投手の気持ちの持ち方はまるっきり変わってきます。『打線がピッチャーを育てる』とも言えます」

---- 今年のヤクルトは、まさにそんな戦いぶりをしているように感じます。

「そのとおりです。開幕前は『投手陣が弱い』と言われていましたが、フタを開けてみれば優勝目前の首位ですから。でも、『ヤクルトのエースは誰?』と言えば、意外と名前が出てこない。山田哲人、村上宗隆の中軸に塩見泰隆が頭角を現した打線の援護があるのは大きいです。やりくり上手の高津臣吾監督の手腕で7〜9回は今野龍太、清水昇、スコット・マクガフでつなぐ勝ちパターンもつくれた。先発投手はなんとか6回をゲームメイクすればいいので、戦いやすくなっています」

---- 中日の場合、先発投手に求められるハードルが高くなってしまいますね。

「試合前から僅差を想定するのと、何とか試合をつくろうとするのとでは投球スタイルが変わってきます。今年は柳裕也が頑張っていますが(11勝6敗、防御率2.20)、試合中盤から明らかに球数が増えていく。打線の援護が期待できない分、慎重に投げざるを得ないからです」

---- 岩瀬さんの目から見て、今年の中日打線はどこが問題なのでしょうか。

「ダヤン・ビシエドひとりに頼っている状況です。高打率の大島洋平もいますが、投手の立場からすると長打のない打者は怖くない。高橋周平が不調に苦しみ、ビシエド以外の外国人打者が機能しなかった今季は『ビシエドさえ気をつければ大丈夫』と思われてしまう。そのビシエドにしても、圧倒的な成績を残しているわけではないですからね(打率.275、17本塁打、70打点)」

---- ホームランが出にくいと言われるバンテリンドームがホームグラウンドというのも、中日の打線が弱い要因でしょうか。

「バンテリンドームを本拠地にしている限り、長打で勝つ野球はまず無理ですよ。僅差で勝つ野球、1点を取りにいく野球をしないと。今年はその形をつくれなかったということです。チャンスをつくっても点をとれないのが、相手に一番流れを渡してしまうんです。少ないチャンスをものにするには、集中力が必要になります」

---- 岩瀬さんが現役だった時、何度も優勝していた中日と今の中日は、何が違うのでしょうか?

「選手個々が自分の役割をわかって野球をやっていました。自分の仕事をまっとうしていました。今の選手は勝ち方がわからないので、自分が何をすればいいか見えていない。『自分はこんな選手なので、こう使ってください』というアピールポイントも見えていない。僕としては、今の選手たちにはもっと自分の長所を磨いてもらいたいと感じます。変にそつなくまとめようとしすぎているように見えるんです」

---- 今年のドラフト会議では、1位でブライト健太選手(上武大)、2位で鵜飼航丞選手(駒澤大)と長打力のある打者を多く指名しました。その意味では、選手の個性を生かしたい球団側の意図も見てとれます。

「そういう見方もできるでしょうが、偏ったドラフトになってしまったという見方もできます。右の強打者を多く獲れたのはよかったですが、外野手が3人ですからね」

---- 投手で唯一の指名は、3位の石森大誠(火の国サラマンダーズ)でした。

「映像で見ただけですが、すごくいいフォームをしていますね。コントロールには苦労しなさそうなフォームをしています。いくらボールが速くても、プロではカウントがつくれないと長持ちしません。リリーフとしていいと思います」

---- 話題をそのまま投手陣に戻します。岩瀬さんが期待を込めて「もっとやれるはず」と語っていた小笠原慎之介投手は先発ローテーションに定着し、7勝10敗、防御率3.80の成績を残しています。

「うーん......」

---- まだまだ、こんなものではないと?

「慎之介が普通の投手なら、十分合格点です。でも、慎之介はいずれエースになってほしい人材ですから。もっとダイナミックに投げていたのが、年々こぢんまりとしている感があります。このままでいいのか、分かれ道にいると思います。もっとやれると信じているからこそ、そのスケール感を大事にしてもらいたいですね」

---- リリーフ陣では又吉克樹投手が65登板で33ホールド、8セーブ。防御率1.30と見事に復活しました。

「ピッチングが大人になりました。今までは力勝負だったのが、丁寧に投げられるようになりました。僕がチームメイトだった頃は『いいボールを投げよう』と思いすぎて墓穴を掘っていたのが、丁寧に投げるように考え方を変えたのでしょうね。やっとピッチングをわかってきた感があります」

---- リリーフ陣は全体的に防御率がよく、好成績を収めていますね。

「後ろ(クローザー)でライデル・マルティネスがしっかりしているのが大きいですね。終盤に少し疲れは出ましたが、年間通して活躍できたのは、本人も自信になったはずです。あとは、今年も祖父江大輔が頑張ってくれました。おそらく年々、本人のなかできつさを覚えているはずですが、それでも安定して結果を残している。チームにとって貴重な存在です」

---- 岩瀬さんが楽しみにしている新戦力は誰でしょうか?

「野手なら根尾昂、岡林勇希、石川昂弥といった若手が出てきてくれないと、現状の打線では正直言って厳しいです。投手陣はある程度は整っていますが、先発もリリーフももう1〜2人、イキのいい存在が出てきてもらいたい。昨年のドラフト1位・高橋宏斗にも期待したいところですが、現実的にはもう少し時間がかかりそうです」

---- 今季は残念な出来事もありました。岩瀬さんが「投げるボールは一級品」と期待を寄せていた木下雄介さんが、8月に急逝する悲劇がありました。

「そうですね......。雄介は本当に『これからだ』というところでした。わかっていても打てない真っすぐを投げられる。そんな投手になる可能性は十分にありました。はまった時に落ちるフォークもあって、三振も奪えました。こういう形で亡くなってしまって、本当に残念です」

---- また、投手陣を支えてきた山井大介投手は、43歳にして現役引退を決意しました。引退会見では、岩瀬さんとの完全試合リレーについても述べていましたね。

「彼とは自主トレも一緒にやっていましたし、思い出もたくさんあります。本当なら最後はああいった形ではなく、戦力としてチャンスを与えてほしかったなと感じます。あの年齢でファームのローテーションを守って(19登板、7勝5敗、防御率3.94)、ケガで投げられないわけじゃなかったので」

---- やはりファンとしては、2007年の日本ハムとの日本シリーズ第5戦での完全試合リレーが印象深いと思います。

「そうでしょうね。ものすごい重荷を背負ったマウンドでした」

---- その後、山井投手と当時の話をすることはあったのでしょうか。「なんで最後まで投げないんだ」とか。

「そうですね。『なんで投げないの?』と言ったこともあります。『そんな変なところで気を遣うな』と(笑)」

---- 一説によると、山井投手が血マメを潰して投げられなかったとか。

「マメを潰したのはそうなんですけど、その状態で8回まで投げていたのだから、最後まで投げられたはずなんです。あいつは肝心なところで気を遣わないのに、そういうところで気を遣うヤツなんですよ(笑)」

---- さて、来季は立浪和義さんの監督就任が確実視されています。新体制で中日はどのように変わっていくでしょうか?

「チームの雰囲気は絶対に変わるはずなので、楽しみですよ。厳しいことを言うようですが、現状は勝っても負けても緊張感が足りないと感じます。チームが負けているのに、ベンチで笑顔が見られるなんてありえません。立浪さんが監督になったら、そんな雰囲気は絶対に変わるはずです。勝つことに対する執念、勝負根性が出てこないと」

---- 立浪さんなど、勝負根性のかたまりのようなイメージがあります。

「今の中日打線で一番根性が入っているように見えるのは、ピッチャーの柳ですからね(笑)。彼からは『意地でも打ったる』という執念を感じますよ。野手からもそういう選手が出てこないと。今の選手は、すごくきれいに野球をやろうとしすぎているように感じます」

---- 愛ゆえの苦言や提言の数々、ありがとうございました。

「いえいえ。でも、立浪さんが監督になることで、少しでもチームがピリッと緊張感が出るといいなと思います。来季のドラゴンズが楽しみです」

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  • バンテリンドームを意識しすぎて、長打のない選手ばかり集めているのもあるでしょうね。おそらく本塁打は、ホームでもビジターでも打つより打たれたほうが多いはず。
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