持病や障がいがある人も楽しめる服を アダストリアが提案

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2021年10月26日 21:02  Fashionsnap.com

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写真<br />                    試着会の様子<br /><br />                    Image by: FASHIONSNAP<br />

試着会の様子

Image by: FASHIONSNAP
 アダストリアが、インクルーシブファッションプロジェクト「Play fashion! for ALL」の商品試着会を本社で開いた。試着会では車椅子使用者など約10組を招き、9月に完成したパジャマやパーカなどの商品を披露。様々な商品を手に取り談笑する姿が見られた。

 同プロジェクトは身体的な障がいがある人や、選べるデザインが限られてしまう人に向けた服を開発。約200人の障がいがある従業員が働くアダストリアグループの特例子会社アダストリア・ゼネラルサポートの社員が企画に参加し、ファッションを楽しむためのアイデアを募り、豊島との協業で商品化していく。
 第1弾では特例子会社に勤務する3人の従業員をモデルケースに、入院中に着ることを想定したパジャマ、車椅子使用者が着られるパーカやコーデュロイシャツ、低身長向けのセットアップなど6型を開発。製作時には豊島の3DCGデザイン「バーチャルクロージング(VIRTUAL CLOTHING)」を活用し、一般の人も着られるユニバーサルデザインを意識したという。


 パジャマは膠原病で入退院を繰り返す小林美佳さんと開発した。小林さんにとってパジャマは「入院生活で一番身近な存在」だったが、自分に合うパジャマが見つからず妊婦服などを代用し、不便に感じる部分は洗濯バサミをつけたり工夫していたという。この実体験を踏まえ、アダストリアと作ったパジャマにはスナップボタンやパンツの裾のギャザー、ウエスト部分のループなどを取り入れ、温度調節がしやすいように羽織も製作した。小林さんは「パンツを下ろした時に裾が床につかず、ボタンも取り外しが楽。この楽さが自分には合っている」と評価した。
 車椅子ユーザーに向けたパーカとシャツの開発には、怪我を負ったことで車椅子生活になったという鈴木大輔さんが携わった。握力がなく手首の部分で車椅子の操作をしていることから、白い服は汚れてしまうため着ることがなかったという。プロジェクトでは白地をベースに、タイヤにあたる部分に切り替えのデザインを採用。「白い服は爽やかな気分になれる」とこれまで感じられなかった体験ができたという。このほかプロジェクトでは、ファスナーに紐を取り付け、ストレッチ素材「ワンダーシェイプ(WONDER SHAPE)」を使ったデニムパンツを製作した。
 低身長向けの商品開発では、身長110cmの伊勢坊和幸さんがモデルとなった。伊勢坊さんは体質的な特性から襟付きのシャツは着られず、成人向けの商品は丈が合わないため、半袖のTシャツやハーフパンツを年中着用する生活を送っていた。アダストリアとはカジュアルに着られるセットアップを製作。シャツにはバンドカラーを採用し、ボタンの数や配置にも工夫を取り入れた。ジャケットとパンツにはワンダーシェイプを使用したほか、ジャケットの内ポケットの両側にループを取り付けることで脱ぎ着しやすい一着に仕上げた。伊勢坊さんはこれまで「服は“着られるかどうか”で判断していたため、楽しむという発想がなかった。楽しめるファッションはありがたい」と語った。
 プロジェクトの商品は9月8日にクラウドファンディングサービス「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」内のプラットフォーム「グッドモーニング(Good Morning)」で発売。10月20日からはアダストリアの公式オンラインストア「ドットエスティ(.st)」で予約販売形式で取り扱いを開始した。ドットエスティ内の「お気に入り登録数」は他商品と比較して反応が良い状況で、問い合わせ窓口では顧客から「ハンディキャップの方に向けた洋服への取り組みとても感動した」といったメッセージが届くようになったという。
 試着会に来場した筋ジストロフィーと闘う小澤綾子さんは、車椅子ユーザー専用ブランドの商品は基本的にオーダーメイドとなるため数万円単位の金額がかかることから、「著名ブランドを展開する大手企業がこういった工夫を取り入れた服を開発してくれて嬉しい」とコメントした。脳性麻痺を患い車椅子を使用するデザイナーのlailaさんは「買うならデザインが可愛い服がいい。パーティーにも着ていけるような服が欲しい」と今後の展開に期待を寄せた。

 厚生労働省が2018年6月に実施した「平成30年度障害者雇用実態調査」では、障がい者の平均年収は一般と比べて200万円ほど低いことがわかった。実際に試着会でも「高いもので失敗したら金銭的ダメージが大きいため、服には極力お金をかけない」「お金を出して買いたいと思える服が欲しい」といった声が上がった。また、買い物でもバリアフリーに対応した店舗が少ないことから来店せずECで買うことが多いという話もあり、誰もが平等にファッションを楽しむための課題が多く残されていることが伺えた。
 プロジェクトリーダーの坂野世里奈氏は「生産から販売までの基盤や体制が整っているアダストリアだからこそ実現できた」とプロジェクトを振り返り、「介護と障がい者向けの服でも求められるものが異なるので、まだリサーチが必要。プロジェクトとしては続けていくことが大事だと思っている。他業界も巻き込んでいきたい」と今後の展望を語った。
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