監督交代さえできないバルサの苦境。強豪には勝てないチームになった

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2021年10月27日 07:01  webスポルティーバ

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「Koeman sale indemne」(クーマンは無事である)

 クラシコ後、スペイン大手スポーツ紙『アス』はそんな見出しを打っている。

 ロナルド・クーマン監督が率いるバルセロナは、本拠地カンプ・ノウでレアル・マドリードに1−2と敗れ、9位にまで転落した。にもかかわらず、解任などの動きはない。バルサ幹部のひとりは「監督より選手のレベルの問題」とクーマンを擁護。なんとしてもシーズン終了までは現体制で戦う心づもりだ。

<クーマンをクビにして支払う1200万ユーロ(約15億円)の違約金を捻出できない。新監督に支払う年俸も用意できない>

 それがジョアン・ラポルタ会長の本音だろう。2021−22シーズンが終了し、オプション付き契約となっている来シーズンについてクーマンとの交渉が始まるまで、よほどのことがない限り、手が出せないのだ。

 しかし、クーマン・バルサは今後を無事に切り抜けられるのか?




 クーマン・バルサは、戦力的に劣る相手には勝ち点を計算できるチームだろう。事実、直近のディナモ・キエフ、バレンシア戦は無難に勝利していた。しかしながら、バイエルン、ベンフィカ、アトレティコ・マドリード、そしてレアル・マドリードには完敗だった。タイトルを狙うクラブとしては、暗澹たるありさまだ。

「チーム作りの段階」

 クーマンはそう言うが、明るい未来が透けて見えるような戦いができているわけではない。スポーツ紙の見出しでも揶揄された"クロス放り込み戦術"など、明らかな迷走だ。

 やはり、クーマン監督の責任は重いだろう。オランダ人指揮官はフィジカルインテンシティを重んじ、個の力を第一に求めている。リキ・プッチのようにパスでリズムを作る選手を起用しないのは、その証左だろう。イニシアチブを握ってボールを動かすバルサの哲学とは、出発点で真逆にある。

 フィリペ・コウチーニョというカードを切り捨てられないのは、いかにもクーマンらしい。

 コウチーニョはスーパーゴールを決めることもあるし、単純なキック&コントロールはワールドクラスと言える。しかし、性格的な問題なのか、単に判断が悪いのか、周囲と連係することができず、独りよがりにボールを持ち、プレーをぶつ切りにしてしまう。クラシコでは終盤にビッグチャンスでクロスを空振りして軸足に当てたように、フィニッシャーとしても計算が立たない。

 新加入のメンフィス・デパイも、クラシコでレアルのDFエデル・ミリトンと入れ替わったプレーを見せたように、トップスピードでテクニックを出せる選手だ。シューターとしても非凡である。だが、ゴールという結果を求めるなかで、周りとの連係はむしろ悪化している。ひとりでやりきろうと、ボールを持つ時間が長くなり、結果的にプレーが読まれやすくなっている。クラシコでも、ひとりでボールを持ち出そうとしてダビド・アラバにかっさらわれ、ロングカウンターから失点する起点になってしまった。

 バルサの強さは、コンビネーションによる創意工夫にあるだろう。個人が目立つサッカーはそもそも悪しき予兆。ボールを動かし、人が次々に動く、その渦を起こすべきなのだが、クーマン・バルサは逆行している。

「今はかつてのように攻め続けるサッカーをする戦力がない」

 クーマンはそう嘆くが、ガビもセルヒオ・ブスケツも、スペイン代表の時のほうがボールプレーヤーとしてはつらつとしている。

 伝統的にバルサは能動的な発想のプレーを信奉しているだけに、そもそも受動的プレーをすることに無理がある。クラシコでもクーマンは、レアルのヴィニシウス・ジュニオール封じに躍起となって、オスカル・ミンゲサをマーカーとして送り出した。だが、そのスピードとテクニックに翻弄され、完全に後手に回った。攻撃的な戦いをすることで相手をねじ伏せる選択肢もあったはずなのだが......。

 その采配には、長期的展望など見えてこない。お気に入りのルーク・デ・ヨングを獲得しても、思考停止に近いクロスを放り込むだけ。これがどうチーム強化につながるのか、疑問である。サイドバックの選手であるセルジーニョ・デストの右FW起用を評価する声もあったが、スポット的には面白い試みだとしても、シーズンを通した活躍は望めないだろう。クラシコの前半につかんだ決定機を逃したシーンでも、トップレベルのアタッカーとしての限界は見えた。

 バルサはそれでも個の力で、相手次第では勝ち点を拾えるだろう。アンス・ファティはシュート技術は世界トップクラス。クラシコで一矢を報いるゴールを決めたセルヒオ・アグエロも、今後はコンディションを上げるに違いない。ペドリ、ロナウド・アラウホ、ウスマン・デンベレなど、故障中の主力も戦線に復帰するはずだ。

 ただし、クラシコのような屈辱的敗北を、カンプ・ノウの人々はこれ以上、耐えられるだろうか。今週のリーグ戦、10月27日のラージョ・バジェカーノ戦、30日のアラベス戦のどちらかで勝ち点を取りこぼし、11月2日のチャンピオンズリーグ、敵地でのディナモ・キエフ戦で敗れることでもあれば、怒りを含んだ批判はとめどなく噴出するだろう。

 たとえ今回は無事でも、クーマン・バルサの苦難の旅路が続く。

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