コムアイらYouTubeで「私も投票します」と呼びかけ 若者の投票率を上げる新たな試み

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2021年10月28日 11:30  AERA dot.

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写真「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」のYouTube動画。本誌にメッセージを寄せてくれた歌手のコムアイさんは右から2列目、上から3人目(撮影/写真部・高野楓菜)
「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」のYouTube動画。本誌にメッセージを寄せてくれた歌手のコムアイさんは右から2列目、上から3人目(撮影/写真部・高野楓菜)
 低迷する若者の投票率を上げようと、俳優ら著名な若者たちが立ち上がった。 従来の方法では響かない。SNSや言葉遣いなど、きめ細かい工夫がされている。AERA 2021年11月1日号から。


*  *  *


「私も投票します」


 14人のミュージシャンや俳優がそう呼びかける動画が、10月22日時点で52万回以上再生されている。「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」。政府や企業とかかわりのない市民プロジェクトだ。


 その動画で歌手のコムアイさん(29)はこう話す。


「とにかく若者の、わたしたちの世代の投票率がすごく低い」


「その世代が軽んじられるということだから、政治で。政治をウォッチしているよっていうことをアピールする」


 前回衆院選の20代の投票率は33%台で、60代の半分以下。この若者の投票率について語る理由をメールで寄せてくれた。


「私も20代前半で、投票に行かない時期がありました。行っても意味がないと思う気持ちもとてもわかるし、自分がやるべきことはもっと他にあるような気もしていました」


 それでも投票に行ったのは、ある気づきがあったからだ。


「政治家たちは投票率でどの世代の意見を重視した政策を打ち出すか見ている。若者がないがしろにされない政治、たとえば奨学金制度の充実や若者の最低賃金、労働環境、ひとり親の支援、LGBTQへの偏見改善などを求めているなら、投票率で示すことが大事だと思います。実は投票行動そのものよりも、各党の政策に対して議論が盛り上がることのほうが大事かなと思っています」


 海外の事例を見て、思うところもある。


「SNSはその活用に適していると思います。今後は欧米のように党名もしっかり出しながら投票行動を促すような動きも活発になっていくのかなと思います」


■風通しのいい状態に


 発起人の映画監督、関根光才さん(45)はこう語る。


「投票率の低さに問題意識を持っていました。加えて、政治や宗教の話はタブーという空気感があります。そうした息苦しさを風通しのいい状態にしていきたいと思っていました」


 同じく発起人のプロデューサー・菅原直太さん(56)も言う。




「こちらで用意した言葉もあったのですが、出演者にインタビューしたときの『私はこう思っている、感じている』という言葉のほうがとても素敵で心に響くものでした。結果としてほとんどの箇所で、そうした出演者自身から出た言葉を使いました」


 クリエーティブディレクターの辻愛沙子さん(25)も10月、広告業界の有志数人と「GO VOTE JAPAN」を始めた。投票率向上が目的で、まずは最も率の低い若者に呼びかける。インフルエンサーらに「#わたしが選挙にいく理由」を動画で話してもらった。


「中高年向けの洋服店に若い子が入りにくいのと同じで、今の(選挙)ポスターでは若い子に響かないんです」(辻さん)


 ウェブサイトに「10.31」とポップに描いた8種類のイラストを用意。このイラストと一緒に「投票、行きます」とツイートできる仕組みだ。


「芸能人でなくて普通の人でも、ツイッターで『投票に行こう』とか、何か政治的な話題をつぶやいたら、勉強不足だとか言われることがあります。イラストや投稿する機能があれば、投票に行こうと言いやすくなると思いました。日常の中に投票も政治もあるようになればいいなと思っています」(辻さん)


 投開票日前日まで東京・渋谷でビジョン広告も打つ予定で、今後も活動を続けていくという。


■まずは認めるのが若者


 こうした取り組みについて、若者とメディアに詳しい関西学院大学の鈴木謙介准教授(45)は、「感情的に強く訴えかけるのではなく、『私は』と呼びかけたことがよかったのだと思います」と分析する。


「従来の政治、選挙の話法が若者に通じなくなっています。候補者が『相手を蹴落として勝つ』と語気を荒くして盛り上がるのは、一定以上の世代です。会社で上司のハラスメントが問題になる時代に、政治家だけが対立候補を強く攻撃していいものか。まずは認めようというのが今の若者世代です」


 ただ、対立や勝利が嫌いなのではない。


「保革対立といったイデオロギーありきではなく、政策や人柄で選んでいるのです。数字に表れるのは先だと思いますが、LGBTQや#MeToo、気候変動の問題など若者の社会への関心が広がっていると感じます」




 さらにコロナ禍もあった。


「若者も自粛生活を余儀なくされたり、医療従事者の友だちが大変そうだったりと政治と自分の生活が地続きであると気づいた人が多かった。そういう意味で関心は高まっています」


 政治とメディアの関係に詳しい東京工業大学の西田亮介准教授(38)は、若者の低投票率についてこう分析する。


「今の若者は偏ることを嫌う傾向にあります。ネットでの炎上を恐れてもいるようです」


 20代の投票率が世代別で最も低いのは今に始まったことではなく、1969年から。ただ、現在の20代の投票率は50年前の半分にすぎない。


「近年の研究では、投票経験を持たない人は、年齢が上がっても投票に行かないと指摘されています。実際、今の40代は投票率が50%前後です」


 前出の鈴木准教授も言う。


「政治が高齢者に傾いていると言われるが、20年後には終わる。そのとき、政治家が年長世代へ向けていたようなメッセージを投げても若者には届きません」


 将来のことを考えても、今の若者の投票率を上げることは重要だ。


■当選者が変わる可能性


 また、投票率上昇で当選者が変わる可能性もある。民主党政権が誕生した09年衆院選(投票率69%)の与党・野党各得票数から前回衆院選(同54%)分を引いた票数を、投票率上昇の割合だけ前回の各党に足すとした場合、2.5ポイント上昇したら野党候補の合計票が当選した与党候補の票を上回った63選挙区に加え、もう9選挙区で野党が上回る。一方、今回が岸田新政権へのご祝儀相場であれば、投票率上昇は与党有利に働く。いずれにせよ、今回は投票率のアップダウンも見逃せない。(編集部・井上有紀子)

※AERA 2021年11月1日号


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