もしもがんになったら、治療や生活についての情報をどのように集めますか?

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2021年10月28日 15:10  QLife(キューライフ)

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藤原先生「治療を完遂することが非常に大切」

 2人に1人ががんになり、そのうち3人に1人は現役世代だといわれています。がんという言葉は知っていても、どのような治療を行うのか、どこから治療や生活についての情報を得ればよいのかなどについて考えたことがない方は少なくないのではないでしょうか。

 製薬会社のアストラゼネカと認定NPO法人キャンサーネットジャパンは10月14日、卵巣がんについての疾患啓発イベント「『わかる卵巣がん』〜卵巣がんとうまくつきあうには?〜」をオンラインで開催しました。イベントは、アストラゼネカがこのほど卵巣がんLINEアカウントの開設したことを記念して開かれたものです。

 女性の体には、骨盤に囲まれた、お腹の下のところに卵巣があります。卵巣にできたがんを卵巣がんといいます。イベントでは婦人科のがんを専門とする医師の藤原聡枝先生(大阪医科薬科大学)が講演し、「卵巣がんにかかる人の数は近年、緩やかに増えてきているが、死亡率は低くなってきている」と指摘しました。


藤原聡枝先生(アストラゼネカ提供)

 藤原先生はまた、「卵巣がんの治療では、手術、がんの進行を抑えるための化学療法、がんが再発しにくいように体の環境を整えるための維持療法を組み合わせることで、進行がんであっても治療の効果が得られるようになってきた」と説明。維持療法も含めると治療期間は1年半から2年と非常に長いですが、「こうした治療を完遂することが非常に大切だ」と強調しました。

 がんになる一部の患者さんでは、遺伝子に病的な変化を生まれつき持っていて、遺伝要因ががんの発症に関わっている場合があります。遺伝要因がかかわる卵巣がんの代表的なものとしては、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」があります。卵巣がん、乳がん、前立腺がん、すい臓がんなどの発症リスクが高くなると知られており、性別にかかわらず、親子・兄弟・姉妹の間で50%の確率で共有されます。

 遺伝性乳がん卵巣がん症候群であるかどうかは、遺伝子検査によって知ることができます。自分の遺伝子の状態を知ることで、予防や早期発見・治療に活かすことが期待できますが、遺伝という生涯変わらない情報が明らかになるため、検査の意義を十分に理解した上で受ける必要があります。検査の実施にあたっては、患者さんの希望が尊重されます。

 遺伝性乳がん卵巣がん症候群の検査について藤原先生は、「検査の結果をどのようなタイミングで家族と共有するか、共有をしないかといった決まりはない。医療機関で専門家と遺伝カウンセリングを行い、正確な知識をもとに本人や家族の状況を踏まえて相談する必要がある」と説明しました。

治療と仕事の両立のためには、患者さんから職場に働きかけを

 イベントのトークセッションでは、卵巣がんの経験者である吉田ゆりさんが自身の経験を語りました。


吉田ゆりさん(アストラゼネカ提供)

 37歳のときに卵巣がんになったという吉田さん。「がんは他人事だと思っていた。診断を受けたときは頭の中がはてなでいっぱいだった」と話しました。不安を抱え、毎晩インターネットで卵巣がんの情報を探していたそうですが、「ブログや研究の情報など、断片的な情報は山のようにあったが、がんや治療、その後の生活について詳しく書かれているWebサイトはあまり見つからなかった」といいます。「がんの告知を受けた衝撃で頭がうまく働かなくなってしまう“がんショック”の状態だった」と当時の様子を振り返りました。

 がんの情報を網羅的に扱っていて信頼できるWebサイトの1つに、国立がん研究センターが運営している「がん情報サービス」があります。ところが吉田さんは、「がんショックによるものなのか、怪しいサイトに見えてしまった」と話し、「信頼できるサイトだと知っていれば……」と悔しさを滲ませました。

 がんについてインターネットで調べる際に何も指針がなかったという吉田さん。「必ずしも正しい情報が掲載されていないWebサイトにも心が揺れてしまった」と回顧します。そうしたWebサイトでは、「安全な治療」「天然由来」「絶対治る」など自身が望むキーワードが目にとまるとして注意を促しました。

 吉田さんはがんの告知を受けたあと、うつ状態になったそうですが、セカンドオピニオンを受けた先で「いい治療をしているから大丈夫。これから先は、再発や転移を恐れるのではなく、今後のキャリアについて考えて前を向いてください」と言葉をかけられたのだそう。イベントでは、「そこから気持ちが上向きになり、今後のことを考えられるようになった」と笑顔をみせました

 吉田さんは現在、現役世代のがん治療と仕事の両立支援を行う「がんと働く応援団」を立ち上げ、活動しています。現役世代のがん患者さんに対して、「治療と仕事の両立についてしっかりと理解している人事担当者は少ない。職場の対応に任せるのではなく、患者さん本人が中心となり、必要な配慮について伝えるという意識を持ってほしい」と呼びかけました。がんと働く応援団では、会社と相談をする際に使える資料として「現役世代のためのがん防災マニュアル」を作成しており、がんと働く応援団のホームページから申し込みが可能です。

栗原さん「必要な情報は自分から医師に聞く」

 トークセッションではまた、乳がんの診断を受け、その後卵巣も摘出したという栗原友さんも登壇しました。


栗原友さん(アストラゼネカ提供)

 栗原さんは44歳の頃に胸にしこりを感じて受診したところがん宣告を受けたといいます。主治医の勧めから遺伝性乳がん卵巣がん症候群の検査を受け、自身が該当することが判明。乳がんになったのは左胸だけだったそうですが右胸も摘出し、その後、卵巣も摘出したことを明かしました。

 栗原さんは、「ネガティブな情報に心を動かされたくなかったので、インターネットではあまり調べなかった」といいます。セカンドオピニオンで主治医を決め、受診時には先生をインタビューするようにたくさん質問したといい、「医師といい関係を築き、リラックスして治療を受けることができた。命にかかわるかもしれない病気だったのに、病院に行くのが嫌ではなかった」と振り返りました。栗原さんは、「医師だからといって、何でも教えてくれるわけではない。必要な情報は自分から聞かなければいけない」と患者が治療に積極的に臨む必要性を訴えました。


トークセッションの様子(アストラゼネカ提供)

 医師とのコミュニケーションにおいても、職場とのコミュニケーションにおいても、自分自身が積極的に動くことが大切なのですね。自分や身近な人ががんになったとき、前向きに治療を乗り越えていくために、正しい情報をどのように得るのかなどについて考えてみてはいかがでしょうか。卵巣がんLINEアカウントでも、卵巣がんについて正確な情報を提供しているので、ご興味のある方はLINEの「友だち登録」をしてみてくださいね。卵巣がんの患者さん以外でも、登録は可能です。(QLife編集部)

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このニュースに関するつぶやき

  • 私が癌になった時はネットでざっと見比べ、国立がん研究センター「がん情報サービス」が一番良いサイトだと思ったけどな。怪しいサイトは見ないこと。
    • イイネ!4
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